おまけ話(結婚式の夜のお話)


おまけ話(結婚式の夜の円卓にて)


 本来であれば結婚式の後は晩餐会があり、夜遅くまでスラヴァーグ公爵邸は祝賀ムードに包まれるはずでしたが、私の発言により晩餐会はかなり時間が短縮され、緊急会議が開かれることになってしまいました。


 緊急会議の参加者は問題発言をした私、シャルロット。スラヴァーグ公爵家の当主である私の父。今日をもって夫となった義兄···いえ、夫のジークフリート。この屋敷を仕切る執事マークブラウン。私の侍女であり現在侍女長であるエリス。ジークの侍従··正確には執事見習いのローレンス。表向きは庭師をしているガルド爺の7人が円卓を囲み···違いますね。

 円卓の席についているのは私と父とジークのみで後は私達の背後に立っております。


「さて、シャルロット。式での発言の意味を説明しなさい」


 お父様は私に説明を求めて来ました。式から今までゆっくりとお茶を飲むこともできませんでしたものね。私は目の前に用意された紅茶を一口飲み、私が見聞きした事柄を説明しました。


「お父様。わたくしはあのとき主神エルドラード様にお会いいたしましたの」


 その言葉にジーク以外の人たちが驚きの表情をしました。ジークとは少し時間が取れましたので、大まかな話はしていましたの。


「そして、エルドラード様はおっしゃいました。『未来調整が働かないからおかしいと思っていた』と。『これもまた一興というものか』『ダメなら創り直せばいいか』と、言われたのです。どうやら、わたくしが色々動いた所為で、未来調整というものが働かないようになっていたようです」

「それは何故かな?」


 お父様が未来調整が効かない理由をきいてきましたが、私にもさっぱりわからないのです。上界という言葉の意味が私にはわからないので···ん?上位世界の略ってことなのですか?世界にも階級があるというのですね。


「それは、わたくしが上位世界から落ちてきた魂でできているからですわ」

「うーん?よくわからないが、魂というものは落ちてくるものなのかね?」


 そのような事を問われても私にはわかりかねることですわ。ジーク、何故いきなり私を抱き上げて膝の上に座らせるのですか!


「ジークフリート様!お嬢様をお離しください!」

「ジークフリート様!何事も節度というものがあると何度も言っておりますわよね!」


 ローレンスとエリスがジークの行動を諌めます。ここ半年ほどのジークの距離感には中々なれません。なぜ、私はジークの膝の上に座らされているのか理由が全くわかりませんわ。


「お前たちはさっきの話を聞いて何も思わなかったのか!シャーリーが何処かに行ってしまったらどうするんだ!」


 え?今のは魂の話であって、今の私の話ではありませんことよ?実害はありませんので、話を続けます。


「魂云々の話はわたくしにはわかりません。それから、”管理者”とエルドラード様は言われていましたが、神の事を指すのだと思いました。その”管理者”同士でお遊びのような賭け事をして、この世界に魔王なるも者を呼び寄せると。そして、アルフォンス殿下を勇者として、ロザリー嬢を聖女としてその魔王を迎え撃とうとしておられたというです」

「神同士の賭け事で魔王を呼び寄せる!!なんて言うことだ!」

「正確には投入すると言われました」


 お父様の言葉に一部修正を入れさせてもらいます。


「シャルロット。意味合いは大して変わっていない。しかし、あのアルフォンス殿下、いや今はだたのアルフォンスだったか。彼が勇者だと言われても信憑性に欠ける。剣すらまともに振れなかったと報告を受けているのだぞ」

「勇者の素質には狂ったほどの正義感があればよいのではないのでしょうか?」


 あら?お父様の言葉に私が考えてもいないことが口から出てきましたわ。勇者の素質には狂ったほどの正義感ですか。確かにロザリー嬢のことになりますと、その正義感というものを振りまいていましたわね。


「はぁ、しかし神が考える未来と違ってしまったという事実は、矮小なる我々ではどうしようもないものだな」


 魔王という存在に対し、迎え撃つ勇者が勇者として育っていない事実にお父様は頭を抱えているようです。しかし、そこまで悲観することはありませんわ。


「お父様、わたくし。エルドラード様から魔王討伐の許可を得ましたの」

「「「「は?」」」」


 ジーク以外の視線が私に突き刺さります。


「ですから、世界から『悪役令嬢の役』与えられた、わたくしが魔王を撃つ許可をいただきましたわ」

「シャルロット。同じことを言わなくてもいい。しかし、シャルロットはこのスラヴァーグ家の唯一の直系だ。そして、私の大切な娘だ。そんな命を落としかねない死地に向かう許可を、スラヴァーグ公爵としても父親としても出すことはできない」


