狂ったもの 都時彰編26
「お前これで何回目だ!」
「すみませんすみませんすみませんすみません!」
これは最上先輩の台詞ではありません。本上先輩の台詞です。
元生徒会長の目が本気で説教する人間のそれになっている。
対する本上先輩は平身低頭で申し訳ない態度を表に出している。
うん。これが普通なんだろうが、やってるのが本上先輩なあたり新鮮に感じる。
お、芹沢元生徒会長がこちらに視線を向けてくる。
できれば妹さんにも同じくらい視線をよこすように言ってください。
あの人、こっちがじっと見てても恥ずかしさにすぐ視線を逸らすから恋人甲斐がないのです。
「お前の知り合いか?」
「いえ、他人です」
「おーりやーーーー!!」
俺の即答に本上先輩が文字通り襲いかかってきた。
止めなさい、人の目があるところで。誰か勘違いしたらどうするんだ。
こういうプレイは楓さん以外お断りです。
「······おれの認識では楓の友達だと思ったんだが、それをお前は知らなかったと?」
なんてこと、その冷ややかな目は姉弟のDNAだと分かってしまう自分は喜ぶべきなのか!落ち込むべきなのか悩んでしまう。
「まあ、お前の気持ちもわからなくはないから良しとしよう」
やった。やった。やった。やった。
葉っぱ1枚だけは嫌だがお義兄さんのお許しはそれだけの喜びがある。
にしても·····本上先輩どれだけ生徒会長に悪印象抱かれてるんだ?
「ではわたしはこれで」
「待て」
「離して!変態!痴漢!犯されるーーー!!」
「完全な被害妄想を垂れ流すなお前!!」
本上先輩の右手首をしっかと握って離さないお義兄さんはまるで子供が悪いことをしたときの父親のようだった。
というか。うん、本上先輩の脳内がガキなんだ。
そこからガミガミカクカクシカジカ。本上先輩がガチの正座をさせられ。長ーいお説教が始まった。
俺は先にお暇することに。さてさて、帰って岡庭先輩に勉強を教えるとしますか。
「ただいまー」
と、帰ってきたところで返事はない。
あれま、なんとも寂しい限り。
俺、ここの子じゃ·····なかったね。うん、そうだ。こういう時はあの人がいるじゃないか。
「岡庭せんぱーい!いませんか―!」
扉に鍵がかかっている。なんてこと。
俺が入って何の問題があるというのだ。
はい、そうですね。俺のせいでした。
さてて。仕方ないですな。
大人しく自室という名の押入れで勉強しますか。
しかし、思うんだけどこれ。寝るのにはこれでも納得だけど生活がこれはおかしいと思う。
俺は猫型ロボットじゃないぞ。
元々掃除機が入ってたところを取り出して布団を敷いただけだぞ。異議を申し立てる。
と、ポコンというラ○ンがきたことを知らせる音が鳴る。
『あーそびましょ』
俺はケンジくんじゃないですよ、本上先輩。
『押入れの中にゴ○ブリ放ってあーそびましょ』
『それを遊びと捉えるのはあなただけです』
『大丈夫。岡庭先輩には遊びに連れ出していい許可とったから』
『勝手に話を進めないで下さい』
『星ちゃんの家に集合ね』
勝手に書くだけ書いてしまった。
おいおい、今夜の11:00だぞ。何考えてんだあの先輩は。
来年の今頃は受験まっしぐらなのに、大丈夫なのか。特に頭の方。
まあ、あの人の事だし。無視しても問題ないだろう。
俺は、ついスマホを手に取ってしまったその流れでネット検索してしまった。
検索ワードは『かわいい 女子高生 巨乳 裸』
ぽちっとな。
スマホに写る肌色が大部分を締めた芸術画像をしっかり観察しつつ何かを握って擦り出す。
自分の意思で行動してるのではありません。気づいたらそうしてたんです。
ええ、そうなんです。
そうったらそうなんです。
黒髪ロングヘアの美人系、小動物系のかわいい系。はたまたヤンキーっぽいけどかっこいい系女子。
その中でもボーイッシュ系の黒髪短髪は気に入った。
おお。バスト93とな。これは捗る。
何がとは言わないが捗るのさ。
いや、しかし。ボーイッシュなんて椎堂以外にもいるもんだな。
この胸と椎堂のどっちが大きいか見比べたいが、それをしようものなら今度こそ口を聞いてもらえなくなるので思い留めることに。
「こーーーんにちはーーー!!」
何やら場違いな明るい声で。いつの間に近づいたのか分からないが、この声からしていつもニコニコあなたのとなりに這い寄る昆虫カサコソステップじゃないですか。
さっき、連絡してたよね?で、拒否したよね?
