第19話 察しの悪いバカ彼氏性格と、獣人さんとエルフちゃん

 昔から私には、そういうところがある。

 人と仲良くなるのは得意だ。でも、一定以上仲良くなってしまうと…

 『釣った魚に餌をやらない』じゃ変だな、うーん、人付き合い上の闇魔法レベル3、『言わなくてもわかる筈』が炸裂するのだ。

 彼氏…はいたことないけど、男女間だと別れの原因にもなるこの呪文…

 これまで何度もやらかしてるのに、またやった。

 バカだ、私は。

 「お主、あいつらに言ってないじゃろ、例のこと。」

 「う…」

 「しかもお前は召喚者じゃ。借金完済とか、不安にさせる要素しかないわ。」

 「ううう…」

 反省、してます。

 「悪い、カナン。行ってくる。」

 部屋を駆け出し、ニアとエルの後を追った。

 カナンが、

 「まあ、すぐ追いかけれるだけ、たぶん謝ることが出来るだけ、バカ彼氏よりはマシじゃがな」と呟いたのは…

 今の私は、知らないことだった。


 sideニア

 寮の1階、階段裏のデッドスペースにエルを見つけた。

 最近エルは表情が見え始めて…って言うか、めちゃくちゃ泣いてるにゃ。

 うわーっ、どうしよう。

 ………

 でも、気持ちはわかる。

 私もミサトがいなくなったら寂しい。

 ミサトは馬鹿な人族の王様のせいで、別の世界から召喚された。帰りたい場所だってあるかもしれない。

 明るく元気な人なので、心の中まではわからない。

 でも、あんにゃに一生懸命借金を返していたし、たぶん…

 「エル。」

 隣に座り込む。

 「ミサトは、別の世界の人だよ。」

 あえてそっけなく言えば、こちらも苦しい。

 私は失いたくない気持ちを素直に表現しにゃいけど(逃げてる?)、エルは素直だ。

 「やだ」と、呟く。

 キレイだと、思う。

 不貞腐れようが、泣きわめこうが、この子はキレイだ。

 具体的には聞いていない。

 寿命もバラバラ、他種族が同居するこの世界では、お互いに不干渉で行くのが1番良い。

 私もエルフのことは通り一遍しか知らないにゃ。

 でも、恐らくエルは『ハイエルフ』で、馬車旅で寄ったあの村に他の存在を見なかったことからも、浮いている、1人きりの存在とわかる。

 エルフにとってハイエルフは『神様』に近い、尊敬される存在だから、友達もいにゃいだろう。

 他種族の私だって、

 『うわっ‼ハイエルフ?』と、初対面では驚いた。

 今は何とも思っていない。エルはエルだ。

 でも…

 特別扱いされる側は、区別される側は、そうしようとする感情に敏感にゃ。

 申し訳なかったと今更思うが、そうなるとあの何にも考えていない、ありのまま、そのまま受け止めるミサトの気性は稀有すぎて。

 失いたくない、気持ちがわかる。

 エルがミサトに執着する、心のありようがよくわかるのにゃ。

 でも、ミサトも召喚された、よその世界の人間で…

 堂々巡りにゃ。

 私だって失いたくない。

 帰る方法がわからないなら(亜神様は帰れた人間はいないと言った)、このままここにいればいいと思う。

 でも…

 考え込んで、『泣き虫エルフ』に付き合っていると、

 「うわっ‼こんな所にいた‼」と、ミサトが追いかけてきてくれた。

 いきなり謝る。

 「ホント、ごめん‼」、と。




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