第8話 対立と後悔


ガラガラッ!


「死ぬかと思った!!破壊するって言っても退路を作るんじゃないのかよ!」


「ご主人様!ご無事ですか!すいません…」


「フレア、力加減…できてない…」


「2人ともだよ?」


「すいません…」


「いてて…ひどいっすよ、いきなりなにすんすか!」


いや、生きてんの!?しっかり直撃してなかった!?


「やっぱあなた達は先に始末しておくべきでしたね。宮殿を破壊してもザンドと僕を倒さない限り逃げられないっすよ」


モードは臨戦体制に入った、この国で最も強い男と言われるモードがしっかりと構えたのは実に3年ぶりだった。


「埃相手に逃げるものを見たことある?」


「逃げるのは…そっち…」


一気に空気が変わった…


ここにクロスウェイ最強と世界最強ギルドの幹部との対戦が決定した。



えぇ…ただでさえ一国の宮殿が壊滅状態なのにこいつら衝突したら国丸々なくなるぞ…?




––––––––––



「ザンド、どいてくれないか?僕は君と戦いたくないんだ」


「悪いが、俺はもう騎士だ。誰かを守る立場、守るってことは誰か傷つけることも伴う。あの3人組のとこに行きたいなら俺を倒して行ってみろ」


かつての旧友ライバルだった2人は、



「わかった、だが、1つ聞きたい。本当にお前は騎士になりたくてここに来たのか?なんで一声かけてくれなかったんだ」


「…俺を…助けてくれ…」


「な!それって…?」


「……悪いが、ここでお前の“冒険”は終了だ」


望まない対立をし、生真面目だったザンドはどこか重々しい面だった。



宮殿跡で今大きな戦が同時に始まる





––––––––


紅爪クリムゾンクロー!!」


「だからそれじゃ無理っすよ、今度は僕の技を見せますよ?『静雷せいらい』」


スッッッッッッ!


タラッ…


「これもかするだけっすか…でも、雷は少しばかり痺れますよ?」


ビリビリビリ!!???


「ぐっっ…?!」


あの剣に光魔法の応用である電気魔法を纏わせた。それだけでなく魔法をかけているのをバレないように、隠蔽魔法までも同時に…


「油断大敵…『雹降ヘイルメテオ』」


「いつ僕が油断したんですか??『神への抵抗エターナルリベリオン』」


キンキンキンキンキン!


全部いなした!?


「エイト様!!」


…!流れ弾!?



チリッ!…ダラダラ



「ぎりぎりセーフ…!あんなのをあいつは全部対応してたのか…?」


「…」「…」


「あれ…?2人ともどうし、、」


「わざと…?」


「おっとそんなわけないっすか!僕は真面目に戦ってましたよ!今のは事故じゃないっすか!それに彼も冒険者なら戦いに参加すべきですし!」


めっちゃ正論だがこいつは俺がめちゃ弱いことを知らないのか。助太刀したくてもかえって役に立たないんだよ…


「じゃこれから起こることも事故だね、ご主人様を傷付けた罪は死刑よりも重いよ」


完全に事故じゃなくて事件!!

あと怒ってるように見えたのそうゆうこと?!


「いや、2人とも避けられたからそんな怒らなくてもいいよ…?それに俺が参加してないことも事実だし」


冰覆アイスデストロイ


「紅爪・緋炎」


聞いてないし!!またあの爆発が来るのかよ!


「させないっすよ!この剣で相殺してみせるっす!!」



「「合成魔法『天怒フィーニス』」」


「まじすか……『神殺し《ゲッターモルド》』!!!」



本来フレアとファアンは犬猿の仲と言えるほど仲が悪く、基本的に意見が一致せず喧嘩してしまう。だが、今回はモードへの殺気が一致したことで偶然この魔法が生まれた。


この魔法は先のエイトを熱波で飛ばした焔龍の貫獄とほぼ同等の威力に達していた。



…ッッッッドガーーーーーーーーーン!!!



が、モードは剣と自分を代償に被害を最小限に抑えてみせた。本来後ろにあるのは砂漠や森だが、精霊族にとっては全ての自然環境が神と同等で、咄嗟に体が動いていた






シューーーーーー…


「はは…完敗っすよ…」ドサッ


クロスウェイ最強のモードは初の大敗を喫した。たった数分の中の攻防はクロスウェイ史上最も熱い戦いとも言えるだろう。



–––––––––––––––––––

同時刻


「もう、諦めたらどうだ?誰が見ても勝敗は一目瞭然だ」


「ザンド…!何があったか知らないが、絶対お前をまた冒険者にさせてみせる!」


「冒険者なんて今思えばつまらない職業だと思うな、全て守れるわけないんだ。守りたい人を守る。それで十分だろう」


「あの頃のお前はどうした!!それが本心な訳ない!僕はそんな奴に“3位”の座をもらいたくなどない!!『光壊ロストボム』!」


キーーーン!!


「もう寝てろ、俺はあの3人を団長の助太刀に入る、凄まじい音がしたからな」


「行かせない…!まだ勝負は途中だぞ…!」ヨロッ


「そのフラフラした体制で何ができる。」


「お前に勝つくらいなら造作もないな。僕を諦めさせたいなら“あの技”でかかってこい」



「あぁ、それで諦めるんならやってやるよ。…じゃあな。アリステア…『歪空レッドスカイ』!!」


歪空は本来ザンドの技、一瞬にして相手の首を取る殺傷力もスピードも兼ね備えた剣技。


「僕はもうザンドを超えたんだよ、『歪空』!!!」


そして、アリステアの最も得意な技でもあった


「なっ?!押し返され…!」


キーーーーーン!ざくっ!


「僕の…勝ち…だ。」バタッ


最後の力を振り絞ったアリステアの歪空は一瞬だがザンドを超えていた。ザンドの剣は遠くへ飛び、まだ戦いが続いていたら戦況は反転していたかもしれない。


「はっ、今回も俺の勝ちだろ…なぁ、アリステア…俺は正しい選択をしたのだろうか…」


次アリステアが目を覚ました時はもうザンドの姿は見えなかった、、、、




–––––––––––

女王はモードの手にやって避難され、その後間も無く鬼人国とも平和条約の締結を検討し始めた。未だなぜジャイアントゴーレムを送ったのかは謎だが、一時的に世界は平和を取り戻した。聖騎士団はモードが重傷を負っているためザンドが団長代理を行った。




〜クロスウェイを抜けた日の夜、馬車の中〜



「くぅー!なんか4日の間の出来事とは思えないほど濃かったな」


「あぁ、そうだな」


「帰ったら兄上にちゃんと甘やかしてもらえよ?」


「あぁ、そうだな」



からかいも通じない…何があったんだ?


「1+1は?」


「4」


「普通に答えられるんかい、普通間違えるなら3じゃないか!?あとこんな問題間違えるな!」


「うるさいぞ変態、僕は冒険者としての知識以外ないんだ」


「そういえばアリステアは冒険者いつから始めてるんだ?」


冒険者は成人してから試験を受けて資格を手に入れることができる。最年少記録は14歳1日。14歳の体格や身体能力じゃ1発合格は到底あり得ない。大人でも根を上げるほどの試験だ。


「成人して次の日から」


「お前かよ!!」


「なんだ、今日のお前いつもより気持ち悪いぞ?」


「息するように毒を吐くな!!……で、まぁなんだ。困ったら信頼できる人に相談するのも大事だが、今自分が何できるかを考えるべきだぞ。俺だって5回も冒険者試験落ちて金もなかった日があったけど、今、お前の目の前にいて、生きてる。過去の俺が諦めなかったからだろ?」


「…ふん、生意気言うなエイトのくせに。あっちに着くまで口を開くな」



「あ!?人がせっかく心配してやったのに!」


「…」


あー!無視かい無視かい。こいつを励まそうと思ったのが間違えだったな。


「エイト様…?深夜に…何してるんですか…?」


「いや!なんでもない。ごめん起こしちゃったね」


「大丈夫です…一緒に寝ませんか?」


「ちょっとだけな、そろそろ1人で寝ろよ」



ガチャ、バタン!


「変態野郎め…生意気なんだよ…」








––––––––––––––

次の日の早朝、鬼人国へ到着して王から褒美と称して1人3億ゴールドをもらった。最初こそ全員が断ったが、最終的に半ば強制で渡された。それから間も無くしてエルガルドにも到着した


「おかえりなさいませマスター、お勤めご苦労様でした。」


「本当に頑張ったのはこの2人だよ。この2人がいなかったら今頃木っ端微塵になってる。」


「団員の皆さんでお祝いしたいところなのですが、今魔王軍から魔物の大軍が送られてきていてシエラと他全員で応戦している途中で…」


「なんで今更魔王軍が動き出したんだ?」


「わかりません…ただエルガルドを攻めようとしているのではないような…“何か”を探しているような気がします。必死にその標的に向かって突撃しているようで」


「何か?魔王軍に狙われるってことは勧誘を却下した白龍とか?」


「でしたら良いのですが、、まぁ何はともあれ当分は皆さん休んでください!私も明日から調査に向かうので是非休暇を楽しんでもらって。フレアとフィアン、マスターに迷惑かけないでね?」ニコッ


目が笑ってないぞー




––––––––––––

「魔王様、なかなか前いた3人組の者達と出会えません、先程1人だけ確認できましたが。この際“漆狩ヴェナーティオ”の1人を派遣しますか?」


「そうじゃな、早く強き者と会ってみたい。」


魔王軍の幹部、通称漆狩ヴェナーティオ

数々の国と地域を滅ぼし、今、魔王の右腕である【???】に次ぐ強さである。



遂にウェルテクスと魔王軍幹部が衝突する。

魔王軍内が久しぶりの幹部出動に大きく歓喜し、エルガルドと魔王軍領地の境界線へと向かっていった。エイト達に更なる災害が降り掛かる…!

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ノリで5年前に作ったギルドは知らぬ間に世界最強と呼ばれギルドマスターの俺はなぜか美女と強すぎる団員達に崇高されていました 紋皇 一兎 @rin_314_yak

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