男は、不思議な森で迷子になってしまう。
一見、よくある文章ではあるが、実はもうこの時点で仕掛けがある。この「迷子」という言葉には、二つの意味があるのだ。
道に迷う「迷子」と、人生を迷う「迷子」。
全部を吐き出してください──と異形は言う。男を「迷子」という状況から救いあげるために。
この物語に色を付けるとしたら何色だろう。全てをかき消す「黒」かもしれない。しかし、恐ろしく燃える「深緋」のような気もする。
闇の中の猛炎。男にとって、この炎は、人生の道標となるのだろうか?
結末を知る者は、この作品を読んだ者のみ。
最後まで読んだ者には、一度考えてもらいたい。自分の道標はどこにあるのだろうか、と。自分が「迷子」になったとき、果たして正しい道へ戻ることができるのだろうか、と。