巨人たちの仲良し計画
海沈生物
第1話
人間という生き物は呼吸をするものらしい。この呼吸というものは、酸素と二酸化炭素の交換を行うためのものであり、それをしなければ人間というものはいとも簡単に
我々の長であるオーディ様は、人間と巨人族の間で、価値観において大きな「
そのことについて、オーディ様は巨人族の中でも「
ヘニ様とその相棒兼オーディ様の叔父であるミル様に相談なされた。一族の中でも群を抜いて賢いヘニ様の一方、ミル様は適当な性格をしていた。例えば「人間なんて片手で潰せるんだから所詮は
そんなお二人(実質ヘニ様に対してだが)に対して、オーディ様が「人間と仲良くするため、その知識を貸して欲しい」と真面目な表情で助言を土下座で頼み込まれた。これには賢人たるヘニ様だけではなく、いつも適当なミル様までもが珍しく真面目な顔をして「いいぜ」と了承していただいた。
まるで呆然とした顔のように見えるヘニ様と真面目な顔をしたミル様は、オーディ様から詳しい事情を聞いた。その後、何やら真剣に二人で話し合うと、しばらくしてヘニ様……ではなく、ミル様が前に出てきた。きっと、いつも賢いヘニ様ばかりが前に出て話すので、たまにはミル様にも花を持たせてあげようと思ったのだろう。なんてお優しい方なのだろう、ヘニ様は。
我が感動していると、ミル様はコホンと咳をついた。
「……正直、暴力による支配で十分だと思うよ? あんな愚かで学習しない人間と対話なんて必要がないと俺は思うんだけど。それでも
「まぁ俺はわざわざそんな呼吸なんて面倒なことをせずに、普通に人間と話すんだけどねぇー」という照れ隠しなのかよく分からない謎の
こうも人間との関係性について
さて、そんな適当なミル様からの助言をお聞きになったオーディ様は、その助言をそのまま
ここまでが長い
早速我々が地球に降り立つと、周囲の建物が全部
そう思って人間を探していると、ふと足元がちくりと痛んだ。一体何に刺されたのかと思って屈んでみると、そこには
「今お前が投げ捨てたやつ、人間だったかも……?」
「えっ。人間ってヘニ様から聞いた話だと、10mはあるって話じゃなかったの? あんな
「
そう言われてみればそう、かもしれない。ミル様はいつだって無責任で残酷な奴だ。あんな奴より、もっと……それこそミル様の仲良しであるヘニ様の方が信頼のおける人物であるように思う。しかし、そうなると今さっき我々に何の理由もなしに「攻撃」してきたあの生き物が人間ということなってしまう。そうであるのなら、ミル様がよく言っていた「深い目的もなしに人間は他者と争う」という話が真実になってしまう気がする。……まぁ今はそんな目的と関係ないことは、深く考えないでおいた。
それよりも、人間と早くコンタクトを取らなければならない。もう一度足元や倒壊した建物の中に人間がいないか探してみると、今度は建物の中に一人の人間が倒れていた。今度の人間はこちらを攻撃する意思がないらしく、しかもあの呼吸というやつを激しくしている。これは呼吸について教えてもらうことを期待できるのではないか。相方のムギに潰さないようにしてその人間を持ち上げてもらうと、さっきより呼吸の
我はその人間と向かい合うと、コホンと咳をつく。
「は、はろー……じゃなかった。ここだったら、こんにちは、ですよね?」
「こ、こんにちは!? 貴方たち、ここら一帯の都市を壊滅しておいて、一体どの面で挨拶なんて」
「カイメツ……? ツラ……? よく分からないけど、ありがとうございます! それでなんですが、今されている呼吸ってどうやっているんですか?」
「な、なんで私の仲良かった同僚や職場の彼氏を殺した……一瞬で踏み潰したアンタたちなんかに、そんなことを
「ムショウ……あぁ、そうですよね。人間という生き物は
我が精一杯笑顔を浮かべてみると、突然その人間は「ガハッ」と口から血を流して、さっきまでのようにギャンギャン叫ばなくなった。それどころか、言葉も呼吸もしなくなった。どうしたものかとムギと一緒に小首を傾げていたが、一向に反応がない。お腹を突いてみても、ぷしゅうと中にあった空気と大量の血が出てくるだけだ。これはもう、仕方ない。
期待して送り出してくれたオーディ様には非常に申し訳ないが、今日の所は
巨人たちの仲良し計画 海沈生物 @sweetmaron1
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