ふーん、お嬢様か。金持ってそうだな(最低)
「ごめん、待たせたかな」
我ながらナンパ男のような台詞を吐いているなと思いつつ、俺は教室の外に出ると、扉のそばで待っていた女の子に話しかけた。
ちょっと背が高めで、整った顔をしている。あと胸も大きい。
普通の男子なら呼び出されただけで大喜びしそうな容姿の持ち主だ。
まぁ俺にとってはそんなことはあまり関係ないのだが。俺は女の子を容姿の良さだけで選ぶようなそこらの男子とは違うので、特に気にしたりはしない。
「いえ、大丈夫です。さしてお待ちしていたわけではありませんので」
「そっか、なら良かった」
女の子の言葉に、俺は胸を撫で下ろす。
呼び出した側とはいえ、待たせたことで悪い印象を与えてしまうようなことは避けたいからな。
今後も告白される機会はあるだろうし、変な噂が流れて俺の評価が下がるのはちょっと困る。
「それで君は……」
「
安心したところで話を促そうとしたのだが、桜峰と名乗った女子はそれを遮るように優雅な所作でお辞儀をしてくる。
その際、青みがかった長い髪と豊かな胸元がかすかに揺れた。思った通り、中々に立派なものを持っているようだが、鼻の下を伸ばすようなことはしない。
男子のそういう視線に拒否反応を示す女子は珍しくないからな。第一印象は大事だし、こういった場合は紳士的な対応をするように常に心掛けておくのが、働かずに生きていくために必要なことなのである。
「えと、あー……これは丁寧な挨拶をどうも……」
「いえ、お呼び出しをしたのはこちらですから。どうぞお気遣いなく」
「はぁ……」
とはいえそれはそれとして、出鼻をくじかれた形になったことは確かだ。
思わず頭を下げてしまうのだが、そんな俺を見て気にしたふうでもなく微笑む桜峰。
なんというか、微妙にペースを狂わせられる子だな。自分のペースで物事を進めるの得意な俺としては、ちょっとやりづらいと感じてしまう。
(うーん、育ちは良さそうなんだが……なんつーか、伊集院とは違うタイプのお嬢様って感じだな)
伊集院のテンションが高すぎるから普段意識することはないのだが、本来お嬢様といったらこうだよなぁ。
緑のリボンであることから三年生のようだが、制服もきっちり着こなしているし、どことなく物腰も優雅で柔らかく感じる。
雰囲気もどこかのんびりしており、優しそうな年上のお姉さんという印象だ。
現実であったことはないが、ハルカゼさんのイメージとピタリと一致する。
あの人も、こんな感じなのかもしれないな……。
「……あの、わたしの顔になにか?」
そんなことを考えていると、不思議そうな顔で俺を見てくる桜峰。
「あ、悪い。少し考え事しちゃってたわ。えと、俺は葛原和真っていうんだけど、知ってるよな?」
言った直後、アホなことを聞いたなと、自分でも分かった。
三年生が下級生の教室にわざわざ来て名指しで呼び出したんだから、知っていないはずがないのだ。
案の定というべきか、俺の質問を聞いた桜峰はくすくすと小さく笑い、
「ええ、勿論です。分かっていて呼び出したのですから」
「う、だよな……」
墓穴を掘った気まずさから思わず目を背けてしまう。
「よぅく知ってますよ貴方のことは。彼女の笑顔を曇らせようとしている男なのですからね……」
だからだろう。
桜峰が黒い笑みを浮かべたことに、俺は気付けなかったのは。
【3巻8月25日発売】幼馴染たちが人気アイドルになった~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~ くろねこどらごん @dragon1250
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