第12話

 彼女は俺達を見つけると、飛び降りてくる。

ドスンッ!! 衝撃とともに、地面に大きな穴が空いた。

「いつつ……。着地に失敗しちゃったな……。んっ?君は確か……?」

少女は俺の方を見て、不思議そうにしている。

(確かどこかで会った気がするが……)

俺は記憶を辿ろうとした。

「あっ!思い出したぞ!あの時の少年じゃないか!」

少女は嬉しそうな声を上げる。

「あの時?……ああ!君か!」

俺はようやく思い当たった。

(そういえば、この子は俺がゴブリンに襲われた時に助けてくれた女の子だ!ということは、この子が勇者ってことなのか?)

俺は戸惑いながら思った。

「お知り合いなんですか?」

ルミアは尋ねてきた。

「ああ……。前にちょっとな……」

「へぇ〜……」

ルミアは興味深げにこちらを見る。

「なんだよ?」

「いえ、別になんでもありませんけど……。それより、お久しぶりです。元気にしてましたか?」

ルミアは笑顔で話しかけた。

「うん……。それなりにね……。それよりも、今の状況を教えてくれるかい?」

「はい……。実は……」

ルミアは事情を説明した。「なるほどね……。そういうことだったのか……。それなら、僕に任せておいて!」

そう言うと、少女は右手を前に出した。

「何をするつもりだ?」

俺は思わず尋ねる。

「見てたら分かるよ……」

そう言うと、少女は目を閉じる。すると、彼女の体が輝き始めた。その光がどんどん強くなっていくと、やがて彼女を中心にして、巨大な竜巻が発生した。

「うわぁ!!」

あまりの強風に、俺は吹き飛ばされそうになる。なんとか堪えると、今度は地面が大きく揺れ始めた。俺は立っていることができず、その場に座り込む。

「おい、大丈夫か?」

老人が心配して駆け寄ってきた。

「ええ……」

返事をした瞬間、地震はピタリと止まった。

「ふぅ……。こんなもんかな?」

少女は額の汗を拭いながら言った。

「今のは何だったんだ?」

「何って、魔王を倒したときの必殺技だよ。まだ、完全じゃないんだけど、とりあえずやってみたんだ」

「な、なるほど……」

俺は苦笑いを浮かべる。

「ところで、君の名前はなんていうんだい?」

少女はルミアの方を向くと尋ねた。

「ルミアと言います」

「ルミアさんか……。いい名前だね。僕はアサテル・サンルノー。一応、勇者をしている者だよ」

「ゆ、勇者!?」

俺は驚いて聞き返す。

「うん。そうだよ」

「どうして、勇者様がここに?」

「それは、ある人に頼まれて、この世界を救うことになったからなんだ。詳しいことは後で言うよ。今は時間がないし……」

「分かりました……」

「よし……。じゃあ、早速出発しよう!」

「はい!」

ルミアは力強く答えた。

「待ってくれ!」

俺は二人を呼び止める。

「どうしたんだい?何か用事でもあるのかい?」

「ああ……。実は、頼みがあるんだ」

「頼みって、一体どんなものだい?」

「俺も一緒に連れていってほしい」

「そんなことか……。もちろん構わないよ」

アサテはあっさりと承諾する。

「本当か!?ありがとう!」

俺はホッとして胸を撫で下ろした。

(これでやっと旅立てるな……)

こうして、俺は新たな仲間と共に旅立つこととなったのだ。

「さっきの魔法って、本当に凄かったな……」

俺は歩きながら呟いた。

「ああ……。あれね……」

アサテルは遠い目をしている。

「やっぱり、あの技は凄いものだったんですか?」

ルミアが質問をする。

「まあね……。僕の持つ最強の攻撃魔法の一つだからね……。でも、発動までに時間がかかるから、使い所が難しいんだよ……」

「そうなんですね……」

「それにしても、君は強いんだな……」

アサテルは俺の方を向いて言った。

「いや、そんなことはないよ。ただ運が良かっただけだ……」

俺は謙遜気味に答える。

「また、そうやって自分を過小評価するんだな……。あのゴブリンエンペラーキングマンだって、普通は簡単に倒せる相手ではないはずなのに……」

「えっ?そうなのか?」

俺は驚いた。

(そういえば、あいつはかなり強かったような気もするが……)

「ああ、そうさ!普通のゴブリンとは比較にならないくらいの強さだぞ!」

「そういえば、そうだったな……」

俺は納得して言った。

「しかし、君はいったい何者なんだい?」

アサテルは不思議そうな顔をしている。

「別に大したものではないけどな……」

「いや、絶対にそれだけはないと思うけどな……」

「そ、そうなのか?」

俺は困惑しながら尋ねた。

「うん……。でも、詮索するのは失礼だし、気にしないことにするよ」

「助かる……」

俺は感謝して言った。

「それで、これからどこに行くんだ?」

俺は話題を変えるために尋ねる。

「ここから一番近い街は、『カラカロンの街』っていうところらしい。そこで、準備を整えてから次の目的地に向かおうと思っているんだ」

「なるほど……。それなら、ちょうどいい場所があるよ」

「へぇ〜……。それは楽しみだね!」

「ああ……」

俺は少しだけ嫌な予感を覚えていた。

「おーい!!みんな!!」俺は声をかける。すると、茂みの中から三人が現れた。

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弱者男性は異世界へ ニート @pointinline

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