第4話

 彼の眼鏡です。

 形見に、頂きました。

 私は、あのトンネル事故の唯一の生き残り。

 トンネルが、突然崩れ。

 大きな岩が、猛スピードの電車と衝突。

 巨人に、投げつけられたように。

 乗客は、叩きつけられ。

 私を除く。

 全員。

 死亡。


 私は、彼に助けられました。


 あの日。

 帰りの電車も偶然同じ。

 今日は、ラッキーな日と思っていたのに。

 あの突然の事故。


 あの時。

 彼は。

 クルマが自ら壊れて。

 ドライバーを助けるように。

 彼の身体を。

 壊しながら。

 クッションになってくれ。

 私は、ひとりだけ。

 助かりました。


 毎朝、通勤途中、見かける。

 

 人の良さそうな彼。

 私のタイプだった彼。

 即死だったとの事。


 私の事。

 どう思ってくれていたの?

 助けてくれたのだから。

 少しは、思っていてくれたかな?

 わたしの涙。

 レンズの傷に落ち。

 彼の眼鏡を濡らします。


 感謝の気持ち。

 と。


 せめて。

 あの人が。

 乗客の皆さんが。

 天国へと。

 

 眼鏡を胸に。


 毎日。

 神様に祈っている。

 泣き虫の…私。



 でした。

         おわり

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眼鏡をどうぞ @ramia294

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