第4話 仮面のヒビが気になる少女
「やばい」
寝てた。次の授業まで図書館で寝て目が覚めたらもう終わりかけのタイミングで起きてしまった。
もうすぐ夏休み。
単位取れるか際どい出席率だったから出たかったのに。
ブブッ 『今何してるの?』
ブブッ 『今日ご飯行かないかな?』
ブブッ 『全然返信くれないね、大丈夫?』
ブブッ ブブッ ブブッ
なんだかぼぅっとする。
スマホをあんまり見たくない。
お客さんたちからの連絡面倒だなぁ、でもこうちゃんから連絡きてるかもなぁ。
最近、こうちゃんは会社の人たちと飲み会が多くて会う時間も減ってしまった。
連絡はくれるし、デートもたまにするけど、「なんでもいい」「べつに」「あやの好きにして」みたいなことを言ってばかりだ。
ちょっと寂しい。
そう考えているとなんだか会いたくなって、こうちゃんとのトーク画面をだす。
お昼休憩の時間だから、返信くれるかも。
『こうちゃん、今日授業早く終わるからご飯行かない?』
『いいけど、どこ行くの?』
よかった、スマホ見ててくれた。
でも、私こうちゃんとどこ行きたいんだろう。
変にお客さんと会わずに済んで、この間は同伴でお寿司も焼肉食べたし、そうだなぁ。
『ファミレスにでもしよっか』
そうして2人で待ち合わせをして、近くのファミレスに入る。
ご飯を食べてお腹が膨れたら、流れでラブホまで来た。
まぁお決まりのコースみたいなもんだ。
こうちゃんとお風呂に入って、やることやった後、こうちゃんは爆睡しだした。
明日はお休みらしいからこのまま寝かせておいてあげようと思い、掛け布団をかけようとするとこうちゃんのスマホがゴトンと落ちてしまった。
「わっ!傷いってないかな?」
慎重にスマホに触れると知らない女の名前で着信が来ていた。
ご丁寧にバイブレーションも鳴らないように設定されていて気がつかなかった。
その後は必死になってスマホの中身を漁り、その女とのメッセージのやり取り、SNS、着信履歴、全部見てやった。
頭が真っ白になる。
あぁ、これは世で言う浮気で、比較的よくある話で、でも私は、じゃあ私は何のために。
震える手でこうちゃんのタバコを1本手に取り口に咥える。
何人ものお客さんにつけてきた火を自分のためにつけた。
きったねぇ世界。
自分の中身もドロドロできったねぇ。
こんなときに素直に怒れないのは、自分も汚いものを溜め込んでるからだ。
それでも、私は仕事でお金を貰うために男の人に媚びてる。
こうちゃんは違う。
自分が女の人と楽しもうとしてる。
お客さんが私に語りかけるような口調で気持ちの悪い愛の言葉を並べるんだ。
すぅーっ、ふぅ〜
こうちゃんの真似をして大きく吸って吐いてみる
白い煙が宙を舞う
「よし」
タバコに火をつけたまま、寝ているこうちゃんのみぞおちを思い切り蹴る
「クソが!お別れじゃボケェ!」
大声で怒鳴り、目の前でタバコをふかしてやる。
突然のことにポカンとするこうちゃんを置いて私は部屋の扉へと向かった。
ゴンッ!と音が鳴り私はうずくまる。
私、今…
頭がじんじんする。
振り返るとそこには顔を真っ赤にしたこうちゃんが立っていた。
漸減 @NyanMaruPo
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