2.魅せられた男
俺はもうダメかもしれない。
頭ではどうしてもわかっている。
それでも≪覚醒剤≫をキめないと仕事も日常生活もできなくなってしまった。
こうなってからはよく彼女を殴るようになってしまった。
今日は彼女にもうやめてほしいと言われた。
やっぱり頭がおかしくなっているのだろう。
なぜ俺と違って彼女は覚醒剤中毒に苦しんでいないのかということに無性に腹が立ってまた殴ってしまった。
今日は殴ることをやめられなかった。
仕事での大きな責任につぶされそうになっていたころ友達に≪覚醒剤≫を勧められたときどうして断れなかったんだろう。
どうして≪覚醒剤≫やめられないんだろう。
どうしてあんなにもこんなにも大事に想っている彼女を殴ってしまうんだろう。
どうしてこうした考えから逃れるためにまた≪覚醒剤≫をしてしまうのだろう。
ずっとそんなことを考えてそのうっぷんを晴らすべく彼女を殴り続けた。
彼女を殴っていたら当たり所が悪かったようだ。
眼をつぶしてしまったようだ。
汚い音と共に血ではない体液が飛び散った。
次の瞬間 その眼から赤い花が咲いた。
飛び散った体液の比喩とかではなく本当花が咲いた。
あっけにとられていたら彼女は様子を確かめるべく洗面台に向かっていった。
自分が無視されたように感じて後ろから殴りつけ倒れた彼女をさらに足蹴にしまくってしまった。
彼女は意識を失ってしまったようだが俺はそんなことよりも≪覚醒剤≫をキめることしか考えられなくなっていた。
≪覚醒剤≫をあぶるべく火を焚いた。
ちょうどその時彼女のつぶれた眼から舞った花弁が火にあぶられた。
その匂いを嗅いだ瞬間脳みそから覚醒剤は消えた。
あんなにハマっていた覚醒剤がどうでもよくなった。
今キめてもラムネの清涼感程度にしか感じられないような気がする。
それほどまでにこの≪花弁≫をあぶったものは強烈だった。
一瞬でこっちにハマってしまった。
それから俺は一晩中かけて彼女の眼からとれた≪花弁≫を全部味わった。
もちろん≪花弁≫無しに生きられない体になった。
覚醒剤はやめられたけども。
呪眼 一二三四五郎 @fofd
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。呪眼の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます