第5話 ep 自己満足
今日も俺はまず日課を果たしに外出する。
家から離れた山裾の浅い森の手前少し地面が盛り上がっている所がある。
先の戦いで亡くなった敵軍の□□聖国の兵士達を埋葬した場所だ。
ここが出来てから俺は毎朝ここに来ている。
この時ばかりは俺も厳かな気持ちになる。
大元をたどれば神様が俺をここに転生させなければ良かっただけなのだが、結局
俺が自分の意志で決めて戦に参戦し、実行したのだから今となっては神様のせいだけでもない。
1年間そうしていた様に俺が家にずっと引きこもっていればよかったのだから。
この山間の平原回廊の出口にはそれぞれの国が設けた砦がある。
戦いの前に○○王国の王宮に行くまで俺が知らなかった事だ。
○○王国側には○○王国の砦。□□聖国側には□□聖国の砦。
車で行けばそう遠くは感じないがお互いにそれなりに距離はある。
俺は両側が砦で塞がれたこの山間の平原のど真ん中に突然出現、転生したのだ。
負けそうな側はお互いの砦に逃げ込むが仲間の死体の回収が出来ない。
勝った側はそのまま追撃するものの結局敵の砦までは落とせすに終わる。
なぜ2国間がずっと同じ様な戦いをしているのかは俺は知らない。
俺は周りを見渡した。
戦の終わり方は色々あるだろうが、同じなのは結局死体が出る事だ。
戦勝国側は形見や戦利品を整理して味方の死体を砦に連れ帰る。
敗戦側の遺体はそのままほったらかしだ。
所々地面に見える風化した骨の欠片はその時々で敗戦した兵士の物と思われた。
今回の戦いではついに□□聖国側の砦が陥落した。
ほとんど俺が戦った結果、○○王国の戦力が損耗していなかった事が大きいらしい。
無傷のまま追撃して□□聖国側の砦を落とす時に出た犠牲者数名のみだ。
俺は戦いが終わった後で王国側の指揮官と話して敵の遺体の回収と埋葬をする様に要請した。
大勢が決まってからしゃしゃり出て来てたのだからそれくらいやるのは当然だ。
指揮官が比較的素直に俺の言う事を聞いたのはもちろん俺の機嫌を損ねない方がいいと判断したからだろう。
何せ俺は狂暴な異世界の宇宙人だからな。
兵士は戦う事が仕事だから戦いによっては死ぬ事も覚悟もしているだろう。
誰かを殺して誰かに殺されるかの違いしかないと思う。
しかし、完全にそう割り切れる程には現代日本から来た俺の精神は図太くない。
正義の味方でも勇者でも何でもない。
俺は今日も日課の墓参りという単なる偽善と自己満足行為を果たして家に帰った。
家と一緒に転生した俺は異世界をマイペースに生きていく まるお @motodebu
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