言葉通じないの?
と、それより今気まずい事が起きた。
うん、この際はっきり言おうか。俺の息子から放たれたエネルギーがその混沌先輩の顔にかかってしまったのだ。
それも勢いよく出たので大量に前髪から目から鼻にまでまんべんなく。
「あーそーぼ。」
いかんせん、あくまでもこの人は女子なのだからこれは謝らなればと身構えたが、拭きもせず普通に連絡した事を遂行しようとしたので拍子抜けして押入れの布団の中で手を滑らせ頭から落ちた。
と、思ったら柔らかいものに頭をベッドイン。
ま、俗に言うラッキースケベというやつですな。
ちょっとしたドジによる女子の胸に顔面ダイブ。
この場合、胸を揉む。馬乗りになってしまうなどもラッキースケベのなせる業。
「もしもし、アキくん?今日のわたしはそっちの遊びの気分じゃないの」
年がら年中遊びと言ったら虫取りな気がしますけどね。
一体だれがこんなおかしい女と寝てくれるのだろうか?甚だ疑問である。
「おやすみなさい」
「うんしょうんしょ」
「あの?俺、眠る挨拶をしたはずなんですけど」
俺の体が引きずられる痛みを受けようがお構いなく腕に腕を絡ませて全身のバネを使って部屋から部屋へと移動させる。
引き戸のサッシを通過することによる背中やお尻に当たる痛みに耐えられず、本上先輩の手の平をタップするが言うことを聞かず、ここは強硬手段に出て握っている手を思いっきり引っ張って俺の上に落下させる。
この際、俺の顔に本上先輩のお尻が乗ってるが構わず、そのまま抱きしめて動けなくする。
「あ!あのさ!アキくん!だから今日はそういう気分じゃなくて」
「本上先輩、いい加減にしてください」
こっちは真剣に怒ってるのにまだ普段通りの対応をする本上先輩。
「俺だって本気になったら怒りますよ」
「やめっ!耳はだめっ!」
腰を左腕で完全に固定。空いた右手で本上先輩の耳を絶妙か加減でさわさわする。
どんなに止めてほしかろうが喘ごうがこちらの言い分を聞かなかったんだ。こっちも聞くもんか。
「らめ〜〜〜〜〜!!!」
どういうわけか。その後岡庭先輩にしこたま怒られ、俺だけ朝まで外で正座の罰を受けてしまった。
え?本上先輩、陸に揚がったマグロみたいにビクンビクンしてたけど大丈夫でしょ?
「で、その結果授業中爆睡と?」
ただいま三学期の中学のお昼休みなわけなのだ。
朝から夜まで正座してを三学期までされればそうなるわっさ。どうか言ってやって委員長。元陸上部部長にも虫馬鹿先輩にも。
あそこに常識なんて通じやしねえ。
「オレにその権限はねえよ」
苦笑いしながらそういう姉岳さん。だが、俺は知っている。
別のクラス委員長はどんな女の子でも虜にするという噂を。
「野上のアホと一緒にするな!」
おー。さすが同じクラス委員長同士お互いの事を知り尽くしてるだけのことはある。
「お前?あいつからどこまで聞いた?え?オレの何をどこまで知り尽くしてんだ?言ってみろ」
おお怖い怖い。そんな怖い顔をレディがするものじゃないですよ。
あ、机を指でトントンし始めた。これはやり過ぎた流れだ。
そんな時は平身低頭の構えだ。これをすれば立ち所に事態は収拾する。
「謝ってすまそうって奴、オレ嫌いなんだけど」
そんな訳にいかない展開に俺は戸惑った。
どうしよう!?まじで姉岳さんの顔が夜叉みたいになってる!?
