4.エピローグ
結婚式当日。
自分で織った織物で作った白無垢を着た優瓜は、鏡に全身を映していた。
(ん?)
もう一度鏡を見る。よく見ると、胸のあたりが赤いシミがある。口紅をつけたのかと思っていると、まるで、けがをして出血したようにそのシミがじわりじわりと広がっていく。慌てて自分自身を見た。白無垢のままだ。優瓜はもう一度、鏡を見た。
「私を騙して、私の居場所を奪って、あなただけ幸せになろうだなんて、許さないわ」
鏡に映る優瓜が口を開いた。
「ふん。何ができる? 鏡の中に映り込むしかできない幽霊のくせに」
優瓜は鼻をならしてせせら笑った。
「そうかしら? 呪うことはできるわよ?」
鏡の中の優瓜の口角がゆっくりとあがっていく。鏡の中の優瓜の心を探ろうと、優瓜が鏡に手を当てた途端、優瓜は急に胸の痛みを覚えて、うずくまってしまった。
ごぼっ。ごぼっ。
咳と一緒に大量の鉄臭いものが口から吐き出され、胸をおさえていた手の隙間から熱くてどろりとした液体がこぼれていった…………。
◇◇
「優瓜さん、支度は出来ましたか?」
介添え人の夫人が部屋に入ると、真っ赤に染まった白無垢が地面に転がっていたが、それを着ていた優瓜を見つけることはとうとうできなかった…………。
自分によく似たもうひとりの自分 一帆 @kazuho21
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