第2話 サウジアラビアからの留学生!
「なんとか間に合ったー」
リムジンに轢かれた後、私は何事も無く学校に着いた。なんとか間に合った事に安堵していると先生に叩かれて呆れたようにこう言われた。
「油女、間に合ったのは良かったがな。それでも遅刻だ、残念だったな」
そう言う先生の顔は非常に憎たらしく、今すぐ殴り飛ばしてやりたい。しかし遅刻したのは事実だからと渋々教室に入る。
私が教室に入り席に着くと隣の席の真美がニヤニヤとしながらこちらに話しかけて来た。
「ねぇ、今日は何があったの」
そう言う真美に対して私は今日の朝の事を話す。
「いやー、朝から不審者に遭遇しちゃって」
「不審者?」
あれは凄かったと思いながら続きを話す。
「うん、家からでたら突然『貴様が継承者か』とか言われて襲い掛かられてね」
「大丈夫だったの!?」
それを聞いた真美は目をぱちくりとしながら聞いてきたがそれに対して私は。
「勿論だよ、一発でのしてやったよ。それに私がこうして登校してるのがその証拠だよ」
そう言うと真美はそりゃそうだと言う。
そこで私がもう一つの事を話そうとする。
「それでもう一つ有って、朝走ってた」
キンコンカンコン キンコンカンコン
しかしそれは始業のベルによって遮られた、会話を一旦辞めて前を向く。
ベルが鳴り止むと前の扉がガラガラと開き担任の義昭が入ってくる。
教卓の前へと立つと生徒の方へと顔を向けて報告をした。
「今日はみんなに報告がある。遂に我が校にも留学生が来る事になった、みんなも優しく教えてあげるように」
そこまで言うと教室がざわついた。
これから留学生が来るのだ、そりゃいろめき立つのも無理はない。
それは私達も例外では無く、私達も年頃らしく興奮したように口々に理想を言う。
「どこの国の人かな?」
「やっぱりアメリカとか?アメリカからの留学生って多いイメージない?」
「そこはどうでも良くない?でもやっぱり理想は」
「「イケメン!」」
考えることは同じでやはりイケメンがいいと言う結論が出た。
私達が口々に色々言っていると先生が注意してくる。
「あぁ、そういえば忘れてたけど絶対に粗相とかはするなよ」
先生がそう言うと私達の中で不思議な空気が流れる、それは当然だろうとみんなが思った。
しかし、その考えは扉を開けて教室に入ってきた者によって破壊された。
扉を開けるとそこには。
「老人?」
燕尾服を着た老人がレッドカーペットを敷いていた。
この時点で何かおかしいと思ったがその後のインパクトに比べればかなりまともである事が分かった。
レッドカーペットを征くその姿は正に王、純白のディスターシャはその高潔さを示しているかのようだ。
それは正に世間一般的に考える石油王その者だった。
(((((((((絶対に粗相しちゃダメだ!)))))))))
図らずとも皆の考えが一致した瞬間だった。
そしてその石油王はゆっくりと歩いていき、黒板の前に立つとチョークを持ち名前を書いていく。
黒板にはأسدأَكْرَمأَزْهَرと書かれていた。
そしてチョークを置くとこちらを向き爽やかな笑顔で。
「これからここに世話になるアサド・アクラム・アズハルと言う、気軽にアサドと呼んでくれ」
どうやら悪い人ではない、のか?
「先生、この後の授業は俺への質問コーナーにしてくれ」
アサドがそう言うが先生は授業をしないといけないから駄目だと言おうとした、しかし側近らしい老人が先生へ小切手を渡した。
そのあと先生は笑顔で。
「みんな!この後はアサド様への質問コーナーにしてくれ!」
綺麗に買収されていった。
しかしそれは願ったり叶ったりと言った感じだ、こちらとしても授業は潰れるしこちらも聞きたい事があったのだ。
そう思うと早速手を挙げた人がいた。
「質問なんですが実家は何をしているんですか?」
そう言うたらアサドは笑顔で。
「祖父の時代から石油王だ」
すご、いやすごじゃなくて。
その後も沢山質問が出た。
「アサドさんはどこの国出身?」
「お小遣いはいくら?」
「一番楽しかった事は?」
私達が聞くと一つ一つに丁寧に答えてくれる。
「サウジアラビアだ」
「小遣いは無い、俺が油田を掘り当ててその金で暮らしてる」
「一番楽しかったのは家族で世界八周した事だ」
しかし聞くたびにどんどんと凄い所が出てくる。
自分で油田掘り当てたとか流石石油王。
ていうか世界一周なら分かるけど世界八周って何?凄い中途半端じゃない?
そういえば凄い気になる事がある。
私はそう思うと手を挙げる。
その時アサドは目を見開いてこちらを見た。
それに少しだけ疑問を持ったがとりあえず質問をする事にした。
「アサドって登校は何で来るの?」
そう言うとアサドは笑いこう答えた。
「リムジン、もしくはヘリをチャーターして来る。今朝みたいにな」
そう言うと私は今朝の事を思い出して大声を出す。
「あー!今朝のリムジン!」
今朝私を轢いた車の所有者がそこに居た。
なのでとりあえず。
「110、すいません警察ですか?」
十分後、そこには警察に拘束されて連行されるアサドが居た。
アサドは笑顔のままパトカーに入り、こう呟いた。
「ふっ、おもしれー女」
私は普通に引いた。
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