[eb/5f/a9 >> eb/7c/2b]
[Ether>> eb/5f/a9 92:f8:4a (QBT)]
魔獣が、あんなにたくさん──アニムスコアに集まってる。急いで行かなくちゃ、みんなが、クオリアが危ないわ!
[Ether>> eb/5f/a9 92:f8:ec (QBT)]
──プロクシィ! ねえ、プロクシィ、どこへ行くの?
[Ether>> eb/5f/a9 92:fd:63 (QBT)]
アストラちゃん……! なあんだ、プロクシィはアストラちゃんを呼びに行こうとしてたのね。もしかして気づいてなかった? 魔獣がたくさん、アニムスコアを囲んじゃったの! でも、アストラちゃんが来てくれれば大丈夫よ。
[Ether>> eb/5f/a9 92:fd:63 (QBT)]
ね、アストラちゃん……アストラちゃん? さっきから誰とお話ししてるの? プロクシィはこっちに……プロクシィ? なあに、そのアラート、はじめて聞いた──。
[Ether>> eb/5f/a9 92:fe:4e (QBT)]
──アストラちゃんが、魔獣? うそ、そんなこと、
[Ether>> eb/5f/a9 92:ff:42 (QBT)]
クオリア・ブリッジ? 異世界? パラノイア──って、何? ね、アストラちゃん、わけのわからないことを言わないで。プロクシィがおかしいの、アストラちゃんは魔獣だ、なんて──。
[Ether>> eb/5f/a9 93:02:8a (QBT)]
……アストラちゃん……いいえ、魔女アストラ。あなたはわたしを、騙していたの? クオリアや、魔法少女のことを調べて、魔獣を呼び寄せて……アニムスコアが襲われているのも、あそこがわたしたちの聖地だって、あなたが魔獣に教えたからでしょ。いったいクオリアをどうしたいの?
[Ether>> eb/5f/a9 93:03:1f (QBT)]
いまさら優しくしようとしないで! 狂ってるなんて、かわいそうだなんて──あなたにわたしの何がわかるの? 魔法少女に魂なんてない。心なんてないの! だからあなたを撃ってもぜんぜん平気よ! ──エーテル・シャイニー!
[Ether>> eb/5f/a9 93:03:1f (QBT)]
反応消失。出力、測定不能──モジュール再起動──〝マジカル・レイヤー〟応答なし。修復を試みます──失敗。直ちにアニムスコアへ帰還してください──言われなくても、このままじゃみんなが危ない! プロクシィ、わたしたち、も……?
[Ether>> eb/5f/a9 93:03:aa (QBT)]
……プロクシィ? これが……この機械が、プロクシィなの?
[Ether>> eb/5f/a9 93:04:3c (QBT)]
ドレスがない……このボロ布は何? ひどい火傷……人形みたいな縫い目……わたしの思い通りに動く、この機械は。
[Ether>> eb/5f/a9 93:05:66 (QBT)]
──アニムスコアを、たくさんの人間さんが囲んでる。
[Ether>> eb/5f/a9 93:06:37 (QBT)]
その声は……プネウマちゃん! プネウマちゃんなの? どうしてそんなボロボロに……っ、や、いやっ! やめて! 人間さんたちに、ひどいことしないで! みんなも、どうしちゃったの? そんな機械の腕で、傷だらけの体で、人間さんの悲鳴を聞いて笑うのが……魔法少女なの?
[Ether>> eb/5f/a9 93:07:7b (QBT)]
魔獣……この人間さんたちが? 腕の機械から出すのが、魔法?
[Ether>> eb/5f/a9 93:07:ab (QBT)]
──放して! わたしは魔獣にだまされてなんかない。アニムスコアになんて、戻らなくたって平気よ! 修復だって要らない──要らないったら──!
[Ether>> eb/5f/a9 93:08:81 (QBT)]
きゃっ! いたい……でも、なんとかしてアニムスコアから出ないと、みんなおかしくなったままだわ。そんなの絶対にいや! 絶対にみんなを元に戻すんだから──だから、わたしに触らないで! 離れてくれないなら──エーテル・シャイニー!
