第5話喪失感と仲間にはなれない

君が突然私の家に来た時そのまま気を失っていたみたいで重い瞼を開けた。衣類は着せられて布団までかけられていた。そんな少しの優しさが私を容赦なく傷つける。君が触れていた首に手を当ててみてももう君はいない。


意を決して起き上がって見ても何も変哲もない自分の部屋が広がるだけ。本当に終わってしまったんだな。悲しさなのか、寂しさなのかこんな時に泣くような人ならスッキリするのだろうか。君との時間がフラッシュバックのようにのしかかってくる。この家に今はいれない。音を立てて自分が壊れてしまいそうで逃げた。



近くの悪友みたいな男友達の達也のとこに連絡もなしにインターホンを鳴らす。もうお昼になる頃なのに眠そうな達也の声が聞こえて来る。


『どちら様?』


[私、ちょっと話したいんだけどダメ?]


返す言葉より先にドアの鍵を開ける音がした。


『どうしたん?珍しいじゃん、瑞希』


はっとして、その場で動けなくなった。君は付き合ってから私の名前を呼んだことはない。今気づいた。


『なんで泣いてんの?』


やっと泣けたことに安堵するよりも今この瞬間気づきたくなかったことに気づいてしまったことに動揺を隠せない。私は君の本当の意味での恋人だったのか。考えるだけで全身の震えが止まらない。


『大丈夫か?ひとまず中はいれよ。』


達也にうながされながら部屋の中に歩を進める。泣き顔なんて見られたくないのにもう隠しようがない。



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ポンコツな君と怖がりな私 @minato1125

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