巡る季節の中、子供から大人へと成長してゆく君へ

 公園で遊ぶ幼い『君』の、成長の物語。

 二人称体で書かれた現代もののドラマです。
 『君』こと泰介くん、幼なじみの栞ちゃん、あとついでに佐藤くんの物語。
 彼らの成長と交流を描いたお話で、とても穏やかな空気感が魅力的でした。

 途中、悲しいすれ違いや挫折のようなものがあったりもしながらも、しかし最終的にはそれを乗り越え心温まる結末を迎える物語……と、大筋ではそう要約していいと思うのですけれど。
 しかし個人的に好きなのは彼らの少し至らない面というか、決して好ましいばかりではない人格のいち側面。
 ちょっと身勝手だったり、あるいはつい調子に乗っちゃったり。
 完璧でなく失敗もするからこそ魅力的、という以上に、その生々しい手触りが強く印象に残ります。

 他にも舞台が公園に限定されていたり、また短編ながら足掛け十数年という結構な長期間を描いていたりと、独特なところも魅力の作品でした。