今日の多元時空猫システム

玄葉 興

シュレディンガーの猫

君達は今日活用されている多元時空猫システムについてはご存知かな?どの業界に行っても必ず使うシステムだ。ぜひ今回で学びきれると良いだろう。活用例等は先程挙げた通りどの分野に渡り使われている為各々で調べてみてほしい。まずはこのシステムが生まれた起源について話そう。


とある科学者にシュレディンガーという男がいた。彼はオーストリアの物理学者で、とあるように彼が猫を用いた思考実験のことを世間一般では「シュレディンガーの猫」という。ここを詳しく説明するのは量子力学に 入る為置いておくが、簡略化して話すとすると箱の中にいる猫が箱の仕掛けで死ぬ可能性を50%として定めると、観測者。つまり我々が箱を開けなければ猫の生死は50%づつで重なりあい猫の生死は確定されていないという話であり、つまるところ我々が箱を開ければそれらの事象は収束して、初めて結果が出るということだ。


これは、また別の文献に対する反論として用いられたマクロだとかミクロだとか私の専門範囲外のお話なんだが、ここで重要なところがある。猫の生死が重なりあうと言う点だ。

民俗学と科学。ほとんど交わり合うことない分野がそれぞれ持ち合わせている伝承や知識を用い、我々はその状態の猫に神秘を見出した。先程の猫の状態はいわゆる三途の川。渡っている最中であれば向こう岸に渡る前に止まれば現世に戻れるって言うアレだ。仲良い人が手を振っていたりするやつ。話を戻すがその場合、川を渡る選択権は誰にある?生死を弄んでいる我々か?それとも向こう岸にいる別のナニカか?いやそうではない。


。それらを決めるのは全て猫なのである。当然だろう。そこに我々は居ないし別のナニカは手を振る、名前を呼ぶ程度の干渉しかできない。あくまでもその先に進むか否かを決めるのは猫。民俗学の観点から見ればそこは現世と黄泉の国の道。境目である黄泉比良坂。日本創成になぞらえれば猫はイザナギそのものである。


では、イザナギが黄泉の国に行ったのは何故か。こちらを知っている人はいるかな?そう、黄泉の国へ行ってしまったイザナミをもう一度現世に呼ぶためだ。しかし。猫はどうか。猫はそれより先に進む理由もなければ、わざわざ現世に戻る必要も特にない。猫は 気まぐれなのだ。


ではこの話が何につながるか。それが科学のお話だ。少し前に「選択権」と伝えたがそれは普段の我々にも当てはまる。自分の人生を生きる者は「選択権」がそれぞれに委ねられる。それを取り上げたり取り上げられたりする者もいるだろうが。科学では、その選択権を他者に委ねる方法を作ったのだ。責任転嫁と言えば悪い言い方だが、託すことができる画期的なシステムだ。この力は万能で、それで定まったことは世の理として確定、地球から観測される。観測。これもお話ししたね。観測されて決定される。これ、どこかで聞き覚えがあるだろう。


観測者は地球。選択権は他者。ここで問題になるのは委ねたからどうこうということだ。他者に委ねてよかったこともあれば委ねた結果良くない結果に陥ることもあるというのが初期の科学分野での実験結果となった。


ではどうすれば良いのか。必ず良い選択に出来ない我々人間は他者に委ねても意味がないのか。そこで民俗学と科学のつながり。


。イザナギ。生死の選択者。


生死を選択する。これほど重たい選択はないだろう。この選択者ならば選択の誤りが発生してもしょうがない。初めはその考えでそう乗り切ろうとした。それがシステム初期のこと。


発展段階の話に移ろう。このシステムの運用当初は納得いっていない人々も数多く居たものの、選択者の猫が可愛いのもあって大多数は不服ながらもシステムを使用し、選択を委ねていった。


しかし、犬派の人々は猫がそれほど好きじゃないからの理由等では反対できないため、こう世間に問いかけた。

「確実に良い選択にならないならば使う意味はない!」と。確かに言う通りではある。結局システムを使用しなくとも良いことはいくらでもある。ただ責任をシステムに押し付けられるだけ。その程度の差だ。でも。それでもだ。人々は責任の重圧に耐えかねた。責任アレルギーという病気も生まれた程に。責任という字を見るだけで嘔吐をしてしまう激しいアレルギー。一時は社会問題となっていた。


犬派だからと無理やりシステムを使わず、責任に押し潰されていく人々でも救いたい。そう考えた科学者たちは少しでも選択を良い方に運ぶ方法を絞り出した。選択している猫。猫が間違いなく良い方に進むために誘導する方法。ちなみにここで使う「良い」とは委ねた本人達の意思に基づいて行われる。


猫を誘導するためにはあれを使うしかない。科学者達は技術の粋を集め、ついに選択権が発生する場所に猫を簡単に誘導する方法を編み出した。そうINABAのNEOチュールだ。

INABAは聞いたことがあるだろう。世界的にロケット打ち上げ等もする超技術団体だ。

NEOチュールで猫は確実に本人らが望む結果に辿り着き、本人らは猫が選択したと。そう発言すれば責任を被ることが一切なくなった。


まとめよう。多元時空猫システム

<>とは、自身による、自身のない選択を他者、猫に委ねて確定させるシステム。今日の責任問題に終止符を打つ画期的なシステムだ。


多元時空猫システムは人類の救いとなった。しかし一難去ってまた一難というべきか。

民衆たちはこう叫ぶ。

「箱の中で選択している猫の権利を守れー!

選択させられている猫の自由をー!」と。

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