第3話 体育測定の時のイケメンはよりイケメン

後日、学校にて。


そこには昨日警察に捕まった筈のアサドの姿が居た。


「なんでアサドはまだいるの?」


私がそう聞くとアサドは私の質問にこう答えた。


「俺は石油王だからな」


「理由になってない」


あまりの暴論にツッコミを入れる。

おおかた警察に金積んだってところだろう。

それにもう一つ気になる事がある。


「なんで真美の席に座ってんの?」


「教師と生徒を買収してこの席にした」


買収。

とんでもない事してるし、先生は仕方ないとしても真美は抵抗しなよ。

私はアサドの奇行と友人の裏切りに頭を抱える。

その時、アサドが私の頭に手を伸ばしてきて。


「ナン生地、髪についてたよ」


「えっ///」


ドキッ


私の頭についていたナン生地をそのまま食べた。

な、なに今のトキメキ。私はこんな油臭い男にドキッとしたの!?

確かに顔はイケメンだしスタイル良いし。そ、それに優しいし。

私はアサドにドキドキしていた、そしてアサドも恥じらう私にドキドキしていた。

そして、私とアサドは向かい合い。


「それじゃあホームルーム初めていきます、そこ座ってください」


「「はい」」


一瞬でその気持ちは覚めた。

周りを見るとこちらをニヤニヤした顔で見ている。

私は恥じらいで赤面し顔をうつ伏せた。

その私の隣でアサドはニヒルに笑い。


「يا فتاة مضحكة」


なんて言ったお前。


その後も隙間時間がある時にアサドは話しかけて来た。その話題は主に石油と日本についてで日本には石油が無くて困っているだとか、寿司は最高だとか話していた。

そして3時間目の体育となった。

全員が着替えて外に出る、しかしアサドは見当たらず探しているとグラウンドにトラックが停まっているのを発見した。

絶対にアサドの所有物だろ。

それをじっと見ているとトラックが開いてアサドが出てくる。

体操服には着替えているのだがそれが何かおかしい。

金をベースに彩られ、襟の部分には大小様々な宝石が飾られている。

先生を含めた私たちはそのアサドの姿に度肝を抜かれた。

流石に気になったのでアサドに直接聞く事にした。

途中ボディーガードが遮ったきたが首に刺激を与えて気絶させた。


「ね、ねぇアサド。その体操服何?」


私がそう聞くとアサドは嬉しそうにこう答えた。


「あぁ、これは私特注の体操服で世界に一つしかないんだ。純金で編まれたその繊維は強固でしかも錆びない。その上この襟に付いている宝石は一つ一つが希少な代物だ」


「へ、へぇー。幾らぐらいかかったの?後それ重くない?」


私がそう言うとアサドは自信満々に。


「日本円に換算すると2500億かなり安上がりだ。重量は20kgだ」


「今から体育やるのに重量増えてんぞ」


アサド絶対にバカでしょ、体操服にそこまで金かけるのもそうだけどそれ以上に運動するっていうのに20kgの重りつけるとか阿保。

小学生でももっとマシな使い方するよ。

しかしみんなはアサドの奇行に慣れたのかもう体育の準備をしている。


とりあえず私達も急いで準備をする。

今日は新学期初めての体育という事で体力測定をする事になった。

まずは小手調べに握力を測っていく。


「せいっ!!」


結構良い感じだと思うけどどんくらいかな?

私がそう思い握力の測定を見るとメーターを振り切っている上、グリップ部分が粉々になっていた。


「うーん、少し落ちたかな?」


私がそう言うと周りは畏怖と驚愕の混じった目でこちらを見る。

とりあえずこのままドンドンやっていこう。

その後も私は体力測定をこなしていった。


「上体起こし106回!?」

「反復横跳び計測不能!?」

「立ち幅跳び50m!?世界行け!」


今年も私が学年トップか。

少し寂しさを感じる、物心ついた頃からこうなのだ。競争、闘争、努力、挫折。その全てを経験してこなかった。

少し触れれば何もかもが出来てしまう。

そんな私は自分と釣り合う人がいないのだろう。

一生孤独に過ごそう、この歳でそう決心してしまう程に私は強すぎた。

しかし、その傲慢とも思える考えはそれ以上の傲慢に打ち砕かれた。


パンッ!


一瞬何が起きたのか分からなかった、突然の破裂音に困惑する。

そんな私の後ろである男がこう呟く。


「50m走、0.00000000000000067秒か」


体操服の裾で汗を拭いながらそう呟いたその男、アサドは少し悔しくそうにそう言った。


ドキッ


私は胸の強い高鳴りを感じた。

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貴方だけの石油王。 @sodecaxtuku

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