第8話 マーブル嬢
しばらくすると街の人々が集まり、死体を片付けるのを手伝ってくれた。
簡素な葬式が執り行われている間、バサルトとサーペンティナイトはそれを遠巻きに見守った。
着の身着のまま、マーブル嬢は葬儀に参列し、泣き、悼み、両親を送ると、彼女は街の人たちから離れ、魔術師ふたりへ近づいてきた。
「……マーブル嬢、改めて確認しよう。……君はこんな罪科みなぎる魔術師に、なるかい?」
サーペンティナイトは、沈痛な面持ちで、少女に問いかけた。
「……なります。ならせてください。私、他に行くところも、ありませんから」
それは聞きようによっては捨て鉢にも聞こえたが、紛れもない少女の本心だった。
「……わかった」
サーペンティナイトは少女に応えて覚悟を決めた。
「私が全面的にバックアップしよう。君の適性は錬金術だが、何もそれを極める必要はない。魔術はいくらでも君に可能性を開いている。……それでも、もし錬金術を極めるのなら、私は師にはなれないので、アイオライト卿あたりに推挙しよう」
「アイオライト卿!」
バサルトは思わず大声を出した。
アイオライト卿といえば、当代一の錬金術師だ。その名声はリムストーン教会にとどまらない。
そして彼はリムストーン教会でもめったに弟子を取らないことで有名な錬金術師だった。
「錬金術は魔術の中でもメジャーな分野だ。錬金術師は溢れるほどにいる。ぴんからきりまで。だがせっかくなら、いやだからこそ最高峰に学ぶのがいいだろう。ああ、もちろん、マーブル嬢にそこまでの向上心がないのなら、もう少し教え上手の甘くて優しい師匠を選ぶがね」
サーペンティナイトは冗談ぽく笑うと「あのオッサン偏屈なんだよね」とつぶやいた。
アイオライト卿をオッサン呼ばわりする恐ろしさにバサルトは身を縮めたが、そんなことは知らないマーブルはしっかりとサーペンティナイトを見つめた。
「いえ、その人に、ぜひ」
彼女は迷わなかった。
「どうせ選ぶのなら、困難な道を」
その声に迷いはなかった。
「……もう、私の道は困難に満ちているのですから」
ただ少し寂しそうに彼女は微笑んだ。
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