モノノ怪達の生きる世界
庇恵ネコ
第1話
「もう朝か…。」
その一言でぱっちり目を覚ますと、俺は今から行くバイトの準備を始めた。
眠い目をこすりながら準備をしているから忘れ物がないか心配になったがそんな時間はない。
さっさとジャージの部屋着からバイト着に着替えて玄関に行きスニーカーに履き替え扉を開けた瞬間
「…どこだ、ここは。」
扉の先に広がっていた景色はいつもの街通りではなく、桜の木が生い茂った古い道だった。
「いつもの……街じゃない……?」
とりあえずバイトに遅れそうになったため場所に向かった。
バイトに向かう途中、明らかに人ではないなにかに睨まれていた。
なぜ睨んでくるんだ…と思いながらバイト場所に向かった。
バイト場所に着いたらそこにいつもの飲食店はなくただの古びた喫茶店だった。
「なんなんだここは……。いつもの所じゃないのは分かるが…。」
とりあえず周りにいた狐耳の生えた人に聞いてみることにした。
「あの…すみません。ここは何処ですか?」
そう言うと狐耳の生えた白髪の方は不思議そうに
「何言ってるんですか?ここは遁世ですよ?」
とんせい…?何を言っているんだここは日本のはずだ。
「遁世ってなんですか?ここはどこなんですか?なぜ俺のような"人間"がこのような世界に来たんですか?」
そう言った瞬間、周りにいた人外たちの目が変わりじりじりとこちらに寄ってきた。
俺は怖くなり逃げ出そうとしたが、話しかけた突如白髪の人に抱えられそこから逃げ出した。
俺は何が何だか分からず、その人にさっきみたいなことになぜなったかを聞いた。
「…なぜ先程の人外たちは急に襲ってきたのですか?」
「それはお前が"人外ではない"からだよ、人間」
「…人間は人外たちにとって何なんですか?」
「なぜ助けてくれたのですか?」
少し間を置いてその方は言った。
「……人間はいわば君たちがいつも食べている豚や牛と一緒の"食料"なのだよ。」
「助けたのに関しては昔にここに迷い込んできた人間がいたからな。そいつはうちの宿の従業員をしていた。結局、隔界…君が住んでいた世界に戻れず遁世で亡くなって行ったがな。」
そういうと懐かしそうにおもいでにふけっていた。
「お前…名は何だ。」
「……来栖七海です。」
「七海か…。女性らしい名前だが、ガタイ的に男性か。」
「あなたの名前は?」
言ってくれるかもしれないと尋ねることにした。
するとその方はクスッと綺麗な笑い方で笑ってから
「……蒼狐だよ。七海よろしくね。」
妖艶なその笑顔はすぐ僕の心を惹かせた。
「あなたは女性ですか?」
「あぁそうとも。この喋り方でわかるやつはいないのだがよく分かったな七海。」
なぜ女性か分かったのかなんて簡単だ。今さっき、この人が言っていたみたいにガタイで分かったのだ。
しかし男子大学生を持ち上げられるほどの怪力なのかと思うと少し驚いた。
「さぁ七海、お前はこれからどうするのだ?
人間を働かせてくれる・住ませてくれるところなんてここには無い。」
どうしたらいいかなんて考えられなかった。
ここで野垂れ死ぬしかないのか……と考えていたら
「…だが七海、お前が良ければなのだがうちの宿屋で働かないか?
うちの宿屋には元々人間が住み込みで働いて居たからな。いいバイト体験にはなるんじゃないか?」
驚いた。こんな人間を仕事に誘ってくれる方がいるなんて。それとバイトという言葉を知っていることにも驚いた。
「バイトっていう言葉、知っているのですね」
「あぁ、知っているさ。
だって我は遁世にも行くからな。」
「しかしここ最近は、遁世に行けなくなってるいる。狭間が歪んでいるのだろう。七海が戻るのにも時間がかかる。だから戻るまでうちの宿屋で働こう。」
華奢な笑顔で言ってくれた。
俺はそんな優しさに感謝して働くことにした。
「…蒼狐さんがそこまで言って頂けるのなら働きます。よろしくお願い致します!!」
そしてその蒼狐さんが働いているという宿屋に着くと…
「「「蒼狐様、お帰りなさいませ。」」」
……様?偉い人だったのか!?そんな人に背負ってもらっていたのか!?
モノノ怪達の生きる世界 庇恵ネコ @HikeiNeco912
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。モノノ怪達の生きる世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます