第4話 お姉様とかわいい
私にかわいい物が好きだと打ち明けてくれたお姉様は、隅の方へと追いやった物の元へと向かうと「すまなかったな…。お前たち…。」と謝り、そのうちの一つであるクマのぬいぐるみを拾い上げるとぎゅっと抱きしめる。
そして、クマのぬいぐるみの腕をぴょこぴょことし始めるお姉様。
そんなお姉様の表情はすごく幸せそうで。
私はウサギのぬいぐるみを拾い上げ、お姉様に向けて「こんにちはお姉様!ワタシウサギのウーサだぴょん!」と話しかける。
自分でもなにやってるんだろうとか、お姉様に引かれたらどうしようと考えたけど、どうしてもお姉様の幸せそうな空間に混ざりたかったというか。
気づくと顔を赤くしながらも行動していた私。
チラッとお姉様の方を見ると突然の私の行動に驚いているのか固まっている様で。
うぅ…。やっぱり引いてるよね…。なんて考えていると…。
「か、か、かわ…。かわいい!」と大きな声を出すお姉様。
そんなお姉様に驚いていると「な、なんてかわいいんだ!」と興奮しているお姉様。
クマのぬいぐるみを棚にそっと置くと私へと近づいてきて…。
ウサギのぬいぐるみごと、ぎゅっと抱きしめられる私。
「お、お姉様!?」と驚く私に「こんなのかわいすぎる…!反則だ…!」と尚もぎゅっとするお姉様。
やがて慌てた様子で「す、すまない…!我を忘れてしまった…。」と離してくれる。
お姉様に抱きしめられたことでドキドキしつつも「い、いえ…!そ、それよりも元に戻しましょうか!」と提案する。
すると「あ、ああ!そうだった!そうしよう!」とお姉様も同意し、片付けを始める。
その途中ふと手に取った物を見つめる私。
それはフリルがたくさん付いた洋服で。
お姉様が着ているところが見たい!と思った私。
お姉様にそう提案すると「い、いや…。それは…。」と困った様子で。
「そ、それは可憐な君に似合うと思うんだ!」と苦笑いするお姉様。
褒められたのは嬉しいけど、今はお姉様が着ているところが見たい私は「だめですか…?」とお願いする。
すると「うぅ…。そんなかわいい顔でお願いするのはずるい…。」と照れているお姉様。
これはあと一押しでいける!と確信した私は再度お願いすると、ついに折れたお姉様は「わ、わかったから…。人に見られるのは慣れてないのだが…。着替えてくるよ…。」と別室へと着替えに向かう。
心の中でガッツポーズをしながらワクワクして待つこと数分。
ドアを少し開け「ほ、ほんとに見るのかい…?」と覗き込み私に尋ねるお姉様。
「是非!」と伝えると観念したのかゆっくりと部屋へと入ってくる。
そして、フリルがたくさん付いた洋服を来てもじもじするお姉様。
普段は凛々しく美人のお姉様だけど、今はとてもかわいくて。
私の語彙力では言い表せないくらいかわいくて。
しゃ、写真撮らないと!とスマホを探すのだけど、どこにもなくて。
というか、そもそも荷物を入れたカバンがないわけで。
そこでやっとこっちの世界にやってくる時、高台に置いたままだということに気づいた私。
女神様を恨みつつ諦めると、しっかりと脳内に焼き付ける。
その間も「も、もういいかい…?」と着替えに戻ろうとするお姉様に首を振り続けしっかりと。
そして満足した私はお姉様に着替えても大丈夫ですよ。と伝えると慌てて着替えに向かうお姉様。
着替え終わると「君が着ている姿も見たいのだけど?」と今度は私に着るよう要求する。
お姉様と違って私に似合うわけないと思い、それを必死に拒否するのだけど…。
「今日は君に我が家に泊まってもらおうと思っているのだが。どうかな?」と突然別の話をするお姉様。
その申し出に「よろしくお願いします!」と返事するのだけど、急にどうしたんだろうと思っていると「それで君は着替えはあるのかい?」と尋ねるお姉様。
言われてみれば今着ている制服しかないわけで。
それをお姉様に伝えると「それならわたしの服を貸そう!」と嬉しそうにするお姉様。
そんなお姉様にお礼を伝えるのだけど…。
「も、もしかしてお姉様の服って…。」と尋ねると「ああ!もちろんかわいい服だ!君のサイズだと昔わたしが着ていた服が合うだろう!準備してくるからお風呂に入って待っていてくれ!」とお姉様が着ていたフリルの洋服とは別の洋服があるようで。
あぁ…逃げられないのね…。と諦めることにした私。
というわけで、お姉様のお家にお泊まりさせてもらうことになった私はお風呂も借りることに。
そして、着替えを準備してくれたお姉様がドア越しに「なにかわからないことはあるかい?」とお風呂の使い方を尋ね、見てみると元の世界と変わりないようで。
大丈夫だということを伝えると「そうか!なら一人でも大丈夫そうだね!着替えはここに置いておくよ!!」と戻っていくお姉様。
あれ…?もしかしてわからないって答えてたらお姉様と一緒にお風呂に入れてた!?とお姉様とのお風呂イベントを逃した私は悲しみながらお風呂を済ませることになった。
