第三話 『【真夏の怪異】 恐怖の麦茶』


 わたしの名前は、『大和里おわり しのぶ』……中学校三年生の15歳……。まわりのみんなからは、終死おわしって呼ばれているの……。今回みなさんにするお話は、はらさんと9歳の弟、誠を巻き込んで勉強会を開いたときよりも少し前のお話です……。



「おわし〜♪ おわし〜♪ おわおわし〜」



 その日はとても暑くて……まぁ、毎日暑いんですけど。えっと、つまりですね。あまりの暑さに母が作り置きしておいてくれた麦茶を、がぶ飲みしていたのです。



「はぁ〜♪ 毎日30度超えなんて、まじおわって感じ〜♪」



 そんなことを言いながら、何度目かの麦茶を飲もうと冷蔵庫から麦茶の入ったピッチャーを取り出し、左手に持っていたコップに半分まで注いだその時でした……!! 終死なことが起こったのは……!!



「こ……これは……っ!」



 ああ、なんということでしょう! このまま麦茶をコップに注ぎ続けると、ピッチャーの中身が空になってしまいます! これすなわち、わたしが新たに麦茶を作らなくてはならないということ!

 ……なんてことを考えていたら、そこに9歳の弟、まことがやって来ました。



「どうしたの、ねぇちゃん?」

「ああ、誠。ちょっと、これを見てちょうだい」



 そう言いながら誠の方振り向き、麦茶が入ったコップと、ピッチャーを差し出します。



「ん? ……ああ、ピッチャーにひと口分だけ麦茶が残ってるね」

流石さすがは、我が弟、誠。なにも言わなくても、現状を理解できるなんて。およそ9歳とは思えないわ」

「誰でも分かるよ……」

「じゃあ、この先の展開は言わなくても分かるわよね?」

「ピッチャーに残っているひと口分を、全部コップに注いだら、お姉ちゃんが麦茶を作らなくちゃいけなくなる?」

「そう! そうなのよ! そんなことになったら、お姉ちゃん、すごく面倒臭くなると思わない!?」

「知らないよ……」

「と、いうわけで、誠。このひと口分だけ残った麦茶を、あなたに進呈します」



 わたしは、左手に持っていたコップを自分の方へ引き、ひと口分だけ麦茶が入ったピッチャーを誠に向かって、さらにずずい、と差し出します。



「なんでだよ! 全部ねぇちゃんが飲んで、新しいのを作ればいいじゃん!!」

「ええぇぇーー。だってええぇぇーー。新規に作るの面倒くさいしぃぃ〜〜」

「ぼくだってめんどくさいよ!! というかさ、いつもいつも、冷蔵庫の中に麦茶をひと口分だけ残しておくの、やめてくれない!?」

「それはぁ〜♪ お姉ちゃんのぉ〜♪ 愛っていうかあぁ〜?」

「さっき、めんどくさいって言ってたじゃん!! そんなことするから、毎回ぼくが麦茶作らなきゃいけなくなるんだよ!? だいたいさ、たくさん飲んでるのねぇちゃんなんだから、たまにはねぇちゃんが作ってよ!!」

「それがいやだから、ひと口残してるんじゃない」



 そこまで言った時でした。誠は、どこかあきらめたようにため息をつくと、24時間布団が敷きっぱなしにしてあるわたしの部屋の扉を開け、そちらに来るようにわたしを手招きしたのです。



 ……そして。



「とあー」

「終死!!」



 と、いうお話でした♪ はぁと♪



「いいから、麦茶作ってよ!!」





    ――第三話 おしまい!!――




「あ、そうだ誠。作者も、麦茶はひと口残す派だって」

「とあー」

作者ねおぶり「終死!!」

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