最終話

夜空に大きな光の花が咲いている。

大きな音と共に広がるその大きな光が集まる人々を照らす。

僕たちはその光につつまれながら、肩を並べ座っていた。

ふと、

視線を隣に座る彼女へと向ける。

その小さな横顔を

いつもに増して美しく夜空の光が照らす。

その眩しいほどの笑顔に

僕は胸を締め付けられた。


こんなにも

こんなにも

君のことが好きなのだから。

伝えよう。

この思いを。


君が僕の運命の人であるのならば、

この切なく苦しい思いを

君へ

打ち明けよう。




土手に置かれた彼女の、その小さな手を握った。

それに気づく彼女は、

ふと顔をこちらに向けた。

その視線を感じながら

僕は詰まる想いに顔を上げれずにいた。

そのまま互いの視線がすれ違ったまま

彼女の耳に近づき、言葉を振り絞った。


「少し、話したいことがあるんだ」


間をおいて

彼女は

こくんと頭を揺らす。


彼女が何か声を発したのか

わからなかった。

大きな花火の音にかき消されただけなのか、

それとも何かを察して

声にならなかったのか。

僕は彼女の手を握ったまま立ち上がり

彼女を暗闇の地面から

引き上げた。


そして歩く

人ごみをかき分けて

花火を見る人の流れと逆行して。

彼女の手を引きながら。

その手の温もりを心に刻みながら。


彼女はどんな顔をしているのだろうか。

不思議に思っているのだろうか。

いや

もう気付いているのだろう。

さあ、

伝えよう。

僕の想いを。

僕の決意を。

一歩一歩、足を進めながら

心の準備を、一つ一つ

進めていく。


人ごみを抜け

立ち止まる。

すこしだけ大きく息を吸って

この緊張ごと一緒に吐き出すように、深く息をついた。

彼女に振り返る。

未だに彼女の顔を真っ直ぐに見れないまま。

でも確かな意思を胸に。

彼女とつないだその手に視線を投げて。


そこには

見慣れた

きれいな

そして、

僕の知らない

指輪が

彼女の指の上で

暗く輝いていた。


ゆっくりと

顔を上げて

さあ、

新しく

僕の一歩を歩き出そう。

このいつわりの世界を

終わらせよう。




この手を離せばきっと

君は僕の未来にいない。




僕は

彼女の手を

強く握りしめて、

ようやく

彼女の美しい瞳を

まっすぐに

見た。




僕の世界に舞い降りた君は

とても


とても綺麗だ

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リンゴ飴とキミ Ray @ray-novel-oerba

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