いつも一緒な幼馴染の様子が今日はおかしい

来栖みら

第1話 正体と問いかけ


「だーれだ!」


 一人居残った教室で窓の外を見ていた自分の視界が明るい声と共に暗転した。


「あれ、分かんない?」


 若干含みのある問いかけに俺はいつも通り無言で頷く。もちろん聞き慣れたこの声の正体は分かっている。


「えーーホントに分かんないの? らしくないなーー。じゃあ答えを発表します。どるるるるるぅ……ダン! 正解は幼馴染のあいちゃんでした〜! パチパチ〜! ふふ、海が分からないなんて珍しいこともあるんだね! いや〜〜私の忍足スキルもだいぶ上達したってことかな〜〜。」


 いつも通りの答え合わせが済み何故か自分自身に感心する声が聞こえる中、一つだけいつもと違うことが起こっていた。そう、目の前にある暗闇が一向に晴れないのだ。正解発表が終わったのに、だ。何故だ? と思っているとアイが話しかけてくる。


「海、今『今日はなんで手が外れないんだ?』とか思ってるでしょ?」


 と何故かドヤ感を出しているような声が聞こえてくる。もちろんその通りなので無言で頷く。


「やっぱり! 合ってた! まあそりゃあそうだよね。いつもなら答え合わせの後にすぐに外すし。それにその後いつも決まって、「何のよう?」って仏頂面で面倒くさそうに聞いてくるし。私だって海がこの流れあんまり好んでないのくらい分かってるんだから!」


 それなら何で毎回やってくるんだよ……。と内心ツッコむ中アイの話は進む。


「それでまあ、今日はどうして手を外さないかと言いますと……実はお話がありまして。その、それをしっかり聞いて欲しい為というか。目の前で話すのは恥ずかしいからというか、逃さない為というかなんというか……と、とにかく! 海に聞いて欲しいことがあるからこうしてるの! わ、分かった?」


 未だに晴れない暗闇の理由にしては弱い気がするがまあ何か不味いことがあるわけでもないので俺は黙って頷く。


「よし、よろしい。それじゃあ話すんだけど、私達ってさ、幼馴染じゃん? だからさ、、ん? なんでそんな所から話すのかって?? ま、まあとにかく聞いて! たまには昔話もいいでしょ? ね? そう、それでその、家も隣だからさ、いつも一緒に学校に行って、帰ってたよね。遊ぶ時もお互いの家に行ってさ、いつも二人で同じゲームしたり、同じ漫画読んだりしてさ、私達ホントに仲良かったよね。最高に幼馴染してたと思う。」


「それでさ、そんな私達にも初めて出会った日があるんだよね。海は覚えてる? 私と初めて出会った日。この街に引っ越してきた日のこと。私と海が友達になった日のこと。」ーー

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