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 と、いうわけで、メグさんのおばあさんの入院前日。俺と店長は、VHSデッキと「めぐり逢えて」のテープを車に乗せて、彼女の家にやってきた。


 メグさんのリツイートの威力は絶大だった。あの後、あっという間に VHS デッキ貸し出しの申し出が10件も集まり、デッキの機種や店からの距離、万一の動作不良の可能性も考えて、その中の3名の方にデッキのレンタルをお願いして、3台のデッキを確保してきたのだ。


 住宅街にある二階建ての一軒家。玄関でチャイムを鳴らすと、出てきたのは……なんと、一昨日出くわした、メグさんの隣にいたイケメン男だった……


「ああ、五月雨堂さんですね。お待ちしてました」


 イケメン男はにこやかに、俺たちを家に招き入れた。


 どういうことだ……? メグさんとこいつ、一緒に暮らしてるのか? 実はメグさん、結婚してた……?


「ああ、お兄ちゃん、ごめんね! 支度に手間取っちゃって」


 廊下の奥から、パタパタとメグさんがスリッパで駆けてきた。なんだかちょっと化粧しているみたいだ。服装も家で着ている普段着にしてはオシャレっぽい感じがする。


「あ、十夢さん、店長さん、ほんと、来ていただいてありがとうございます!」


 メグさんがぺこりと頭を下げる。


「い、いえ、こちらこそ、お待たせしてすみません」


 頭を下げながら、俺は心の底から安堵していた。


 なんだ……メグさんのお兄さんだったのか……だったら、一緒に歩いていても、全然おかしくはないよな……


---


 店長が居間のテレビにデッキをつなぎ、メグさんがおばあさんを連れてきて、さっそく上映会が始まった。終わったらデッキを回収しなくてはならないので、成り行きで俺と店長も一緒に映画を見ることになった。


 ……。


 いい映画だった。エッフェル塔で二人がようやくめぐり逢うラストシーンで、俺は不覚にも泣いてしまった。見ると、メグさんもおばあさんも涙をこぼしている。


「よかった……これでもう思い残すことはありません……本当に、ありがとうございました」


 おばあさんが何度も俺と店長に向かって頭を下げる。


「もう……縁起でもないこと言わないでよ、おばあちゃんたら……」ハンカチで涙をぬぐいながら、メグさん。「でも……ほんと、素敵な映画でした。わたしも……あんな恋がしてみたいです……」


 そう言って、なぜか彼女は俺の顔を見つめる。


「そうっすね……ほんとにいい映画でしたね……いてっ!」


 隣にいた店長が、肘で俺の横っ腹を小突いた。


「(アホ。何かもっと気の利いた事言えっての)」


 なんか、小声が聞こえたような……


---


 それから三日後。


 < おばあちゃんの手術が成功しました! ]


 待ちに待った、メグさんからのメッセージだった。


 [ よかったです! 安心しました! >


 俺が速攻で返信すると、すぐにそれにメッセージが返る。


 < 明日 ICU から一般病棟に移るんです。一緒にお見舞いに行きませんか? ]


 ま……マジっすか!


 震える手で、なんとか俺は入力した。


 [ ええ! もちろん行きます! >

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Nuits blanches à Montmartre Phantom Cat @pxl12160

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