 確かに私はスラヴァーグ公爵家の唯一の直系ですわ。しかし、血族となればジークをはじめ、多くの者たちがおります。私の代わりなど如何様にでもなるのです。皆が平穏に暮らすためであれば、悪役令嬢としてその力を大いに奮うことを厭いませんわ。


「でしたら」


 今まで公爵としてのお父様と私の話を黙って聞いていたジークが入って来ました。


「別の跡取りがいれば良いということですね」

「ジークフリート。どういう意味だ?シャルロットの代わりなどできる者はいない」


 まぁ、お父様。私の代わりなど掃いて捨てるほどいるでしょ?所詮、悪役令嬢として世界から見捨てられるような存在ですもの。


「シャーリーの話では魔王の出現は早くて一年後。ならば、さっさと次の跡取りを作ればいいということです」


 ん?次の跡取り?

 そう言ってジークは私を抱えたまま立ち上がりました。


「そういうことですので、一ヶ月は私達に仕事を振らないでいただきたい」


 一ヶ月?それはどういう意味なのでしょうか?

 私がジークの言葉に首を傾げていますと、そのまま部屋を出てしまいました。


「ジークフリート様!お待ち下さい!何事にも準備というものが必要です!」


 エリスが慌てて追いかけてきました。


「ジークフリート様!もう少し待てないのですか!まだ、話し合いの途中ではないですか!それに一ヶ月間お嬢様を監禁でもするつもりですか!」

「ローレンス。私は半年間待ったのだ。十分待った」


 ジークは何を半年間待ったのでしょうか?しかし、エリスとローレンスの慌てようが酷いですね。エリスなんて小走りでジークを追いかけて来ていますし、ローレンスもジークを引き留めようと手を出しています。しかし、ジークに避けられていますけどね。


「ジークフリート様!シャルロット様は基本的にその手の知識はお持ちではないのです!そのまま突っ走るとシャルロット様に嫌われますよ」


 エリスの言葉にジークは足を止め、立ち止まってしまいました。そして、『嫌われるのは嫌だ』という呟きが聞こえてきます。


 いったい私は何の知識を持っていないと言うのでしょう?私は悪役令嬢として必要な知識は持っているはずですわ。そんな私に何が足りないと?

 私の中の悪役令嬢としての情報を探してみても思い当たることはありません。おかしいですわね。


「シャーリーは私を嫌うか?」


 ジークがどういう意味を持って聞いてきたかわかりませんが、私はジークのことを嫌いではありませんわ。


「ジークのことは好きですよ」


 私の言葉にキラキラした笑みを返されました。そして、歩みだすジーク。後ろからは『お待ち下さい』と追いかけてくるエリス。その横には『ジークフリート様の言葉の意味をお嬢様はわかっておりませんから!』と失礼なことを言ってくるローレンス。


 これが私の日常です。この平穏は私が守ってあげますわ。


 しかし、ジーク。私の部屋は通り過ぎてしまいましたけど、どこに向かっているのですか?



 まぁ、その後私に何が起こったかは皆様のご想像にお任せしましょう。ただ、色々大変でしたわと一言付け加えさせていただきます。




_______________


ここまで読んでいただきましてありがとうございました。


この度、恋愛週間ランキングで100位以内に入りましたので、そのお礼として急遽書かせていただきました。


イチャラブを書こうとしたものの、シャルロットの性格では、イチャの部分で挫折。このような感じに···お礼になっていないような?

誤字脱字は毎回ながら程々にあると思います。思い立った翌朝4時から書き始めたのでwww




この作品を読んでいただきましてありがとうございます。

フォロー、そして応援をしてくださいました読者様、ありがとうございます。


★評価していただきました読者様、ありがとうございます。そのお陰でランキングにぴょっこり顔を出すことができました(*´∀`*)



もしよろしければ、面白かったと評価をいただけるのであれば、一番最後の☆を押して評価をしていただけたらと思っております。


読んでいただきまして本当にありがとうございました(。>﹏<。)!!


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悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜 白雲八鈴 @hakumo-hatirin

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