エピローグ


 仮病だったボーカルが戻ったバンドの演奏が終わり、会場の撤収も終わり、お疲れ様と皆と別れをかわしたあと、俺は氷室さんと二人帰り道を歩いていた。


「氷室さん」


「えと、うん、何かな?」


「あのさ、都合の良い話で本当に申し訳ないんだけど……」


「はい」


「俺と友達を続けてください! お願いします!」


「い、いいの?」


「うん。仕事、続けることにしたよ。氷室さんを見てそう悪いものでもないと思えたから」


 俺は輝きに魅入られた。


 きっとこの刹那の輝きを追い求めるなら、刈谷の仕事を続けるべきだとそう思ったのだ。


「ほ、本当だよね? 刈谷くん?」


「うん、氷室さんが良ければだけど」


 氷室さんはぴたと足を止め、じわじわと震え、そして。


「やったー!!」


 と泣き笑いで抱きついてきたがすぐに離れ、


 ***


「『じゃなーーーーーーーい!!』と私は刈谷くんから走り去りました」


 ファミレス。目の前でちゅーちゅージュースを啜る陽南乃ちゃんに結果報告を終える。


「それは許せないね」


「う、うん。この数週間、頑張って刈谷くんにアピールしたのに、曲で好きだって思いを一杯こめて歌ったのに……」


 おーよしよし。と陽南乃ちゃんが頭を撫でてくれる。


「結局、男を繋ぎ止めるのは仕事。そんな寓話みたいな話あっていいわけないもんね♡」


「えっと、陽南乃ちゃん?」


「大丈夫。こらしめてあげるから安心して、許せないのは雪菜だけじゃないから♡」


「え?」


「人間、一番怖いのは油断なんだよ。コンスタンティノープルは鍵の閉め忘れで落ちちゃったんだから♡」


「ひ、陽南乃ちゃん?」


「あんまり携帯の画面とか見せちゃダメだよね〜♡」


 ***


「ふんふんふん〜♪」


 俺はスーパーの袋を持ってウキウキで帰宅する。


 海まつりの依頼の収入が入り、うなぎを購入したのだ。


 早く食べたくて仕方ない。


 スキップを踏んで家の扉に手をかける。


 はやって鍵を差し込む前に引いたのだけれど、硬い感触はなく扉が開く。


「あれ? 鍵閉め忘れてた?」




————————————————————————————————————


ということで完結です!!

皆様が楽しみにしてくださったおかげで完結まで書ききることが出来ました!!

息抜きの作品ということもあって色々と粗が多いですが、それでも楽しい作品だったのではないでしょうか?

何より長い間おつきあいくださりありがとうございました!

よろしければ他作品でお会いしましょう!! それでは!!

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負けヒロインのために青春を無双せよ。ただし、とにかく明るいヤンデレに正体バレしてはならない。 ひつじ @kitatu

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