第5話 ラグナロク編 終焉と真実
観戦者たちの中には自分たちの知らなかった闘いが有ったことに落胆する者や、『デスクィーン』にブーイングする者がいたりとザワ着いていた。その中、冷静に観戦していた何人かのプレイヤーから声が上がった。
[あと八名のプレイヤーがまだ現れていないよね?]
[そうだ!ボクの友人でオリンポス編三位のナイジェリア人のアニメとボクの師匠で聖地エルサレム編二位の台湾人の飲茶さんも居ない!]
[フィールドの何処で闘ってるのかなぁ?]
観戦者たちがフィールド内を隈無く探していると、
[フィールド南西に唯一草木が茂る豊かな場所が見えるか?
その中央に水が湧き出る不思議な泉が有るからその泉の中を観戦するといい。残りのプレイヤーたちが闘っているはずだ]
観戦者の問いに答えたのは『デスクィーン』だった。
[貴方は闘いに参加しないのですか?]
先程まで敵として闘っていたトッポギが『デスクィーン』に語り掛けた。すると『デスクィーン』のメインキャラである鬼姫鈴鹿御前が南西を指さし、[勝った者と闘えばいいだけだ]と残酷であるが最もな言葉が『デスクィーン』から返ってきた。
[対抗戦の通知が届いた時に制作サイドからこう記載されていただろう…日頃の君を讃え最高の舞台を用意した。君の栄光もここまでかも知れない。流石の君でも簡単には勝てないだろう…と。あれは参加プレイヤーたちを焚き付けて全員・もしくは団体で攻撃させようとした制作サイドからの宣戦布告だった]
[宣戦布告…、確かに僕たちは貴方と闘えることに興奮していましたが、流石に制作サイドにそんな思惑が有るなんて…]
トッポギと『デスクィーン』が静かに語り合っている中、南西の泉の中の闘いを観戦している者たちのボルテージが上がった。余りの熱気に倒れ込んだキャラたちの姿も有った。どうやら凄まじい激戦が繰り広げられているに違いない。
[貴方ならこの闘い誰が勝つと思いますか?各フィールド一位の『デスクィーン』なら予想がつきませんか?」
[…誰が勝ってもおかしくないが、【全展望監視】を使って観る限り三対五に別れた…聖地エルサレム編二位の飲茶とオリンポス編三位のアニメと同編二位のマーライオンの三人だと思う]
『デスクィーン』の以外の返答にトッポギは言葉に詰まった。
[…何故、五人のプレイヤーたちでは無いのですか?]
[人数など関係無い。それはお前が一番良く解っているはず]
[そうですね。僕たちは一対四で貴方に敗けましたから]
[各キャラの武器や技も勝利の決め手だが、団体となると連携プレイも大切になってくる。そう言う意味では三人は上手くお互いのキャラを使っていると思う。まぁ、これは彼からの教示だが…]
[…私?彼?…]
トッポギが何か気付いて『デスクィーン』に声を掛けようとした瞬間、突然泉の水が竜巻の様に空中に舞い上がった。そして『デスクィーン』の言った三人のメインキャラとサブたちが姿を現した。
「待たせたぜ!『デスクィーン』」
「いや、見事な熱戦を見せて貰ったよ」
「じゃ、最終決戦と行きますか!」
それぞれのメインキャラ熾天使メタトロン・全能神ゼウス・冥界の番犬ケロベロスが『デスクィーン』の前に立ちはだかった。しかし、『デスクィーン』のキャラたちは一歩も動こうとせず、暗雲が広がる空を見上げている。
観戦者たちや他のプレイヤーたちがその姿を訝しげに見つめる中、突然空から激しく燃え上がる隕石が次々に落下して来た。
[一体どうなってるんだ?]と皆が騒いでいると「コレがラグナロク編の最後で全ては最初から決められいたこと。この隕石が振る中で最後まで生き抜いた者が勝者だ」
『デスクィーン』の言葉に世界中が絶句した。
「制作サイドは最初から私をこのフィールドで敗北させるつもりでいた。でも、私にとって勝敗などどうでもいいことだ」
『デスクィーン』の発言に辺りは静まり返った。
[では、何故貴方はこの対抗戦…『無双天地』をプレイしているのですか?]
穏やかな口調で話すトッポギに「私はただ、恋人が遺したこの『無双天地』をアイツらに奪われたく無かっただけ」と答え、隕石が降り注ぐ中に消えて行った。何ともスッキリしない『デスクィーン』の幕引きだった。しかし、それもまた『デスクィーン』の思惑の一つだった。
「これで世界中のプレイヤーたちが知ることになったわ。この『無双天地』がお前たちが造ったゲームでは無いことに」
『デスクィーン』は空に向かって声を上げ笑った。
ーーこうしてラグナロク編は幕を閉じた。
勝者は…あの隕石が落ちた跡では誰も居ないと思われたが、一人のプレイヤーのメインキャラだけが残って居た。それは、マーライオンのメインキャラ全能神ゼウスだった。
ゼウスの頭上には八咫鏡が乗せられていて、周りの倒れたキャラたちは生命が吸い取られていたことから、『デスクィーン』がマーライオンを助けたことが分かった…。
バトルゲーム〜デスクィーン降臨 kajin @sagakajin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます