大樹横断
あまりにもひどい火傷の痕か、エルムは近くにあった服屋で保管してあった真空パックを破り、中にあった服を着た。黒いゴム製の服に、紋章が書かれた仮面をかぶった。紋章の意味はわからない。あとで、ノクターンに聞こう。
外へ出ると、ノクターンは制服に着替えていた。古き時代の服装だ。青色のネクタイに白いTシャツ、その上から白衣を着こむ。銀色と緑色のたてがみは、彼女のチャームポイントなのか、そのままにしておくようだ。
「おっ! カッコイイ」
「…お前、センスねぇーな」
「バカ、そこは褒めろ」
数日間が経った。あれから、この場所を拠点に食料や衣類、道具を手に入れた。肝心の医療系のものは見つからず、代わりに医療書を見つけた。酷い火傷を負った際の応急処置のことも書かれていたため、なんとか傷を抑え、火傷を隠せるよう服を調達してもらった。
エルムの火傷は意外と、体が丈夫なのか脳筋なのか、神経が壊れているのか痛がる様子もない。しだいに火傷も傷も消えていくあたり、どういう体をしているのかと研究者としての意見として調べたいものだとニヤニヤと笑みを浮かべてしまう。
「あ……」
見られてしまったか。
「お前、気持ち悪いって言われないか」
「お前こそ、気持ち悪い!!」
そんなこんな日常が始まるのであった。
大樹横断~タイジュオウダン~ 黒白 黎 @KurosihiroRei
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