第10話 賢者無双×賢者DT捨てる×賢者は賢者モードにならない

 リリーは自前の飛行魔法で馬上から飛び上がると、俺と並んで空を飛んだ。


 一部の兵が弓矢を放ってきたけど、ストレージ送りになった。


 中衛の上を通り過ぎて、俺とリリーはさらに奥、後衛部隊の前に降り立った。


 100メートル先に布陣する歩兵部隊、それに、格好からおそらく魔法兵と思われるニワトリ獣人たちは困惑しているようだった。


 彼らからすれば、開戦早々、いきなり弓兵隊と騎兵隊が入り乱れる大混戦になったのだ。


 こんな事態は、初めてだろう。


「ファイアーボール、乱れうちだ!」


 俺は周囲の空間に魔法陣を10個展開。その中から火球を次々放った。


 歩兵隊は盾で防いでから激昂し、進軍してきた。



 俺の長髪にまんまと乗ってくれたところで、俺はストレージを起動した。


「じゃあリリー、幻惑魔法よろしく」

「OK」


 俺は、相手との間の地面を横幅2キロ、前後幅3メートル、深さ5メートルの規格で収納した。


 けれど、リリーの幻惑魔法で地面は変わらず、そこにあるように見える。


 ニワトリたちは空堀にバカみたいに突っ込み、次から次へと地面に消えた。


 5メートルの深さでは転落死はしないかもしれないけど、それでいい。これには、きちんとした理由がある。


 しばらくすると歩兵たちは見えない穴に気づき、足を止めた。


 代わりに、魔法兵たちが飛行魔法で空を飛んできた。


「ニワトリなのに飛ぶなんて根性あるなぁ」


 推定100人近い魔法兵たちが攻撃魔法の体勢に入ったので、俺も迎撃態勢に入る。

 が、俺の機先を制するように、リリーが前に出た。


「ニワトリも鳥目か、ボクに教えてくれるかな?」


 彼女が頭上に魔法陣を展開すると、周辺が薄暗くなった。まるで日食だ。

 俺にとっては日没直前程度で相手の姿は問題なく見えている。

 一方で、ニワトリの獣人たちは首を巡らし、動揺していた。


「お前らには焼き鳥がお似合いだよ! 照準セット、ホーミング、発射!」


 彼女の両手にそれぞれ魔法陣が展開。間髪を容れず、火球が連続で放たれた。


 数十発の火球は吸い込まれるように魔法兵たちの顔面を直撃。全身の羽毛を炎上させんがら墜落していった。


「まっ、ざっとこんなもんかな」

「すご、サキュバスって幻惑魔法だけじゃないんだな」


 よくも考えてみれば、あのモンスターだらけの森で暮らしているんだ。弱いわけがない。


「ふふん、もっと褒めてくれてもいいよ」


 戦場なのに、リリーは緊張感なくすり寄ってきた。

 肩が触れ合うと幸せな気持ちになれてお得な気分だった。可愛い。

 そこへ、甲高い怒声が割り込んできた。


「貴様が噂に聞く異世界の勇者か! 我が名はチケン大佐! 尋常に勝負しろ!」


 ひと際大柄で重装甲の鎧を身に着けたニワトリが、両手にハルバードを握った二槍流スタイルで決闘を申し込んできた。

 その背後には、まだ2000人以上の歩兵が残っていそうだ。


「じゃあ、俺もちょっとかっこいいところを見せようかな」


 異世界転移初日、俺は海で素材を収集しながら使える魔法を片っ端から試して、効果を実験していた。

 けれど、レベル1の時はMPが足りなくて、発動できない魔法がいくつもあった。

 そのひとつが、これだ。


「極大風魔法! シン・ハリケーン!」


 俺のMPが大量に消費された直後、烈風を超えた激風が、爆風が吹き荒れた。


 チケン将軍は鎧と羽毛がバラバラになりながら跳ね飛ばされて、背後の歩兵たちも赤い飛沫となってぶっ飛ばされた。


 それはおよそ気体に許された威力ではなく、まるで堅牢な見えない壁が音速で通り過ぎたと言っても過言ではない有様だった。


 極大風魔法はどこまでも駆け抜けていき、荒野の遥か後方、敵本陣まで消し飛ばしてしまった。


 まるで戦略兵器だ。


 ストレージの中の死体の数が、一気に2000人以上増えた。


「俺たちの勝ちだな」

「だね」


 リリーが俺の肩に抱き着いてきて、二の腕がサキュバス特有の爆乳に挟み込まれた。


 ――守りたい、この感触をいつまでも!


