最終話  結婚=愛<食べ物! 

 何だかぼ~っとしてる間に式が終わってしまいましたわ。

 神官に一生、この者一人に愛を捧げるかと言われ黙っていたら、アランに思い切り足を踏まれて、声をあげましたの。

 それが肯定の意味と取られてしまいましたわ。

 また、誓約書なるモノにもサインさせられ、全てが終わるとヘトヘトになってしまいました。

 それにどういう事でしょう!?

 ミレーユとエドワゥが神殿の一番後ろの席にいるではありませんか!!


 ミレーユの髪も、エドワゥの右腕もしっかりついていましたわ!!

 ミレーユは貴族の娘だというには貧相な格好でしたけど、清潔感があって、それがミレーユの美貌を引き立たせていましたわ。

 腕には、何の飾りも無い金の腕輪がありました。

 絵師のエドワゥには精一杯の贈り物だったのでしょう。


 それにしても、あの刺客あたくしを騙しましたわね。

 適当な茶髪と右腕を持って来て!!

 気持ち悪がるがずによく確認するべきでしたわ!!

 最高金貨四枚も無駄にしましたわ!!


 ミレーユたちは親族席で、花をばら撒いてくれました。

 いつの間にか、お父様にも許されていますのね。

 フンですわ。

 もう無視することにします。


 あたくしとアランは親族が投げてくれた、祝福の花が舞い散る中を神殿から出ると、

 二頭盾の馬車が待っていましたわ。


「あら、素敵」


「では、お手をどうぞ。奥様」


 アランの紳士ぶりにうっとりしてしまいましたわ。

 きっと、新居にダイヤモンドの腕輪が待っているのですわ。

 人前に出せないほど、たくさんダイヤが付いた……


 そう言えば、急にお腹がすきましたわね~~

 朝から移動や着替えで、ろくに食べてませんでした。

 その旨をアランに伝えると、パンと燻製肉と香草茶が出てきましたわ。

 最高ですわ~~


 やがて、アルテアの王都の石畳を通り過ぎ、土の道になりましたわ。

 アルテアは王都しか整備されていないのです。

 お腹が一杯になって、心地よく馬車に揺られていつの間にか眠ってしまいましたわ。


 ♦️



「カミーユ、着いたよ。起きて」


「え……?はい……ですわ」


 アランに手を取られて馬車を降りるなり、あたくしは固まりましたわ。


「アラン!ここは!?」


「広い庭だろう!!昔の駆け落ちの時に、君が踏んだリスティナを覚えてるかい?あれを元に、ここまで増やしたんだよ」


 ニッコリ笑うアランに、あたくしはただただ、唖然とするばかりでした。


 広大な敷地の庭にリスティナだけが植えられていましたわ。


「まさか、こんな田舎の土地にあたくしを放り出す気ですの?」


「誓約書あるし」


「ダイヤモンドの腕輪はありませんの?」


「ああ、一粒ダイヤの金の腕輪を用意してるよ。間に合わなくて悪い」


「間に合わない!?」


「君の手首がミレーユより、太いのが悪いんだよ」


「はぁ!?」


 あたくしはキレかかっていました。

 腕輪までミレーユの使い回し!?


 広大な庭の奥に平屋の家がありました。

 まさか、ここがアルテアで大成功したドルシア家の館という事はないでしょう?


「ここに、アランのお父様とお母様もいらっしゃるの!?」


「ここは僕の私的な研究所さ。これでも、リスティナの研究の一人者だぜ」


 アランは鼻高々に言いますけど、学者ってお金持ちなのでしょうか!?

 何だか逃げたくなりましたわ……アランが御者にお金を払っている間に、そっとその場を離れようとしたのですが、今日に限ってフリフリのドレスだったのが災いしましたわ。

 裾を踏んずけて、倒れかけた時にアランが気が付いて抱き上げてくれました。


「そうそう、エドワゥに聞いたよ。君はこうやって新居に入りたいんだってね」


「入りたくないですわ!!!ヴィスティンに帰りますわ!!」


「神の前で誓ったよね。僕一人を生涯愛すと。」


「愛しませんわ!!」


「一流料理人を雇ってあるよ。君を空腹にはさせないさ」


 胸に刺さりましたわ、その言葉。


「絶対よ!!」


「ああ、絶対だよ」


 あたくしとアランは、口づけをかわしながら、リスティナの庭を通り抜けて、館へ入って行きました。




(完)

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野に咲く花を花束にして~結婚=愛<食べ物!~ 円香 @erisax

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