第4話 気付いた私。ずっと好きだった私。


「海、これから話す内容をしっかりと聞いて欲しい。きっと凄くビックリするかもしれないけど。最後まで聞いていて欲しい。」


「あのさ、私、海のことが好き。ずっと前から好き。小さい頃から、出会った頃からずっとずっと好き。この言葉で表せないくらい好き。そのね、友達としてじゃなくて、好きな人として好きなんだ。今更なんて思うかもしないけど、好きだって、ようやく気付いた。」


「それに、今までこの気持ちが恋だなんて知らなかった。」


「ずっと側に居て欲しくて、ずっと遊んでいたくて、笑う顔が見たくて、お話がしたくて。ただただそんな日常を二人で追いたくて。」


「そんな気持ちを恋って呼ぶなんて知らなかった。私バカだからさ、ずっとこれが友達だと思ってた。だって海がずっとずっと側に居たから。それが普通だったから。」


「でも海と離れて、その後また話すようになった時に思ったんだ。やっぱり海と話すのって心地良くて楽しいなって。それでいて、好きだなって。そう思った時、初めてこの胸がドキドキすることに気づいたんだ。それでその時にやっと気づいた。私は海の事が好きなんだって。」


「そう思ったらね、今までの気持ちがスッと全部繋がった。一本の線みたいに。」


「だから、あの時、あんなに海を追いかけてたんだろうなって。この気持ちを知らなかったけど。でも、なぜか海だけとずっと居たくて、いつも一緒にいて欲しくて、だから追いかけてた。あんなに必死になってたのはきっと、この気持ちがあったからなんだろうなって。」


「私は本当に頭悪いし、ドジだし、自分の気持ちにすら気づかないし、おかしな人間だって自分でもよく思うし、人からもよく思われるけど、でもこの気持ちだけは本物だから。やっと気づけた私の気持ちだから。だからはっきり言えるの。海が好きだって。」


「こんなにも一緒にいて、高校生になってやっと気付いた。これが人を好きになることなんだって。本当に遅過ぎるし、もっと早くこの気持ちに気づけてたら、もっと早く海に伝えられていたら、今みたいな関係になることもなかったんじゃないかって。あの頃のままでいられたんじゃないかってもちろん思う。でもこの気持ちに気づけたのは海が私から離れてくれた時間があったから、そしてその後、また一緒に居てくれる時間が出来たからだったから。」


「だから、あの頃を悔やんだりしない。でも、だからこそ、私達の関係をはっきりさせたいの。海のおかげで気づけたから。いつだって私を想ってくれて居たのは海だったから。」


「私の人生に海が居なかった時間なんてほとんどなくて、いつも一緒で、どんな時も居て、だけど。ここから先はきっと今のままじゃダメだから。この気持ちを抱えた私が海とこの先も居るのはきっと良くないから。きっとどこからか崩れていってしまうから。」


「だから、私も、誠心誠意海に伝える。」


「海が好き。どうしようもなく好き。今までと同じように隣に、側に居て欲しい。私海じゃなきゃ嫌なんだ。

 いつだって話してたいし、前みたいにゲームだってしたい。今まで出来なかったデートもしてみたい。色んな景色が観たい。ただ海と笑ってたい。時には喧嘩もするかもしれないけど、それでも海と一緒に居たい。時々私がドジした時も海に怒られたいし、海が不器用なオムライス作った時には笑いたい。そんな日常を海とこれからは過ごしたい。これからも迷惑だってたくさんかけるかもしれないけど、それでも海と居たい。一緒に居たい。わがままばっかりかもしれないけど。一緒に居たい。だって好きだから。大好きだから。」


「だから、もしダメって、もしも……。」


「……もしも、言われたら嫌だけど、その時は私、海の前から居なくなるから。もうこれ以上迷惑はかけたくないから。だから、今から言うことを聞いて欲しい。」


「あのさ、海。もし、この関係を続けてくれるなら、その後もその先も含めて、私の気持ちに応えてくれるなら、今海の目を隠してるこの腕を、この手を、外して欲しい。」


「それを選んでくれた時はきっと喜んでその場で泣いちゃうかもしれないけど、それも前みたいに慰めて欲しい。」


「それで、もし、もしも、ダメなら声に出して無理だって、伝えて欲しい。そして、その時は手が外れても、何があってもそのまま目を瞑っていて欲しい。」


「その時は私、その間に海の目の前からいなくなるから。そしてこれからの海の毎日からも消えるから。」


「もちろん、こっちを選ばれたらきっと泣いちゃうだろうし、ダメになるかもしれない。それに、海の居ない日常はきっと辛いし退屈だと思う。だけど、それでも良いから。海の今の、本当の気持ちで選んで欲しい。」


「きっと急だって、海は今思ってるかもしれない。だけど、もうこの気持ちに私は嘘をつけないから。この感情を隠したまま海と今の日常を続けるには好きが溢れ過ぎて辛いから。だから今、選んで欲しい。もっと海と一緒に居たいって、素直に言いたい気持ちを私はもう抑えられないから。このわがままなお願いを聞いて欲しい。」


「だから海、もう一度言うね。きっとこれで最後。」


「私、海が好き。大好き。きっとこの先、海以上の人は現れないって思うぐらい好き。いつもカッコイイのに時々不器用な所も好き。それでいて、いつも一生懸命なところが好き。そして、いつも私を見ていてくれて嬉しい。ありがとう。そして、こんな私だけど、ダメな私だけど、私と付き合ってほしいです。」


 そう藍が言い終わると、教室に流れていた時が止まった気がした。そして、張り詰めた空気は俺の鼓動を締め付けた。


 その瞬間俺は藍の腕を外してただ抱きしめていた。

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いつも一緒な幼馴染の様子が今日はおかしい 来栖みら @kurusumira0

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