 それが俺の正直な想いだった。



   ◆



 4時間後。

 戦後処理を終わらせた俺らは、論功行賞に移っていた。


 エリーゼが、誰一人として欠けることなく生き残った500人のヴァルキリーたちに向かって声を張り上げた。


「では、これより論功行賞に入る! まず、本日生き残った貴君たちは全員、無条件で二階級特進! 二等兵から一等兵を飛ばし、兵長に任ずる!」


 ヴァルキリーたちから歓声が沸き上がった。


 それは勝利と出世に対するものだけではなく、自分たちの働きを正当に評価してもらえたことに対する歓喜の声だった。


「加えて、特に働きの良かった者20名は兵長の上の伍長に任ずる。その者には今後、切り込み隊長として先陣を任せたい。さらに、周囲の状況に目を配り、仲間を助けた者20名は伍長の上の軍曹任ずる。今後、500人を50人10個小隊に編成する予定だが、この者たちには小隊長と副隊長を任せたい。では、その者の名を発表する!」


 そうしてエリーゼが一人名前を挙げるごとに歓声と拍手が起こり、論功行賞は大盛り上がりだった。


 そこへ、無粋な声が割って入る。


「こ、これはどういうことだ!? 敵軍は!? 1万の魔王軍はどうした!?」


 口をあんぐりと開けて固まっているのは、白馬にまたがったベクターだった。

 そのうしろでは、クラスメイトの男子たちも戸惑っていた。

 誰も彼もが周囲を見渡して、敵を探している。


「ああ、それならエリーゼ様が率いる我らがヴァルキリー隊が殲滅したぞ」

「んなわけあるか! いや待て、はっはーんわかったぞ。さては賢者、貴様が大魔法で殲滅したんだろう。どうやらハイランクジョブは想像以上に強いらしい。なら、ハイランクジョブホルダーを4人抱えるオレも次の戦場では」

「妄想にふけるところ悪いけど、倒したのはあくまでもヴァルキリーたちだよ。その証拠にほら」


 俺はストレージからニワトリたちの死体を出した。

 雪崩のように現れた死体に驚愕するベクターに、解説してやる。


「ほら、どれもこれも切り傷刺し傷で死んでいるだろ? 俺の魔法じゃこうはいかないよ。疑うなら一体ずつ見聞する?」

「む、むむ。これは……」


 これが、俺が落とし穴の深さを5メートルに抑えた理由だ。

チケン大佐を倒した俺は、ヴァルキリーのみんなに穴の中の歩兵たちを槍で突き殺してもらった。


 転落死のバラバラ死体じゃあ、俺の手柄にされてしまう。


 もっとも、極大風魔法で倒した敵は見るも無残な感じだったけど、それはストレージにの中に潜ませておいた。


「じゃ、この戦いの手柄はぜーんぶエリーゼのものということで。みんなー、帰って祝勝会だよー」


 ヴァルキリーたちはベクターを無視して愛馬にまたがると、俺と一緒に王都を目指した。

 ベクターの横を通り過ぎると、背後から汚い怒号と絶叫が空に響いた。


 ――青春だなぁ。


 なんて思いながら飛行魔法で飛んでいると、俺と並走するようにして飛ぶリリーが笑いかけてきた。


「じゃあセイヤ、戦いも終わったし、帰ったらいっぱい可愛がってね」

「え……………………?」


 ――えぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?



   ◆



 ある昼。

 あてがわれた寝室に錬成したキングサイズの最高級羽毛ベッドの上で、俺は一歩も動けずにいた。


 ダメージはゼロなのに、HPもゼロのように感じられた。


 初体験の感想は。



 ――SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!! SUGOIIIIIIIスゴイー! すごすぎるぅううううううううう!


