因習村の生き残りの青年と村を滅ぼした半人半妖の魔物の旅というと、復讐か哀しみからの復帰を想像しそうだけれど、彼らの動機はもっとシンプルで血生臭い。
魔物は好物である未練や怯えを抱えた人間を喰らいたい、青年の目的は大事な魔物が喜ぶことをしてやりたい。それだけだ。
仄暗い感情への正当化は一切なくふたりだけの世界のところがとても良い。
半人半妖の子は青年だけを親のように慕う子どものようで、青年は穏やかで優しいけれど人間に対する感情を欠いている。
ふたりの間に存在しない悔恨を埋め合わせるように喰らっていく旅だ。
小泉八雲の世界のような和製の伝記らしさを残しつつ、静かなボニー&クライド的な犯罪ロードムービーでもある。
一番最高な関係は共犯者だと思う方にお勧めです。
推し魔物は毛玉ちゃん。とても可愛い。