第20話 召喚者の、続く異世界生活
こういう場合は謝るしかない。
「ホント、ごめん‼」と頭を下げると、不意を突かれすぎたのか、ニアとエルが呆然としている。
「?」
「ミサト?」
2人とは、もう半年以上一緒にいる。
なのに、敢えて言葉にしなかった、わかっているだろうで流してきた、大切な気持ちを紡ぎだす。
「まず誤解してる‼私は元の世界には帰らないよ‼」
いや、帰りたくないわけじゃない。
帰れるものなら。
でも、帰れた人はいないって知り、いつまでもそこに拘るほど無駄なことはないと思う。
「でも、だからっておとなしく奴隷してたら、私79歳まで解放されないんだよ‼」
人間の79歳は老人です。
「ニアとエルが奴隷を終わる30年後だって、私49歳だし、たぶん2人のお母さんみたいな外見になってるし‼」
それはキツい。マジでキツい。
「だから早く借金は返したいし、工場を出て、普通にこの世界で暮らしたい‼」
「…」
「ああ…」
「で、ここで問題です。」
急にテンション変えたから、2人が呆気にとられている。
「私が1人で暮らして、無事に生き残れると思いますか?」
「え?」
「にゃ?」
「絶対無理でしょ‼料理すれば腕が落ちるし、掃除すれば壊すほうが多いし‼」
「?」
「あー、うん。」
そう、最初から。
「返していたのは最初から3人分‼カナンが言ったのは途中経過‼」
この2人無しで生きていけるとは思えない。
って言うか、この2人の友人無しで生きる未来なんか想像したこともない。
いつだったか聞いたことがある。
300歳くらいまで生きるニア達獣人の適齢期は50歳から80歳くらい、1000年以上の寿命を持つエルフに至っては200歳くらいまで結婚しないものらしい。
「私は、ニアの結婚式におばちゃんとして出席して、年の離れた孫枠で、エルに看取ってもらって死ぬの‼
2人共、私の人生に付き合ってもらうから‼」
堂々と宣言した後、
「ごめん。借金3人分返すこと、カナンには言ってあったんだけど、2人は伝えてなかった」と、今1度頭を下げると、ニアとエルに飛びつかれた。
「わかった‼おばちゃんで絶対出席させてやるにゃ‼」
破顔一笑、ニアが元気な声を出し、
「看取らない。絶対長生きか不老の呪文、探し出す」と、大真面目に言うエル。
おいおい、エルさんや。ちょっと怖いよ(マッドサイエンティスト?)。
ここからさらに半年余りで3人分の借金完済、スノタウンに家を持つこと。
なんか研究しすぎて、10年後くらいにエルが『大魔導士』と呼ばれること。
近々には、カナンが解放時各種特許の権利を譲渡してくれたおかげで、
『そっちばかり金持ちになってズルい』と王様がちょっかいを出してくることは…
また、別の話である。 了
うちの低スペック勇者(勇者ではない⤵️)にお付き合いいただき、ありがとうございました
(*^ー^)ノ♪
異世界ものによくある設定、寿命の格差社会で友情は成立しうるか?が裏テーマでしたが、海里とエルで遊びすぎた……
中編縛りで書いたので、ここで終了と致します。
エルに魔改造されないことを祈りつつ……
読んでいただきありがとうございました。
異世界紡績 @ju-n-ko
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