銀河鉄道の夏休み

柴田 恭太朗

555文字

 「銀河鉄道の夜」に感動したボクは、小学校最後の夏休みにカムパネルラみたいな友人がほしくなった。そこで水泳が苦手な林君を家に誘った。


「変な地球儀があるね~」

 林君はボクの部屋に入ると机の上を指さした。

「それ天球儀っていうんだ。君にはぜひ星座の名前を覚えてほしくてさ。これ知ってる?」

「馬座?」

「残念、ケンタウルス座」


 それからボクは一時間星座の講義をした。そろそろ仕上がったなと思ったので、ボクは林君を近所の川へ連れて行って、速い流れの中に突き落とした。


 自宅で夜になるのを待っていると、ずぶぬれになった林君が「ひどいよ~」と泣きながら戻ってきた。


 ので、もう一度林君を川へ突き落とした。

 林君はまた戻ってきた。今度はずぶぬれの少年を連れている。名をたずねると少年は「ザネリ」と答えた。


 これはおもしろいとボクは林君をなんどもなんども川へ突き落とした。そのたびに林君をおぼれた人をひとりづつ連れ帰ってくる。なにやらタイタニック号の乗客らしい。もうボクの部屋はずぶぬれの人でいっぱいだ。部屋に入りきれない人は庭へ出てもらった。庭で弦楽カルテットが演奏をはじめたころ、林君が連れ帰る人がいなくなった。タイタニック号の乗客が全員助かったらしい。


 ボクはすばらしい友人をもって誇らしい気分になった。

 とてもいい小学校最後の夏休みだった。

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銀河鉄道の夏休み 柴田 恭太朗 @sofia_2020

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