第四話 『終死「ところでさ、異世界もので良く『私? 見ての通り盗賊さ!』っていう場面あるけど、あれってよくよく考えると変だよね?」 弟「ねぇちゃん、良いから早く宿題終わらせてよ……」』
わたし、
今回のお話は『第二話』の続き、いっこも手をつけていない夏休みの宿題を、親友の
「え? そうなの?」
「どうしたの? 誠」
「いや、対したことじゃ無いんだけど……ほら、前回の話がなんと言うか……時間軸に対して『第二話』よりも前になってたでしょ?」
「ああ、あの麦茶の話?」
「そう、それ。あれってさ、どこにでも組み込めるような話だったから、それだったら前回の話は普通に『第二話』の続きになるように組んだ方が、流れ的にも分かりやすかったんじゃないかな……って」
「大丈夫よぉ〜♪ 誠。このお話、あんまり読まれてないし、一話完結型だし」
「その言い方は、読者を
「それにね……誠」
「なに?」
「とうの作者が思いつきで書くもんだから、わたしたちにはどうしようも無いのよ」
「それは……なんともならな……いの?」
「と、いうわけで『終死ちゃん 第四話』、始まり、はじまり~♪」
「こんなはじまり方、見たことない……」
……おわし……おわし……起きて……
「ここは死の世界……? あなたは神様……ですか? チート能力下さい」
「ここはおわしの部屋で、私は喜多原です! だから、チート能力はあげられません!! いつまでもふざけてないで起きて!!」
「だって〜毎日暑いし〜。やる気がでないのよ〜」
「ねぇちゃん、いいかげんにしなよ!! 夏休み、あと二日しかないってのに、半分も終わってないじゃないか!! どうするの!?」
「あ、その点については安心して。わたしあれだから。尻に火がつけばやる気がでるタイプだから。けつに火がついたら本気出す」
「ねぇちゃんの場合、尻じゃなくて全身だろ?」
「お? うまいこと言うねぇ、誠」
「なにもうまくないよ!」
「あ、そうだ」
わたしは、あぐらをかきながら、なにか思い立ったように起き上がります。
「なあに? おわし。やっと、宿題やる気になってくれたの?」
「あのさ、異世界転生系の話でさ」
「またその話かよ。ねぇちゃん……」
「だって、急に気になり出したんだんもん」
「はあ……しょうがないわね、おわしは。それで? 異世界転生ものがどうしたの?」
「うん、異世界転生系の話でさ、良く主人公寄りのキャラクターが自己紹介するシーンがあるじゃない? 「私は、見ての通り盗賊だよ!」みたいな」
「うん」
「それが、なに?」
「あれってさ、よくよく考えると変だと思わない?」
「はあ? どういう意味さ?」
「ま、誠君……ちょっと落ち着いて……」
「だって、そうじゃない。目の前にいるのは、その世界で初めて見る相手なのよ? その世界で。初めて。なのに「私、盗賊ござい」って言われて率直に信じられる?」
「それは、あれだろ。ファンタジーものにも
「あ、なるほど……」
人差し指を下唇にあて、天井を見上げながら納得する喜多原さん。だ〜け〜ど〜♪ わたしは性格が悪いので、誠の説明にいちゃもんをつけます。それが、姉弟というもの。
「ええぇぇ〜〜?? でもさぁ〜?
「そりゃ、自分のこと盗賊なんて言われたら、警戒するに決まってんじゃん」
「そうよ、おわし。実際の世界で、自分のこと盗賊なんて言う人、いるわけ無いじゃない」
「いや、そりゃそうなんだけどさ。でも、例えば、例えばよ? 目の前にシスター姿の女性が現れたとするでしょ? でさ、突然「ワ・ター・シ、しすたーデース。お金寄付してちょ」って言われたら、あなたは素直に信じられますか? ってことよ」
「なんか論点がズレてる気がするけど……シスターの格好してるんだから、シスターなんだろ。というか、なんで途中から言葉がりゅうちょうになってんの?」
「喜多原さんは、どう思う?」
「へぇっっ?! 私……は、一概には信じられない……かな……? 詐欺師かもしれないし……」
喜多原さんの言葉に、わたしは鬼の首を取ったように両手を広げ、おちょくるように誠に話しかけます。
「ほら、みなさい。まこと〜♪ 初めてあった相手の外見と言動をそのまま鵜呑みにするのは、危ないことなんでチュよ〜♪」
「いや……それは……」
「おわし! 言い過ぎよ!」
「で、でも、それはあくまでも例え話だろ!?」
「いや〜、どうかな~? 異世界の方がもっと、そういう人たちがいるかもよ??」
「た……確かに……おわしの言う通りかも……」
「ほら〜♪ 喜多原さんもそう言ってるでしょ〜?」
まさに、ぐうの音もでないといった感じの誠。それでも、一生懸命に言葉を返してきます。
「じ、じゃあ、ねぇちゃんはあれなの!? 異世界で、もし弓と矢を持った人間にあったとしてさ、その人が弓師だとは思ったりしないの!?」
「あ~、もしかしたら、新手の
「なんだよ! なんでそうなるんだよ!!」
「お、おわし……あんまり、誠君をいじめないで……」
喜多原さんにそう注意され、身体をゆすられるも、誠がやっきになるのが可愛くて、つい、からかい続けてしまいます。姉弟なら分かりますよね? この気持ち。え? 分からない? そうですか。
「だいたいさ! 弓と矢だけで、どうやってたまを装填するのさ!?」
「それは〜♪ こうやって〜♪ たまを装填して〜♪」
わたしは弓を引く仕草で答えます。じだんだを踏む誠がとても……良い。
「なんだよ、それ! 普通の弓師と変わらないじゃんか!!」
「いやいや〜♪ 矢の先端に、ちゃあんと薬きょうがくっついててね〜♪」
「そんなの屁理屈だよ!!」
「おわし、もう、いい加減したら……?」
懸命に止めに入る喜多原さん。笑い疲れたわたしは、ようやくこの話にオチをつけようと、正座しながら目前の机に両肘をつき(あったんですよ。机が)、重々しい雰囲気を
「でもね……知ってる? ふたりとも。こちらの海には、現実世界の住人も、異世界の住人も、満場一致で認める、超一流の『
「……え?」
「……え?」
息を飲む誠と喜多原さん。それを確認したわたしは、机に伏せ、真っ白のまま開きっぱなしのノートに、あるアニメのキャラクターを書き始めるのです。
「ねぇちゃん……?」
「おわし……? なにやってるの……」
そして、再び顔を上げると、あるキャラクターに瓜二つな絵をふたりに見せて、こう言ってやりました。
「じゃ~ん!!」
次の瞬間、喜多原さんが壊れます。
「きゅあー!! これ、今絶賛放送中のあのキャラクターじゃない!? おわし、この絵、もらって良い?!」
「どーぞ♪どーぞ♪」
「……で? ねぇちゃん。この絵と『満場一致の超一流の
「あら、まだわからない? まこと〜?」
「な、なにがさ……」
「今みたいに、本物に似せた絵の事をなんて言う?」
「が、贋作……?」
「そのとおり! つまり、『満場一致の超一流の
「お……おわし……はぁ……」
うまいこと言ってやった(はずの)わたし。その隣でため息をつく喜多原さん。そして誠は目の前で、敷布団と掛け布団をそれぞれふたつ折りにし、両手でよろしい感じにならします。
「ねぇちゃん。ちょっと、こっちきて」
「はいはい」
そして……
「とあー」
「終死!!」
終死ちゃん ネオ・ブリザード @Neo-blizzard
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