 

 もう、本当にそれしか出てこない。


 昨晩、夕食を終えてから初めた行為は一晩中続き、朝になっても終わらず、互いに精も魂も尽き果てて自然と体が離れてベッドに倒れ込んだのはついさっきだ。


 リリーのなめらかで吸い付くような白い肌も、Kカップの豊麗なおっぱいも、指がめり込んで沈み込むボリューム満点のお尻も、甘美な舌と口内も、そして、熱くて肉厚で貪欲で底無しに俺を絞り上げ圧搾して離してくれない彼女のナカも、まるで新次元の快楽しかなかった。


 俺は手と言わず口と言わず下半身と言わず、全身が性感帯になったような快楽に溺れ尽くして浮上できなかった。


 消耗し尽くした今でも、下半身の奥にキンキンとした感覚が収まらず、体がビクビクと痙攣している有様だ。


 なのに、ここまでやってなお、俺は切望していた。



 ――もっと、もっとリリーを味わいたい。特に、リリーのおっぱいを!



 ごろりと首を倒すと、隣で眠るリリーの姿態が目に入った。


 仰向けでもなお球形に近いドーム型を保つ弾力とボリューム溢れ、天上に乳首を向ける奇跡のおっぱいに鼻息が荒くなって下半身に力がみなぎった。


 足りない。

 また足りない。

 こんなものでは、満足できない。


 リリーに負担をかけないよう、一晩中彼女に回復魔法をかけながら自力で励んでいた俺は、這うようにして彼女のおっぱいに手を伸ばした。


 すると、甘い肉声が一言。


「ダーリンのえっち」

「!?」


 彼女は起きていた。

 俺と目が合った彼女はサキュバスらしい、魅惑的に妖しい笑みを浮かべながら、体を横に倒した。


 規格外のおっぱいがどたぷんっ、という擬態語と共に形を変えて俺と向き合った。

弾力溢れるリリーのおっぱいが作るかがみもちバストに、俺の下半身は一瞬で蘇生した。


「ふふ、元気いっぱいなんだから、ねぇ、もう一度」


 両腕で特盛バストを挟み込んで強調しながら、リリーは笑顔と共に誘ってきた。


「おっぱいする?」


 その瞬間、俺の理性は吹っ飛んだ。


「するぅううううううううううう!」


 俺は跳ね起きてリリーのおっぱいにダイブした。


 賢者モードなんて知らない。

 性欲が満たされたらおっぱいを見ても何も感じなくなる?


 そんなわけがない。


 そもそも性欲はおっぱいさえあればいくらでも湧きあがるもの。

 性欲が満たされても、おっぱいを見直せば再び渇望感が出て当たり前。

 俺は欲望と本能のままに、リリーのおっぱいを堪能した。

 

 三時間後、俺は気絶して目覚めたら医務室のベッドで眠っていたのだった。

 でも、結局最後まで賢者モードにはならなかったよ。


●今日の雑学

 巨乳が頭が悪いというのは完全な嘘。

 昔、ヨーロッパで巨乳の女性はモテて早く結婚できるため、若奥様が多く、若いので人生経験が浅かったりマナーを身に着け切っておらず、ミスが多かった。

 それが、巨乳は頭が悪いという偏見を産んでしまったと言われている。


 10代の巨乳女子高生たちと、20代の貧乳OL女性たちで社会人のマナーテストをやったら、20代の貧乳OL女性チームが勝つとは思う。

 私なら、原因は年齢と社会経験の有無だと考える。

 が、人々はおっぱいの大きさが原因だと思い込んだ。

 頭を使わず他人にイチャモンをつけて差別虐待するのは今も昔も同じという話。


※第一章完 人気なら本格投稿

★鏡銀鉢の作品は基本、巨乳ヒロインしか出ません。

 書籍やカクヨムに投稿している他の作品も読んでくれると嬉しいです。

 カクヨムは作品多すぎてどれを読めばいいかわからないという人は一番人気の【スクール下克上】を読んでいただければ間違いないです。

 最新246話の時点でヒロインが10人いますが、ロリキャラ1人をのぞいて全員巨乳以上です。

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この賢者がおっぱい星人すぎて賢者モードになるヒマがない 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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