[Ether>> eb/5f/a9 93:09:b8 (QBT)]
これが、魔法……絶対に当てないようにしなくちゃ。でも、それだと入ってきたゲートは通れない。他の出口を探すしかない……。
[Ether>> eb/5f/a9 93:0c:87 (QBT)]
……暗い廊下……わたし、ここを知ってる……? この角は右……こんなに、狭かったかしら。あの時はもっと……ううん、わたしがまだ、小さくて。……そんなこと、ありえないのに。魔法少女には……小さい頃なんて、ないのに。
[Ether>> eb/5f/a9 93:0e:b5 (QBT)]
ここで、わたしは造られた。今と同じかたちで……カプセルから出て、周りを見たら、すごく難しそうな魔法の本ばっかりで……。
[Ether>> eb/5f/a9 93:0e:b5 (QBT)]
……この本、さっきの……ボロボロのプネウマちゃんが描いてある。文字も読める……『戦闘に巻き込まれ、致命傷を負う』……『素体として回収、改造したが、人格調整が不完全なためか魔獣消去モジュールに適合せず』『生前の恐怖心が影響しているものと推測』……どういうこと? こんなの、まるで……。
[Ether>> eb/5f/a9 93:1a:6f (QBT)]
みんな……人間だったの? 肉体データをいじくり回されて、戦うための機械と縫い合わされて……自分たちは魔法少女で、機械は魔法で、戦っているのは魔獣だなんて夢を、見せられて。アストラ……は、載ってない。魔法少女じゃないから? ……だったら……。
[Ether>> eb/5f/a9 93:2e:b4 (QBT)]
そう……そうね。ああ──わたしを、見つけた。
[-- DATA CORRUPTED --]
[Ether>> eb/5f/a9 93:4b:95 (QBT)]
これが結界の鍵……アニムスコアに魔獣が入れないのは、この装置でバリアを張っているから。わたしが脱出する必要なんてなかったの。あの時、アストラが言っていたとおりなら──。
[Ether>> eb/5f/a9 93:4c:58 (QBT)]
──エーテル・シャイニー。
[-- DATA CORRUPTED --]
[Ether>> eb/7c/2b 28:3c:66 (QBT)]
仮想世界「クオリア・ブリッジ」。異界間汎知覚交信規格クオリアを転用して造られたバーチャル・ワールド──わたしたちが守ろうとしていたクオリアは、違う世界を繋ぐ本物のクオリアの、ほんの一部でしかなかった。
[Ether>> eb/7c/2b 28:3d:c5 (QBT)]
ブリッジを造った世界は、異世界が嫌いだった。だから世界に直接クオリアを繋がないで、橋を架けて、物好きな人たちだけが橋に移り住んだ。でも、それも長くは続かなかった。橋が怖くて仕方ない人たちが乗り込んできた。たくさんの人が住んでいる橋を壊すことはもうできないから、せめて余所者を追い出そうとした。
[Ether>> eb/7c/2b 28:3f:ba (QBT)]
追い出したいくらい大嫌いでも、向こうから飛んで来られた人たちと、向こうに人がいることも知らなかった人たちじゃ、できることがぜんぜん違う。だから魔法少女を造った。ロボットを造る技術もない世界だったから、ブリッジに住む人の肉体データと精神データを改造して、異世界の人たちが魔獣に見えるように、魔法に見せかけた機械で殺してしまうようにした。あの日、アニムスコアに迷い込んだわたしも、そうやって……。
[Ether>> eb/7c/2b 28:42:f9 (QBT)]
魔法少女はもう、いない。プネウマも、みんなも、人間に戻してもらった。元のデータはもうないから、魔法少女の力と記憶を削除しただけだけど……きっと少しずつ、魂だって取り戻せる。
[Ether>> eb/7c/2b 28:47:6b (QBT)]
でも、わたしはまだ、人間には戻らないことに決めた。
わたしは──魔女になる。
[Ether>> eb/7c/2b 28:48:32 (QBT)]
アニムスコアに呼び込んだ魔獣さんたちは、次は別のリージョンへ行くって言ってた。クオリア・ブリッジはたくさんあって、そこでは魔法少女や、他の何かが、わたしたちと同じように魔獣さんと戦っているんだって。そんな悲しいこと、許せない。だから魔獣さんたちと一緒に行くことにしたの。魔獣さんの仲間だけど、魔法少女だったこともあるから、魔女。……アストラと、同じね。
[Ether>> eb/7c/2b 28:4a:37 (QBT)]
それにわたしは、わたしの手で、わたしの魂を取り戻したい。このアニムスコアには確かに、わたしたちが人間だった頃のデータは保存されてなかった。でももしかすると、他のリージョンにバックアップがあるかもしれない。だから、探しに行きたいの。
[Ether>> eb/7c/2b 28:4c:88 (QBT)]
けれどその前に、ここでしなきゃいけないことがあるんだった。
[Ether>> eb/7c/2b 28:4d:34 (QBT)]
わたしにかけられてた認知フィルターはたぶん、アストラを撃った時に壊れた。だから今は魔法も、魔獣も、魔法少女も、みんな本当の姿で見えてる。でもこの〝マジカル・レイヤー〟の機能は、それだけじゃなかったみたい。
いつの間にかアップデートされてたもう一つの機能は、バックログ。わたしたちが話したり、考えたりしたことは記録されてて、ひょっとするとどこかへ送信されてるかもしれない。だから認知フィルターの残骸ごと、削除してしまった方がいい。
[Ether>> eb/7c/2b 28:52:9a (QBT)]
……はい、始めてください。
[Ether>> eb/7c/2b 28:6d:ff (QBT)]
今までのログも、誰かが読んでいるのかな? もしそれが魔法少女だったら──わたしも、アストラちゃんみたいに、
[-- DATA CORRUPTED --]
魔法少女エーテルのログ 白沢悠 @yushrsw
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます