第6話
森本は、妻の里子さんからレジの調子が悪いと言われて修理をしていた。20代で夫婦二人三脚でお店を始めた頃から使っているレジ。度々、調子が悪くなるのはお互い様だなと思いながら森本はレジを触る。
チーン
森本「うん。まだ使えるぞー」
里子「ありがとー!」
今日は、いつもよりお客様が少ない店内。レジがなおった後、調度お客様がお会計にいらっしゃった。いつも朝早くから来てくれる常連さんの大山さんだった。
大山「はい、バナナあげる」
森本「あ、いいんですか?、いつもありがとうございます」
大山「せがれが果物を送ってくるんだけど、ひとりじゃ食べきれないよ」
森本「良い息子さんですね」
そして、森本が伝票をもらってレジを打とうとした時。修理したてのレジの上に猫のシルバがふてくされ顔で鎮座していた。森本は焦る。ひとつは、シルバはレジの上に乗るのがなぜか大好きで、一度乗ってしまうと中々どいてくれない。二つ目は、さっき修理したばかりで、大きなシルバの体重が様々なボタンがあるレジの上に乗っている。森本は、ふて顔のシルバと沈黙の見つめ合いの中、考えを巡らせていた。
大山「ありゃ、シルバかいな」
森本「さっきレジなおしたばっかりなんですけどね」
大山「こりゃーしばらく動かんぞー(笑)」
森本「お会計650円なんですけど、細かいのあります?」
大山「今日、5000円札しか持ってこなかった。、、あ、でも良いよ、この後は家に帰ってテレビ見るだけだから。おつりは今度で」
森本「いやいや、そしたら今日のお会計は次いらっしゃった時に一緒に頂きます」
大山「そうかい、、悪いねー。じゃあ、、シルバ、この後もお客さん来るから、ほどほどにしてどくんだよー」
森本「ありがとうございます」
そう言い残し、帽子をかぶって大山さんはドアを開けて帰って行く。森本は、シルバをじっと見つめながら、試しに両手を使って持ち上げようとする。
シャーッ
シルバは森本に向かって、ふて顔からの威嚇を見せつける。
森本「嫌なのね、はい。わかりました」
その後も、頑なにレジの上から動こうとしないシルバだったが。学校から帰って来た律子が、シルバをサッと持ち上げて一緒にお店の2階にある自宅へと消えて行ったのであった。
299(肉球)カフェ アラガキ アラタ @aragakiarata
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