第30話 笑顔の継母と一緒に ( 最終話 )
「こんなにすぐに退院して、大丈夫なのか? まあ僕らは、退院してくれた方が助かるけど。くれぐれもムリだけはしないでくれよ。家事も慣れて来たから、みんな手伝えるし。」
継母の身体を気遣い、優しく声をかけているお父さん。
その言葉からは、また継母に倒れられたら大変だという率直な思いがが伝わって来る。
やっぱり、僕よりも継母は、哲矢やお父さんにとって大切な存在なんだ……
僕にとっては、一緒にいるのもすごく苦痛な人なのに……
「私なら、沢山眠っていたから大丈夫よ! 早く帰りたいわ!」
何日も眠り続けていたと思えないほど、僕が生き返った時よりもずっと調子の良さそうに見える継母。
病室にいるよりも、家に戻れる事が嬉しくて上機嫌な表情を浮かべている。
僕の方は、継母が戻って来る事で、こんなに憂鬱な気持ちにさせられているというのに……
ところが、僕一人だけのそんな気重な思いは、思ったより長くは続かなかった。
重い足取りで歩いている時に、予想外の事が起こったからだ!
継母は意識が戻った事で、よっぽど機嫌が良いのか、珍しく僕の方にも視線を向けて話しかけて来たんだ。
「
えっ、僕に……?
まさか、継母が、僕の事を心配してくれている……?
そんな風に僕を気にかけて訊いてくれるなんて、今までなら考えられなかった……
「あっ、うん、大丈夫……」
僕が不思議に感じつつ、そう答えると、継母は微笑んだ……!?
見間違えじゃない!!
本当に、僕を見て微笑んだんだ!!
今まで無かったような事を急にしてくるなんて、継母の頭の打ち所が悪かったか、もしかしたら、何か良からぬ魂胆が有るのかな……?
「お母さん、聞いてよ~! 僕とお兄ちゃんとお父さんで、家の事、ぜ~んぶ頑張っていたんだよ!」
「そうなの? まあ、小さいのにエライわね~、哲矢! 私が入院していて、大変な思いをさせてしまったけど、みんな、頑張ってくれてありがとう!」
その全員を
それでも、お父さんや哲矢は、頭を打った後遺症なのかも知れないと思っていたのか、敢えて追及しなかった。
でも、僕は、シアニーと色んな不思議な体験をした後だっただけに、もしかしたら……という気持ちが強く働いた。
「お母さんは、中間層に行ったの?」
僕の質問に、哲矢とお父さんは意味が分からずキョトンとなったが、お母さんだけは、さっきのようにまたニッコリ笑った。
「そうよ、随分と待ちくたびれたけど……こうして戻れて、
僕の問いに対するお母さんの答えも、哲矢とお父さんをかなり悩ませたようだったけど、僕だけはパズルのピースが合ったようにしっくりしている!
きっと、お母さんは、入院中に幽体となって
本体を失った継母は、今頃は多分、病院のどこかから、僕らの幸せそうな様子を見て悔しがっていそうだね。
もしかすると、お母さんとシアニーが組んで、ずっとそのタイミングを伺っていたのかも知れないのかも……なんて考え出すと、なんか少し怖いような気もしないでもないけど……
僕にとっては、結果オーライだから!
シアニーのおかげだよ!!
人生の幕を閉じるつもりだったこの僕を救い出してくれた上、全く想定外だった、こんなに素晴らしい贈り物まで用意してくれてありがとう!!
僕は、今までの人生の分も、これから、お母さんと一緒に幸せになるよ!
ううん、お母さんとだけじゃなく、哲矢やお父さん、家族4人みんなでずっと幸せに暮らしていくからね!
【 了 】
完読して頂いて、ありがとうございます m(__)m
明日からは、『楽しくお仕事 in 異世界』コンテスト用の
異世界ファンタジー『生まれる前に決めて来た』を連載する予定です。
よろしかったら、またご訪問して頂けると嬉しいです!
見えない君を道連れに ゆりえる @yurieru
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