雨の致死量を知る

eLe(エル)

第1話

 雨が降り始めていた。降り始めて間もないが、次第に強さを増していくのが分かる雨だ。降りしきる雨の中、私は傘も差さずに何をしているのだろう。

 濡れたいわけなんてない。冷たい、寒い。けれど、いっそこのままこごえて仕舞しまえばいいと思った。


 ふと思い立って、鈍色にびいろの空を見上げる。容赦ようしゃなく飛び込んでくる粒にねて、目を細める。まるで幾重いくえにも折り重なったような線が、宙を埋め尽くしていた。

 にじんだ視界に映る気鬱けうつな空は、快晴の時よりもずっと近くに見えた。けれど私は、手を伸ばさない。この雨もいつかんでしまうことを知っているから。

 なのに何故なぜだろう。この非情の雨に、降り続けて欲しいと願っているのは。

 

 叩きつける粒が激しくとも、穴は開かない。それでも身体と不快に同化していく衣服の感覚で、私は内臓から溶かされていくようだった。

 濡れ続けても、痛くないと思っていたのに。そして、気づいた時には遅かった。



 雨が止んでも私は、濡れていた。








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