元カノからLINE来た

なかたき

デートへのお誘い

女子からLINEが来た。

「明日ひま?」続いて「もしよかったら一緒に行きたい所があるんだけど...」

たった二文。年頃の男子にとっては天にも舞い上がる内容であろう。 

しかし彼はなんとも言えない感情に苛まれていた。


それが元カノからのLINEだからだ。


まずは別れた時まで遡ろう。

時は遡り3ヶ月前。彼女からLINEが来た。「明日会えない?」その一文で僕は何かを察した。彼女からLINEが来ることはめったに無いからだ。たまに来たかと思えば愛犬の写真。こんな風に誘ってくることは初めてだった。嫌な予感がした。


翌日、僕は初デートに着て行った服でデートへと向かった。いつも通りとても楽しかった。しかし楽しめない僕がいた。気づけば外も暗くなり花火が上がる。今日一番の大きな花火が上がる。花火ももう終わりだ。そんな中、彼女が耳元で囁いた。言い終わると同時に花火は消えて行った。綺麗な花火だった。涙が出るほどに。

花火も終わり元カノを家まで送ると僕も帰路についた。その日の夜は一生分泣いたかもしれない。


話を戻そう。彼は悩んでいた。このLINEになんて返信をするべきか。ここは「久しぶり」と送ろうか。いや、学校で見かけるから変だろうか。やはり無難にスタンプで返信をしようか。けど軽いって思われたら嫌だな。授業より真剣である。


なぜ彼が元カノからのLINEにこんなにも真剣なのか。それは今も好きだからである。彼は小学校の頃から彼女の事が好きだった。彼女と同じ高校に行きたくて頑張って勉強をして地元で一番の進学校に入学した。最初の夏休み。彼は勇気を出して夏祭りに誘った。一緒に花火を見れた。それだけで嬉しかった。そして文化祭。彼は真っ白になった頭から言葉を紡いで告白をした。付き合えた時人生で一番嬉しかった。彼女と色々な場所へ行きたくてバイトもした。本気で結婚したかった。それくらい彼女を愛していた。そんな彼女だからこそ本気で探しているのだ。一握りの復縁という可能性に最も近い解を。


LINEが送られてきて1時間が経とうとしている中。彼はもう一つの問題に直面した。それは返信遅くて嫌われないか問題だ。ほとんどの人が経験しているであろうこの状況に彼は初めて直面した。普段そんなことを微塵も気にしないからである。普段は男としかLINEをしない彼にとって返信の時間はどうでも良いことである。一日返さないことだってある。


しかし今回は例外だ。一刻も早く返信したい気持ちと変な返信をして嫌われたくない気持ちが混ざり合って彼の頭はパンク寸前だ。しかしそんなこと言っている時間があるわけもない。焦った彼は藁にもすがる思いで某知恵袋に質問した。


Q. 元カノからデートに誘われる内容のLINEが来ました。僕はまだ彼女の事が好きなので行きたいのですが返信の内容が思いつきません。返信の内容を考えていただけないでしょうか?


数分もしない間に回答が来た。

A. そのLINEは間違いなので既読無視で良いでしょう。

ろくな内容じゃ無かった。そんな中もう一件。 

A. 自分の言葉で考えてみては?


それが出来ないから質問してるんだよ。もう諦めて自分で決めよう。そう決心をした。無駄な時間だった。


送られてきて二時間が経とうとしている中、彼はついに返信する内容を決めた。まずはフランクな感じで挨拶をして行くことを伝える。そして諸事情の確認。完璧だ。考えた時間の割にシンプルだがそれで良い。下手に怪我はしたくないからな。そして彼が送信ボタンを押そうとした時だ。


急に元カノからLINEが来た。


「ごめん、間違えた。」続いて「忘れて」


たった2文。しかし、彼の心を折るには十分だった。舞い上がった天から地へと、絶望の瞬間である。彼は送ろうとしていた文を消して、ちょっと泣きながら元カノにスタンプを送った。


その日の夜は一生分泣いたかもしれない。

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元カノからLINE来た なかたき @nakataki

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