占い師

高黄森哉

占い師


「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 占い師の老婆は、二人の姿を見て、まず一言。


「こういう仕事柄、なかなか信用してもらえないことが多いのでありまして。ということで、私の能力をここで一つ。あなた、妊娠していますね」


 二人のうち、夫に当たる人物は不快そうな顔をした。妻は妊娠しておらず、占い師が太っている彼女の姿を見て、そういう推測を立てたと考えたからだ。


「いいえ。妻は妊娠しておりません。また、子供が出来るようなことは、もう三年、しておりません」


 子供が出来たことがきっかけであった。夫である彼は、子供の教育に悪いからと、なるべく妻と、そう言った事を避けるようにしていた。それに、妊娠太りをした醜い姿では、興奮できないのである。彼はかねてから太った女性を嫌悪していた。母親を思い出すからである。

 

「そうですか。しかし、私には見えるのですが。まあよろしい。それでは始めましょう。今日はどのような理由で、ここへ」

「息子の安否を知りたいのです」


 夫がここへ妻を連れてきたのは、息子が死んでから、彼女が憔悴してしまったからである。特に、食べ物に関してみだらになったように感じる。彼女の体重は指数関数的増加を見せていた。


「分かりました。それでは探しましょう」


 夫に当たる人物は、占い師を毛ほども信じていなかった。しかし、妻を安心させたかった。ネットで評判が良いいのは、きっと人生相談的な側面があるのだろう、と目星をつけてここにきた。しかし、それは勘違いで、占い師は本物の能力者である。


「むむ! 息子さんは、ここにいます。ここです。この近く。いや、私の、………… 眼の前に!」


 占い師は戦慄した。

 こいつ、食べたな。

 

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占い師 高黄森哉 @kamikawa2001

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