それからお姉様の用意してくれた洋服を着るのだけど…。
あれ?意外と…。と鏡を見て思った私。
だけど肝心なのはお姉様の反応で。
「ど、どうですか…?」と緊張しながらお姉様に見せる。
すると「あ、ああ!さ、サイズ合ってるようでよかった!」となんだか気を遣ったような反応で。
やっぱり似合ってなかったかな…。と落ち込んでしまう私。
そんな私に気づいたのか「す、すまない!違うんだ!」と慌てるお姉様。
続けて「あまりにもかわいすぎて、また抱きしめそうになる自分を抑えるのに必死で…。」と謝ると深呼吸をして。
「うん!よく似合っているよ!」と代わりに頭を撫でてくれるお姉様。
抱きしめてくれてもよかったんだけどなぁ。なんて思いながらもお姉様に頭を撫でてもらうのも嬉しくて。
「えへへ!ありがとうございます!お姉様!」と笑顔になる私。
それから夕飯をいただくことに。
お姉様が用意してくれたのはハンバーグで。
ここも元の世界と変わりなく。
味はどうだろうとハンバーグを一口食べる。
「んっ!!!」と思わず声を出してしまう私。
「く、口に合わなかったかい!?」と心配するお姉様に首を振り飲み込むと「美味しいです!!!」と感想を伝える。
今まで食べたどのハンバーグよりも美味しくて、特にソースが格別で幸せになった私は笑顔で。
そんな私を見て、嬉しそうに微笑むお姉様。
もう一口食べるとまた幸せがやってきて笑顔でいると「ふふ。ソースがついているよ。」といつのまにか頬に付いていたソースを拭き取ってくれるお姉様。
「あ、ご、ごめんなさい…!」と恥ずかしがる私に「いいんだ。かわいい君を見れたからね!」と微笑むお姉様。
「あ、ありがとうございます…。」と照れながらお姉様の美味しいハンバーグをまた食べ進める。
それから食事が終わるとお姉様と雑談をする。
しばらく話しているとなんだかお姉様は嬉しそうで。
どうしたのかな?と思い尋ねると「いつもは一人だから、こんなに楽しい時間は久しぶりでね!君を招待して本当によかったよ!」と喜ぶお姉様。
そういえばこんなに立派なお家なのに他にだれもいなくて。
「お姉様は一人暮らしなんですか?」と何気なく尋ねると「そうだね。今は一人だよ…。」と悲しそうな顔をするお姉様。
「今は…ですか…?」と質問する私にお姉様は話してくれる。
「わたしには王国一の立派な騎士である母がいたんだ。厳しかったけど、誕生日にぬいぐるみを贈ってくれる優しい人達で。その時からわたしのかわいい物好きは始まったんだけどね。ふふ。」と笑うお姉様は続きを話してくれる。
「そんな母が大好きで。幼いながらにいつかわたしも母のような立派な騎士になりたいと憧れ。幸せな日々を送っていたんだ。だけど、ある時王国に突然巨大な魔物がやってきて。母と多くの騎士達が王国を守るために戦い守り抜き…。そこで命を落としてしまったんだ…。」と話すお姉様はとても悲しそうで。
それを聞いた私も悲しくて。
泣いてしまう私。
「す、すまない!こんな話するんじゃなかったね!ど、どうか泣かないでおくれ…。」と慌てると私をそっと抱きしめてくれる。
しばらく泣き続けてしまう私が落ち着いてくると。
「そろそろ休もうか。」と優しく声をかけてくれて寝室へと案内してくれる。
寝室へと案内された私は部屋に一体だけ置かれたぬいぐるみに気づく。
それを見ていると「ああ。それが誕生日に貰ったぬいぐるみだよ。もう古いし、ボロボロだろう。」と笑うお姉様。
だけど、やっぱり悲しそうで。
「それじゃあわたしは別室で休むとしよう!おやすみ!」と明るく振る舞うお姉様に「あ、あの!お、お姉様!」と話しかける。
「ん?どうしたんだい?」と首を傾げるお姉様に「い、一緒に寝てもらえませんか!一人で寝るのは不安で!お姉様と一緒に寝れたら安心出来ると思うんです!」とお願いする。
すると「い、一緒にかい…!?」と驚くお姉様に「お願いします!」と真剣な顔をする。
そんな私に「わ、わかった!それで君が安心できるならお安い御用さ!」と受け入れてくれるお姉様。
そして、ベッドの上で横になるとそっと私を抱きしめてくれて。
「おやすみ。」と優しく声をかけ、撫でてくれるお姉様に「おやすみなさい。お姉様。」と返事をする。
すごくドキドキしたけど、頭を撫でられていると安心してきて。
本来の目的とは違うような気がしつつもウトウトしてきた私は、これで今だけでもお姉様の悲しみが和らいでくれたらな、と思いながらいつのまにか眠っていた。
寝息を立てる私を確認すると「ありがとう。本当に優しい子だね。」と微笑むお姉様を知らずに。
百合が咲き誇る世界にて〜異世界で私の百合ハーレム作っちゃいます!〜 たるたるたーる @tarutaru_ta-ru
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