第3章 デート

第20話 早朝の出来事

「で、これはどういう状況なのかしら?」


 額に青筋を浮かべながら、こちらを睨みつける美少女が一人。


 名を朝比奈玲。僕の自慢の幼馴染である。


 さてそんな幼馴染様だが、今現在とても怒っていらっしゃった。それはもうぶち切れもぶち切れで、今にもこちらに殴りかかってきそうな程、怖い目をしていらっしゃる。


一体全体どうしたものか……


「あ、あははは……じ、実はですね僕もよくわかっていないというか、なんというか……」

「ふ~ん……」


 僕はありのままに、自分の気持ちを話したのだが、彼女には全く響いていないらしい。むしろその瞳の険しさがより増していっているような気がする……


「つまり何? 深夜はよくもわかっていない状況であるにも関わらず、裸のコイツと一緒のベットで寝たの?」


 玲の瞳の先には、何故か一糸まとわぬ姿で僕に抱き着いてきている雛菊さんがいた。


「すぅ……すぅ……」


 雛菊さんはこの状況下でも、お眠の様で気持ちよさそうな寝息を立てている。


 本当、よくこの状況で寝ていられるよ……


 この神経の図太さ、僕に少しでも分けて欲しい……


「えへへ……深夜君……しゅき……」


 その時、ピキッと何か亀裂が入る様な音が聞こえた気がした。


「雛菊!! いつまで寝てるの!! さっさと起きなさい!!」


 玲がそうどうなるが、肝心の雛菊さんは完全に無視。未だ熟睡中である。


「ほんと……あなたって子は……本当に……!! 本当にもう……!!」


 言葉にならない怒りを、うちに抱える玲は凄くもどかしい顔をして、地団駄を踏んでいる。


「はぁ……もういいわ。それよりも深夜」

「は、はい」


 どうやら雛菊さんの事は一旦諦めたらしく、彼女の矛先が再び僕へと向かう。


「貴方、まさかしていないわよね?」

「していないって……何が?」

「エッチ以外ありえないでしょう!!」


 あぁ~はいはい。なるほどね。確かに端から見れば僕と雛菊さんは完全に事後だ。


 玲がそう疑いたくなるもの無理はない。


「そこは安心して欲しい。誓って僕からは何もしていない」

「僕からは? その言い方だと何? 雛菊の方からは何かしたってこと?」

「いや、そういう事じゃなくて、僕としても実のところ雛菊さんと同衾したのは予想外の行為だったというか……」


 僕は昨日まず間違いなくリビングのソファで寝ていた。にもかかわらず、今朝起きたら隣には裸の雛菊さんが居たのである。


 どうしてそのような事になっているかといえば、まず間違いなく雛菊さんのせいなわけで、そんな彼女が僕に何かをしていないという保証は正直なところ僕にはなかった。


「……いいわ。信じてあげる」


その言葉を聞けて僕は安心し、ほっと胸をなでおろす。


 いやぁ、玲なら信じてくれると思ったよ。さすがは僕の自慢の幼馴染だ。


「……私も今日から泊まるから」

「ん? 何だって」


 聞き間違いだろうか。うん、聞き間違いだ。そうに違いない。てかそうであってくれ。


「だから!! 私も今日から泊まるから!!」

「おう……」


 どうやら聞き間違いではなかったらしい。これが聞き間違いだったらどんなによかったことか……


「えっとそれは流石に……」

「認めなかったら深夜が美人の年上美人を性奴隷にしてるクラス中に言いふらすから」

「絶対にやめてください!!」


 そんな事をされてしまったら僕の平和な学校生活は、間違いなく木っ端みじんに吹き飛んでしまう。


 男子からは常に怨嗟の視線にさらされ、女子からは侮蔑の視線。


 それを卒業までずっと耐えるなんて僕には、絶対に無理だ。


 いや、待て。よくよく考えたら僕がそんな事をしているっている証拠は微塵も……


「私を誰だと思っているの?」


 そうでした。我が幼馴染様は学校一の美少女で、人気者。そんな彼女が真実というのだ。


 それが例え嘘であったとしても民衆という名のクラスメイトは、彼女の言葉を絶対のものとして信じる、信じてしまう。


 そこに僕がいくら叫ぼうが、喚こうが無駄。絶対の正義は彼女なのだから……


「わ、わかった」

「そう。それならよかったわ」

「で、でも玲の両親がいいって言ったらだからね。そこでダメって言われたら流石に僕もダメと言わざるを得ないよ」


 我ながらずるい手を使ったものだ。


 何せ彼女の両親……特に父親は玲の事を酷く溺愛している。そんな父親がいくら昔からの仲とは言え、男である僕の家に大事な愛娘の宿泊を許可するわけがない。


 ふっ……悪く思わないでくれ。これも玲の、ひいては僕の為なのだ。


「ああ、それなら大丈夫よ」

「なんでさ」

「パパもママも深夜の事、とても信用してるから。それこそ自分の息子とさえ思っているんじゃないかしら」

「……」


 嬉しいような、悲しいような、う~ん。なんだか複雑な気持ち。


 てかそんなことよりもこれは不味くないか? だって僕が彼女の宿泊を拒否するカードはもう手元にない。


 それはすなわち……


「ふふふ。そういう事だから今日からよろしくね。深夜?」

「あははは……」


 もう笑うしかないかな。これは……


「深夜君しゅき~」


 それと雛菊さん。いい加減離れてください。貴方の裸は、年ごろの男子には刺激が強すぎます。

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僕の幼馴染は成績優秀、容姿端麗で、学園一の美少女だけど、平凡な僕とセフレになりたくて仕方がないらしい~セフレになりたい彼女となりたくない僕の攻防戦~ 三日月 @furaemon

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