第6話 爆乳お嬢様と後輩
俺がいつも通りお屋敷の玄関で学校帰りのお嬢様を出迎えていたところ、
「先輩!」
懐かしい声が横から聞こえた。お嬢様も俺も声の方向へと振り返る。そこにいたのはとても小柄で
「もしかしてお前、後輩かっ⁉」
「よかった、やっぱり先輩でした……!」
女の子が俺に駆け寄ってくる。
「使用人、こちらの方はいったいどなたですの?」
お嬢様が首を傾げる。知らなくても当然だ。
「失礼しました、お嬢様。こちらはその……私の前の会社の後輩でして」
「あら、まあ」
後輩はペコリと、お嬢様へ頭を下げる。
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私、勤め先ではこちらの先輩の部下として働いていた者です」
「それはご丁寧にどうも。ところでその後輩さんがどうしてこの屋敷に?」
「さきほど街でたまたま先輩を見掛けてその後を
「なるほどなるほど?」
「どこからか先輩の様子が覗けないかと、敷地の周りをぐるっと歩いてみたら
「ああ、それでこの使用人が屋敷から出てくるのを玄関の近くで待っていた、ということですわね?」
「そういうことです」
お嬢様は後輩の説明に納得げに頷いた。
……いやいやいや、『そういうことです』じゃないよ。つまりそれって『ストーキング&不法侵入』ってことだろ? お嬢様はサラッと流したけど、結構すごいことしてるぞ、後輩。
「えっとそれで後輩、お前はいったい何をしにここに来たんだ?」
「何って、決まってるじゃないですか!」
後輩は勢いよく俺の手を取る。
「先輩、会社に戻りましょう!」
「えっ?」
「私、ずっと先輩のことを探していたんですよ!」
後輩は目の端に涙を浮かべていた。
「私が出張から帰ってきたら先輩の席が無くなっていて……私すごくショックだったんですから!」
「……そっか、それはスマン。急に居なくなったりして」
「先輩が謝ることじゃありません。だって何も悪いことしてないじゃないですか。だから、私といっしょに先輩を
後輩は鼻息も荒く俺の手をグイグイ引っ張った。
「ちょ、ちょっと待てよ後輩。俺はもう、このお屋敷で使用人として働いていてだな……」
「使用人? あの営業部のエースだった先輩が?」
後輩はふんっと鼻を鳴らす。
「先輩は営業職としてとても輝いていたじゃないですか。使用人なんて仕事、先輩には似合いませんよ!」
後輩が分かったような口を利く。
……ずいぶんと勝手な決めつけじゃないか。ちょっとムッとして言い返そうとすると、
「ちょっとお待ちなさいな、後輩さん」
お嬢様が腰に手を当てて後輩を見る。
「使用人『なんて』とは、ずいぶんな言いぐさではありませんの」
「……た、確かに使った言葉は悪かったかもしれません。それはすみません。でも、でも先輩は!」
「いえ、けっこう」
お嬢様が手のひらを突き付けて、後輩の言葉をさえぎった。
「ここでお互いがどれだけ言葉を重ねたところで、建設的な話し合いにはならないでしょう」
「じゃあ、どうすれば……」
「簡単ですわ。後輩さんに見ていっていただければいいのです」
「えっ……」
お嬢様がパチンと指を弾くと、お屋敷の玄関の扉が開く。
「ようこそ後輩さん。貴女の元先輩のここでの働きぶりを存分に目にしてくださいな」
* * *
……さて。ゲストがいるものの、お嬢様が帰宅したわけだし、俺の使用人としての仕事の時間が幕を開けた。
屋敷に入り階段前に差し掛かったので、俺は今日も今日とてお嬢様の爆乳ガッツリ掴んで持ち上げた。すると、
「ちょっ⁉ なにやってるんですか先輩ッ!!!」
「きゃっ⁉」
「うおっ⁉」
突然、後輩が隣で大声で叫んだので、お嬢様も俺もビックリしてしまう。
「ど、どうしたんだよ後輩。急にそんなデカい声を出して……」
「『どうしたんだ』はこっちのセリフです先輩! な、何を突然、女の子のおっぱいを掴んでるんですかっ⁉」
「は?」
首を傾げる俺の手首を後輩が掴む。
「女子高生のおっぱいを触るなんて……ハレンチすぎます!」
「あ、ああ! そういうことか」
どうやら後輩はとんだ思い違いをしているらしい。
「大丈夫だよ後輩、これはただの『乳持ち』だからさ」
「はぁ???」
「別におっぱいを触ってるわけじゃない」
「いや、ガッツリ触ってるじゃないですか! ホラ! これ!」
後輩がお嬢様の乳持ちをしている俺の手を人差し指で突き刺してくる。シンプルに痛い。
「後輩さん? もしかして貴女、『乳持ち業務』をご存じではありませんの?」
「チ、チチモチ業務???」
「かくかくしかじか、ですわ」
お嬢様が便利な言葉を使用して後輩へ『乳持ち係』が何たるかを教えてくれる。ひと通りの説明が終わったあと後輩は、
「う、うそ……そんなハレンチな業務があっていいワケ……」
「厚労省のHPの産業分類表にもちゃんと記載がありますわ」
「ほ、ホントだ。なんてバカみたいな……!」
戸惑いつつも、いちおうは納得してくれた。
「せ、先輩はおっぱいが触りたくてこの仕事を……?」
「いや、俺は『才能がある』ってお嬢様にスカウトされてな」
「才能??? おっぱいを触ることの???」
「おっぱいじゃない。乳だ」
「同じじゃないですかっ!」
後輩の顔は真っ赤だ。どうやら一般の人にはどうしても『おっぱい』と『職業として扱う乳』の境界線があいまいになってしまうらしい。
「まあとにかく、仕事ぶりを見ていてくれよ。それできっと俺の仕事にかける情熱を理解してもらえると思うからさ」
「は、はぁ。まあ押しかけたのは私ですし……最後まで付き合いますけど」
というわけで、俺は普段の業務の数々を見せていくことにした。
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