俺は助けを求めるべく周りを見渡すが。
まず平間さん。
「さってと。椎堂の様子を見に行かなきゃな」
教室の扉をガラリと開けて退出してしまった。
これは仕方ないといえば仕方ないがタイミングに他意を感じてしまう。
次に皆河さんだが
「あいやー。やっぱりSno○Manの喪黒くんは最高よー。」
何やらスマホで男性アイドルの動画をみてるようだ。
一見普通の女子の行動のように見えるが、あなた普段は爬虫類のユーチ○ーブしか見ないでしょ?
ね?あからさまにこちらを避けた行動だよね?
ただ。残念な事にこの2人の助けを得られない以上、俺も手詰まりになる訳だ。
あら、お早いこと。
これ心理戦ゲームならおかわいい事で済まされるだろうが、これはそんなもんじゃない。
だってこちらの心理は煤けてみえてるんだもの。
「あ!あの!都時くん!」
少し甲高い女子の声。そちらを向けば背の低い小動物齧歯目。リス系女子代表の七森優子さんだった。
びっくりした。いや、むこうもおっかなびっくりしてるけども。
「何?七森さん」
何にせよ、この状況を脱することができるのなら藁にもすがる思いだったので七森さんに努めて優しい顔で対応する。
「ごめん七森さん後にしてくれない?」
訂正、対応しようとしてた。
原因は姉岳さんが女の子がしていい顔面とは言い難いものをしていたから。
人を殺すような目をしちゃいけません!
その目をしていいのは平間さんと星宮先輩だけです。
え?2人も女の子じゃないかって?
いいのいいの。むしろぱっちり目をしてる2人の方が驚愕物だから。
それよりも七森さんが人を目撃した兎みたくビクッとして去ったじゃないか!
それも去った瞬間に周りがよく見えてなくて机にお腹ぶつけてるよ。あれはもろに食らったから痛いぞ。
その場で倒れ込んで身悶えてるじゃないか。謝りなさい姉岳さん!
「····わりぃ。流石にやりすぎた。ごめん七森さん」
「う、うん。わたひもごめん」
七森さん自身が悪いところがあったのかは微妙なところだが、彼女が謝ることをどうこう言う必要はない。
「いいか?いくらダチでも知られてえこととそうでねえことはあるんだよ?その······アレしたこととか知られたくねえんだよ。オレ、どうあがいても女子だし?おめえは男だし」
「まことに申し訳ございませんでした」
これは床に土下座せざるをえない。
「本当に気ィつけろよな」
機嫌が治った訳では無いが、今後の俺の対応次第では最悪の展開になるのはわかった。
その会話を断ち切り、次が移動教室になる為準備して次の授業に備えた。
と、そして迎えた2月なのだが···。
この日。男にとっては待ちに待った一大イベントがやってきた。
そう。ヴァレンタインというやつなのですよ。
いいもんね♪小学生の時は椎堂と実の母親から市販のチョコ(できない、面倒くさいの両者)をもらうたけだったけど、今年は違う。
そう。胸はともかく料理ができる楓さんがいる。
これは女子からの本命チョコ!それも手作りの本格派チョコが持っているに違いない。
「楓さん!おはようございます!」
「·······よくそこまであからさまな態度がとれるわね。逆に関心するわ」
そんな呆れと侮蔑の視線をこちらに向けなくても。
ここまでスキップルンルンで楓さんの家の前までやってきたんですもの。そりゃあ気分も晴れ晴れなわけですよ。
「まあ、作ってきたし。そこまで期待されたら出さずにはいられないわね。」
「よっ!さすが先輩!かわいい!頼れる!多数の男子にモテるだけある!」
