第4話 ブラック企業
次は白川さん。中三だ。この子はこの塾で一番頭がいい。
「今日は君の志望校とか、最近のことを聞きたいんだけど、今考えている志望校はある?」
「はい、一応都立のN高校を考えているんですけど、今の理社の成績じゃだめかなって。」
「内申は44だよね?」
「44です。」
「それで君は偏差値70あるから、大丈夫だと思う。3教科と内申で補って、今から理社を仕上げよう。併願校は考えているかな?」
「一応進学校に行きたいんですけど、自分で調べたら偏差値が高い学校がなくて。全部附属になっちゃうんです。どこかいいところありますか?」
「調べておくね。共学と女子校どっちがいい?」
「共学でお願いします。女子校は絶対に行かないです。」
「わかった。じゃあまた明日面談できるかな?同じ時間。」
「はい。ありがとうございます。」
「あと話したいことある?」
「いや、大丈夫です。ありがとうございました。」
この面談が終わったのは授業前ギリギリだ。俺は急いで準備をして、小学生の授業をやった。授業後に白川さんの併願校を調べて、資料を作った。終電で家に帰り、次の日の授業の準備をしていたら、同僚から他の子についてのメールが来た。すぐに返信しながら、俺は他の先生も大変なんだな、と思った。もうすでに二時は過ぎていて、そこからご飯を食べた。そしてまた新制度などの色々な準備をしていたらいつの間にか朝だった。俺はその状態で1日を乗り切れるか不安だったが、今日休んだら生徒にも他の先生にも迷惑がかかると思い、無理をして行った。
中学生の授業中、生徒に
「先生、疲れてますか?」
と不安そうな言われたが、心配させないために、
「いや、ごめん、なんでもないよ。」
と言ってしまった。
その日の授業を終えて、俺は職員室に戻ると、また今日の振り返りや次の日の準備をした。帰ろうと思って立ち上がったその時だった。俺は過労からか心臓が締め付けられるような気分になり、その場に倒れ込んでしまった。
塾をつくって好き勝手やってみたら。 @yuki_yamanoue
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