地球ならぬ何処かで、地球人のために彼は戦う

 青春時代を強さの追求に費やした吉戸正次(きっどせいじ)だが、大学を出る頃にはその熱も冷め、今はしがないアルバイターとして日々を過ごしている。が、ある朝、彼は知らされたのだ。自分が日本どころか地球ですらないコロニーの内に生きてきたことを。新しい仕事が、『越境連盟』なる秘密組織の戦士——物質改造者として戦うことだと。

 その設定が世界観と共に示される冒頭部、いいですねぇ。濃密でありながらすっきりと無理のない流れで、正次さんの人生が日常から非日常へスライドしていく。それは自然に読者の目を物語へ引き込んでくれますし、先への期待感を高めてもくれるのですよ。

 続くバトルももちろん期待を裏切りません。異能力を「なんとなく」で流してしまう作品は多いものですが、本作はきちんとシステムを示した上で、互いの力がぶつかり合って、勝ち負けを決める。この剣豪ものさながらの交錯感がたまらない風情と納得をもたらしてくれるのです。
 骨太な戦闘アクションが読みたい! そんな方へ真っ先にお薦めします。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)