すみれの日記

8月14日 水よう日

金魚さんの名前は「すみれ」になった。わたしと同じ名前。「すみれ」っていうお花には小さなしあわせっていみがあるみたい。しあわせになってくれるといいけど、ちっちゃな水そうに入れられるんだからやっぱりしあわせにはなれないのかもしれない。


9月3日 月よう日

わたしも今日から学校。お母さんはわたしにはわすれものがないか聞くけれど、お兄ちゃんには聞いてこない。かえって来てからもお兄ちゃんにはべんきょうって言った。わたしはずっと「すみれ」を見ていたけどおこられなかった。


9月4日 火よう日

学校で、今日はとくにいっぱいおこられた。わたしがなにか言うとみんなヘンなかおをする。だからわたしはまちがっていて、それを直すためにも学校がひつよう。なのにお母さんはわたしよりお兄ちゃんをおこる。それをおかしいとはおもうけど、言えない。お母さんに見すてられたら、生きていけないから。


9月10日 月よう日

お母さんが学校にでんわをかけた。わたしのテストの点がわるかったから。お母さんたちはわたしを天才だってしんじてる。そんなわけないのに。学校のさんすうだってわからなくてお兄ちゃんにきくのに、わたしが天才なわけない。でも、いつものことだからだまっておくの。そっちのほうがつごうがいいから。


9月15日 土よう日

「すみれ」がしんだ。わたしは見てないけど、水そうでうごかない「すみれ」を見て、お兄ちゃんがやったんだってわかった。だって知ってる、お兄ちゃんがわたしをきらいなこと。わたしばっかりお母さんたちに気に入られてるから。「すみれ」はわたしのようなもの。お兄ちゃんはわたしをころしたんだ。


9月16日 日よう日

今日は「すみれ」のおはかを作った。とくいなおりがみでお花も作った。これはわたしのおはか。これからわたしはお兄ちゃんをずっと見てて、お兄ちゃんのねがいをかなえるの。わたしは生まれちゃいけなかった。わたしが生まれなければお兄ちゃんはしあわせでいられた。これからは、わたしがお兄ちゃんをしあわせにするよ。

おにいちゃんをしあわせにできたら、わたしのやくわりもおわるかな。


9月20日 木よう日

さい近はずっと夜中おきてる。お兄ちゃんは夜おそくまでべんきょうしてる。ぜんぶわたしよりお兄ちゃんのほうが大きくておおい。でも自由のかずだけはすくない。わたしならお兄ちゃんを自由にしてあげられる。わたしは知ってる、だってお兄ちゃんにおしえてもらったから。自由になる方ほう。お兄ちゃんがその気なら、わたしはなんでもやってあげるんだから。こういうのをおんがえしって言うんだって。









 月 日   日


いま

おにいちゃんが


ころしてっていった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢に溺れる 四葉 六華 @Liriy-Clover

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