5分で読める淡い百合両片思い6~兎のはらわたはビターチョコレートで出来ている編2~

水色桜

第1話

内気な私だけど、勇気を出して劇のお姫様役をやれることになった。

「二人の掛け合いの部分ちょっと難しいな。今日ってこのあと時間ある?久しぶりに家に行っていい?」

王子様役の春ちゃんが言った言葉に視線が泳ぐ。小学生以来だから3年ぶりということになる。

「あえっと…いいよ?久しぶりだよね…?」

なぜか語尾が疑問形になってしまった。

「ホント!?七海の家に行くの楽しみだなぁ。」

心底嬉しそうに春ちゃんはつぶやく。春ちゃんはただ友達の家に遊びに行くことに対してた楽しみだと言っているに過ぎないのだろう。そう思うとうれしくもちょっと寂しがっている自分がいた。

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「姫、なぜ私を騎士団から除名したのですか。」

「それは…。あなたの身を案じているのです。どうか私のこの想いをわかってほしいのです。」

 一通りセリフ合わせが終わると二人はふぅっと深く息を吐いた。

「間とかもいい感じだな。七海がこんなに演劇がうまいだなんて思わなかったよ。」

感心したように春ちゃんが言う。

「そそうだね。私もこんなにできるとは思ってなかったよ…」

劇だとこんなにちゃんと喋れるなんて、私自身も意外だった。二人はベットに隣り合わせになりながら、セリフの言い方について話し合った。一通り確認が終わると春ちゃんが目をこすりながら小さくあくびをした。

「眠いなら少し寝ても大丈夫だよ。今は私しかいないし…」

私が言い終わらないうちに、春ちゃんはうとうとし始め、私の肩によりかかったまま寝てしまった。今だけは春ちゃんの時間を独り占めできる。私の肩によりかかったまま寝てしまった春ちゃんを見ながら、嬉しさで心臓がスキップする。私は春ちゃんのほっぺに手の平を添える。春ちゃんのこんな顔他の誰にも見せたくない。私の独占欲が沸々と際限なく湧き上がってくるのを感じる。春ちゃんのYシャツの隙間から胸部のあたりが見える。見てはいけないもの見てしまった気がして、私は少しどきりとしてしまう。先ほど見た光景が何度もフラッシュバックする。色白で少し膨らんだ胸部、鎖骨の下にあったほくろ。それは普通なら見えないはずのものだった。きっとその位置にほくろがあることなんて春ちゃんと私くらいしか知らないだろう。そう思うと私の中の独占欲が少し満たされていくのを感じた。やはり私のはらわたは真っ黒で苦いビターチョコレートで出来ているのかもしれなかった。

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