アリとキリギリス

ノーバディ

第1話

 木枯らしが吹いてきた。

 もう食べられる草も木の実もほとんどない。

 ごはん、いつから食べてないんだろ。


「キリギリスくん、だから言ったじゃないか。僕みたいに一所懸命に働いておかないと後で大変な事になるよって」

 アリくんは当然だといった顔で僕に言った。

「そうだね。アリくんは偉いよね」

「僕は偉くなんかないよ。当たり前の事を当たり前にしてきただけなんだ」

「ぼくは……、ぼくだってがんばろうとしたんだよ。でも出来なかった」

「出来なかったんじゃなくてやらなかったんでしょ」

「そうだけど……。アリくんはパレートの法則って知ってる?」

「20%の働き者と60%の普通な者と20%の怠け者がいて、その割合はどこにいってもほとんど変わりない、って奴だろ。それがどうしたんだ?」

「ぼくはその法則に逆らえ無かっただけなんじゃないかと思うんだ」

「どういう意味?」

「ぼくだって働かなきゃって思ったんだ。僕だって何んとかしようと思ったんだ。このままじゃいけないって、必死に足掻いたんだ。でも……」

「でも、遊んじゃったんだろ。それは言い訳だよ」

「アリくん、多分君には一生分からないだろうな」

「うん全然分からない」

「じゃあね、もう会う事はないと思うけど」

「じゃあね」


 僕は一人、枯れ草の野原に向かって歩き始めた。

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アリとキリギリス ノーバディ @bamboo_4

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