「ここぞとばかりにわかりやすいよいしょをって待って!!最後おかしな事いわなかった!?なんで知ってるの!?」
「え?実際に男子から告白されたことあるんですよね?」
「誰から聞いた?」
「匿名希望です」
「い!い!な!さ!い!!チョコ渡さないわよ!」
俺的にはほっぺたむにむにされながら至近距離にある楓さんの顔をおがめるのはご褒美にあたるからこのまま続行でもいいが、チョコの為本当の事を話す。
「氷見先生から告白されてる云々を聞いただけです」
さすがに氷見先生の名前を出されたら言い返せないのか唇をむにむにさせて怒りたいけど怒れない顔をしている。
そのむにむに動いている唇が気になって唇を重ねてしまった。
そしたら思考停止モードに入った彼女はしばらくして脳内の混乱に陥っている。
「は?·····え?··········はあうあえええうういいえええ!?」
もはや人類が解する言葉すら使えなくなっていた。
これはどう対処するべきか悩む。
素直に怒ってくれた方がまだわかりやすいのだがとんだヘタレだこと。
あら?そういえば既にヘタレでしたねこの先輩は。じゃあこの反応もしかたないか。
「あんた何やってんのーーーー!?」
それから20分くらいしてやっと日本人類が理解できる言葉で話してくれた。えがったえがった。
「ばかなの!?アホなの!?死ぬの!?」
でもまだ壊れてるみたいだ。これが俺の彼女で大丈夫なのだろうか?
「楓さん。誰しも彼氏彼女の関係になったらすることするんですよ」
「準備!!彰くん何度も言ってるでしょ!女子には心の準備というのがいるの!!何を聞いてたの!?」
「うーん。楓さんの心臓の音?」
「そうそうそうそう胸がないから聞こえやすいつてうっさいわ!」
すごい!何がすごいかって楓さんがノリツッコミができることがすごい!
出会った頃の楓さんならこんなことやらないのにそう思うと涙が出そうになる。
「彰くん!?なんで泣いてるの!?違うでしょ!?ここはわたしに謝罪する流れよ!?ねえ聞いてる!?」
20分前の自分の行いが返って来たと思ってください。
まあ、そんな嬉しいのか悲しいのか分からないやり取りを交えつつも
「はい」
楓さんの赤面顔とチョコレート。ゲットだぜ。
「彰くん!?なんで口で受け取るの!?わたしの指を舐めるなしゃぶるなこらーーー!!!」
え?これもだめなの?
でもそうか。これだと包装ビニールも口に入るもんな。楓さん成分の為ならやむなしと思った行動なのだけれども。
案の定、楓さんは怒っていた。
「もう!なんで今日の彰くんは変態なの!?」
「バレンタインデーなんで」
「それ絶対関係ない!なんでチョコレートを受け取るイベントがキスされ指舐められなきゃいけないの!?おかしいでしょ!?」
「楓さん、時代は変わったんですよ」
「はい謝罪が入らなきゃ佐江ちゃんにされた事を全員にバラすまで5、4」
「すみませんでしたーーーー!!!」
ちょっとちょっとちょっとちょっと!!
なんでそれを楓さんが!?
「あ!あの〜?それをどこで·····」
怒った顔から冷たい表情での脅し。そして先ほど恥ずかしがっております。
「····この間佐江ちゃんとエッチな電話してたら『カエデ先輩。都時くんのアレすげえデカいから止めといた方がいいですよ』って言われたから問い詰めたら吐いてくれたの」
恥じらってはいるが後輩女子を脅してるよこの先輩女子!
え!?そこの2人でエッチなトークするの!?というより平間さん馬鹿だろというのに驚く。
陸上部女子は馬鹿ばっかなのか!?
「まったく·····目を離すとすぐ浮気するんだから」
いや、楓さん?平間さんの件は浮気と捉えるのは難しい気がするのですが··。
「で?何か言うことは?」
「心より申し訳ありませんでした」
何度目になるかわからない両足両手を玄関床につけての土下座を余儀なくされた。
「わかって頂けたようでよろしい」
俺、結婚したら奥さんに尻敷かれるタイプになりそうな気がする。
とはいえ、もらえる物も貰ったので後は登校するだけだ。
俺は楓さんと二人して歩こうとする。
と、なにやら不思議な感触が。
詳しくは言うなら胸部に柔らかな感触と唇に······といいますか。こんなことするのはもう1人しかいないですよね本上先輩。
「あんた本当にいい加減にしなさいよ!!!」
ほら本カノが朝から怒鳴る事になってるじゃないか。
同級生でも容赦なく頭をボカスカぶっ叩く楓さんを止める理由もないので俺は精悍する。
「いやだってさ。今日バレンタインでしょ?だから」
「チョコ渡しなさいよ!!なんで人の彼氏にキスハグなのよ!!」
「されたら嬉しいでしょ?ね?」
いや、こっちにふらないでください。
キッ!と睨む楓さんを直視できる度胸はないのでやめてほしいのです
「良く考えてみなよお二人さん?」
そう言いながら後ろ向きで登校しだす本上先輩に追従する2人の中学生カップル。
「行こう彰くん。これは頭おかしいから」
あ、相方は追従する意思なかったわ。
まあ頭おかしいのは否定しませんけど
それはもう競歩選手かと見紛うほどのスピードだったそうな。
おかげでめくれるスカートからのぞく太ももは細くて白くてきれいな事この上なかったそうな。
眼福眼福。
俺としてはこのまま太もも鑑賞はしていたい所存なので楓さんに追従するほうこうにシフトする。
「ヘイ。お二人さん」
が、元々の体力が低レベルな2人なので山育ちの彼女が追いつくのは時間の問題だった。
「まあまあ。事後みたいな息切れしてる間に言うとね。昆虫だって人間だって甘い蜜は必要じゃん?だから彰くんにとっての甘い蜜といえばおっぱいの触れ合いとキスかなって」
一体どこから突っ込んだ方が良いのかわからないし突っ込んだら負けな気がするのでここも無視する方向で。
虫好きなら無視も受け入れるでしょう。
「あの······は。都時くん?いきなりそういうのはどうかと」
うむ?俺は確か楓さんの腰を抱いて歩こうとしてたはず。
のはずなのに·····
「彰く〜〜〜〜〜ん!!!わたしを生贄にするな〜〜〜〜〜!!!」
やばっ!!楓さんは未だに本上先輩に腕を引かれてる!!
と!言うことは·······。
うん。別の人········、それもクラスメイトの七森優子さんだった。
この子。俺にされて怖がって俯いてる·····。
と、思ったらよく見ると顔が赤くなってるや。
俺、もうその先の方まで誰かさんにされてるから平気だった。
そう。女子耐性はいいが、楓さん耐性はついてない。
これはすぐに戻らないと後が怖い。だけど本上先輩に捕まる面倒くささには変えられない。
絶対あの人、懐にゴキ持ってるもん!!
「裏切り者ーーーー!!!」
が。しかし。この選択が正しかったかと言えばそんなことはない。
その理由はクラス内のコミュニティ事情なのだが。
「裁判長。判決は」
『ギルティ!!』
裁判長は姉岳さん。裁判員は皆河さん、平間さん。新屋敷先輩!?
俺は被害者の七森さんより皆河さんのスマホに映る新屋敷先輩に聞きたい事があるのだが、被告人は静粛にコールに邪魔されて言えない。
ちなみに本人の声は怒りのそれである。
『呆れて言葉も出ないとはこのことだな』
盛大にため息をつきながら先輩女子に言われる絶賛正座注男子という構図に一言物申したい。
むしろ三言四言くらいあるのだが、欲張るのは良くない。
「こ、これには深い訳が」
『黙れクズ』
楓さんと同じ顔でゴミ虫でも見る目で見つめられるのはきつい。
無視よりマシじゃないかって?違う違う。新屋敷先輩との久々の対面がこれなのがきついんだよ。
しかし、人に向かってクズと言うまでに性格が歪んでる人だったとは思えないのだが。そこは俺のせいですか。
「鷹峰先輩とは今どうしています」
『貴様と違って我一筋だが何か?』
どうしてだ!どうしてこうも違うんだ!!
過ごした時間か!?過ごした時間がそうさせるのか!?
この先に続く道 すぺえど‐クルネラ @3156
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