第5話
299カフェの入口の扉には、猫専用の小さな出入口が設置されている。その小さな扉から外へ出てきたのはアメだった。アメリカンショートヘアーのアメは、外へ出ると、長いベンチに飛び乗って毛繕いを始める。そのベンチの脇には、店主の森本が趣味で行う花達が花壇の中で綺麗に花を咲かせている。
学校終わりの小学生達が、299カフェの前を通りすぎて行く。アメはチラリと小学生の方を見るも、すぐに自分の毛繕いに夢中になる。
森本「今日はパスタがよく出るなー」
里子「そうねー!足りなかったら近くのスーパーに買いに行ってくる」
午後3時の店内は、ほとんどの席が女子会の方々で埋まっていた。その隅のテーブルで、常連の山岸おばあちゃんがポチを相手に楽しんでいた。
キャリキャリキャリッ、キャリキャリッ。
何やら外から引っかく様な音が聞こえる。
山岸「あらあら、アメちゃんがまた飛び回ってるわ。里子さん!外でまたやってるわよ」
里子「え?、、またあの子は」
ガッ
山岸おばあちゃんから知らせを受けた里子さんが、勢いよく外へ出た。
里子「りっちゃん!!アメで遊ばないのー!お店の窓傷ついちゃうでしょー!」
外にいたのは、下校してきた森本夫婦の娘・律子(りつこ)だった。律子は虫取網の先に沢山の猫じゃらしを取り付けてアメに大ジャンプをさせて遊んでいた。
律子「ひゃひゃひゃひゃっ!ひゃひゃひゃひゃっ!怒られちったー!ごめんなさーい!」
アメは、沢山の猫じゃらしに目を輝かせ、ベンチの上からお店の窓をかけあがり、猫パンチを伸ばして向かっていた。
里子「りっちゃん言うこと聞かないと、今日のおやつなしだよ!」
律子「別にいいよー、いつも勝手に食べてるし!、行くよっアメ!」
里子「なにをっ!?勝手に」
そう言って、ピューッとアメと一緒に律子は店脇に消えていった。里子さんは頭を抱えながらお店に戻る。
山岸「アメと律子ちゃんは似た者同士だね」
里子「ほんとに」
森本「おーい。やっぱりパスタ無くなっちゃったー」
里子「はーい、行ってきまーす!」
里子さんは買い物かごを自転車に乗せて、立ちこぎでスーパーへ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます