第2章のあらすじ/主要人物紹介

第2章のあらすじ


 失声の少女スティープルは十二歳にしてヴェラム王国兵の職務に就いていた。そんなある日、彼女は王城地下に隠されていた扉の封印を解除しようとした疑いで処刑を宣告されてしまう。しかし処刑寸前、生への執着心から能力が覚醒。武器や魔法と異なる一個人だけの能力、通称プレーン能力は『ファングド・ファスナー』と名付けられた。

 二重人格の少年チョキ(裏人格の名はシザース)と共に隣国パーチメント王国へたどり着いたスティープルは、使用人のマルル、執事のレサルタを雇い、新たな生活を開始。チーム・ツーサイドとしてギルド・カートリッジから依頼を受けることとなった。

 今回の依頼は、ロンタール国からやってきた国王ユキリ・ロンタールの護衛。その実態は護衛とは名ばかりの付き添いであり、楽な依頼と思われたものの、同時にユキリの暗殺任務も受けていたことが発覚。さらに暗殺を求める依頼主側によってスティープルを人質に取られてしまう。

 どちらの任務を優先しても破滅するという状況下でシザースは、ユキリを狙う第二の殺し屋ローエンビッツと遭遇する。彼の提案は、ユキリの暗殺を護衛失敗という形で達成するというもの。その提案に、一度は賛同したように振る舞うシザースであったが、最終的には護衛を優先して相手を返り討ちにしてしまう。かくして暗殺は失敗と思われたものの、実はシザースが受けた依頼は暗殺ではなく引退へと追い込むことだった。結果的に二つの依頼を同時に達成することに成功したのであった。





主要人物紹介


スティープル

 ヴェラム王国出身。生まれつき声を出せない失声の少女。腰まで伸びた緑色の髪と、母の形見であるピンク色のコートがトレードマーク。ヴェラム王国に伝わる『王国を滅亡させる封印解除の鍵』と言われている。

 プレーン能力は口を生成できる『ファングド・ファスナー』。噛みつく力は強く、人間の身体程度であれば容易に重症を与えられる。スティープル自身に生成することで喋れるようにもなるが、人体に生成した口は他人の質問に対して勝手に本音を喋ってしまうため、本人の望む会話はまだまだお預け。


チョキ

 スティープルと共にチーム・ツーサイドを結成する少年。栗色の短髪と透き通った青い瞳が特徴。人を傷つけないのが特技で、生まれてから一度も生物を殺害できた試しが無いと言う。二重人格者であり、別人格のシザースが表に出ている時はチョキの意識は無い。ただしシザースの意思は無意識のレベルで理解しており、状況判断は的確に行えている。

 常にのんびりとした態度口調で話し、危機感が無いと指摘されることもある。ただし、それはシザースに絶対の信頼を寄せているためであり、チョキ自身がトロいわけではない。


シザース

 チョキのもう一人の人格。瞳の色は赤で、それ以外は見た目や口調などチョキと同じ。別人格のチョキが表に出ている時でもシザースの意識はハッキリしている。ただし性格面ではチョキと真逆で、人を傷つけるのが特技と豪語する残酷な性格。それでもチョキと同様に生まれてから一度も生物を殺害できた試しが無いと言う。

 プレーン能力は二本のサーベルを顕現させる『デュアル・ブレード』。この剣で斬り殺された生物は蘇り、シザースやチョキの命令に従うようになる。生命を持たない物質の場合はもう死んでいると扱われ、ただ斬るだけで良い。


マルカ・ドール

 通称マルル。スティープルたちの住むナギナタ邸にて家事全般を担当するメイド。足元まで伸びた緋色の長髪が特徴。

 優しい性格だが、それ以前に従者の役割に誠実に向き合うタイプ。主人から対等な立場で扱われることを嫌い、また主人に危害を加えた相手には躊躇せずに攻撃に踏み切れる。


レサルタ・ドール

 マルカ・ドールの兄。茶褐色の燕尾服を着用している。彼女と同様に現在はスティープルたちに雇わて執事を務める。肩書は執事だが医師、庭師、弁護士も兼用している。

 主人であるスティープルたちに容赦なく強い口調で話すが、実際は忠実な従者。主人の命令に呆れつつも途中で投げ出すことはしない。その一方、主人であろうと手の内を全て曝け出すつもりはないようだ。


ウェバリー

 ギルド・カートリッジで受付を務めるメガネの女性。規律や損得を重んじる性格で、不誠実な相手には容赦しない。


チームBFD

 パーチメント王国で名の売れ始めた冒険者チーム。リーダーのブロード、肉体派のデウム、風使いの紅一点ファインで構成される。


ヴェラム王国

 国王ヴェラム七世の統治する王国。王国兵団を束ねるフラットクリンチ、炎使いの女兵士ジョイント、自信家の美青年リムーバ、驕慢な老術師タッカーなどが所属する。


ロンタール王国

 前国王が崩御し、その息子ユキリ・ロンタールに実験が移った遠方の王国。国王ユキリは王位継承を祝した小旅行の最中であり、王国兵団の第一部隊を率いる隊長も行方知れずのため、当分は混乱が続くものと予想される。


ローエンビッツ

 ロンタール王国では名の知られた道化師・殺し屋。依頼主の前で標的の殺人ショーを披露する“惨劇の立役者”。ユキリの護衛としてパーチメント王国へ来たが即座に解雇され、現在は自由の身。大道芸を思わせる攻撃魔法を使いこなすほか、攻撃の矛先を指定するプレーン能力『ミサイル・マエストロ』を有している。

 ユキリの暗殺を巡るシザースとの戦いに敗れ、現在はスティープルと同じ屋根の下、レサルタの治療を受けている。


テック・ニコル

 便宜上はパーチメント王国の船乗り。彼が操縦するニコル号は海上の運搬を可能とすることから船として認識されているが、その動作原理や材質は不明であり、船であるとは限らない。

 彼が運ぶのは、何らかの理由で秘密裏に行動したがっている“訳あり”の人間たち。代金は他の船とは比べ物にならないほど高い。


ヴェル・ミリー

 朱色と金色を基調とした容姿の謎の女性。ヴェラム王国兵を戦意喪失させるほどの魔力を持つ。

 プレーン能力は、人や物の“滅び”を予見し、その回避策を知ること。

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失声のスティープル 青山風音 @FoneAoyama

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